2018/11/21

マンパワーもお金も知名度も無い会社がすべきただ一つのこと―採用活動の教科書・応用編―

曽和 利光(そわ・としみつ)
1995年(株)リクルートに新卒入社 、人事部配属。
以降、一貫して人事関連業務に従事。採用・教育・組織開発などの人事実務や、クライアント企業への組織人事コンサルティングを担当。リクルート退社後、インターネット生保、不動産デベロッパーの2社の人事部門責任者を経て、2011年10月、(株)人材研究所を設立。現在は、人事や採用に関するコンサルティングとアウトソーシングの事業を展開中。

イントロダクション

こんにちは。組織人事コンサルタントの曽和利光です。2019年卒採用も年末を迎えそろそろ終了に近づき、今度は2020年卒採用が徐々に始まろうかという時期になってきました。

2019年卒採用の求人倍率はリクルートの調査で1.88倍と7年連続で上昇と「採用難」の様相は衰えることがありません。消費税増税やオリンピック後の景気の変動などによる短期的な変化はあるかもしれませんが、この「採用難」は少子高齢化という構造的要因が最大の原因であることを考えると、AI化・ロボット化や外国人採用などの状況において大きな改善がなされない限り、今後も、下手をすると何十年もこの状況は続く可能性があります。

そんな暗い話をしてしまうと、「うちにはこの逆風に対抗する手段もリソースもない」と絶望的に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、安心してください、方法はあります。表題のように、マンパワーもお金も知名度もなくても、それでも採用を成功させる方法はあります。

それは、「ターゲティング」です。つまり、採用活動において、積極的にアプローチする学生をどんな人たちにするのかということです。ここで知恵を絞るわけです。

ターゲットを変えることは、頭の中での出来事ですから、そこにお金はいりません。マンパワーも増えません。むしろ、やり方によっては減るぐらいです。また、ターゲットの変え方によっては、知名度がなくてもアプローチが可能です。

今回は、採用における武器である、マンパワー、お金、知名度が全て無かったとしても、工夫しうること、「ターゲティング」について、一緒に考えてみたいと思います。

 

勝てるところにパワーを集中する

有名なランチェスター戦略などから、「小が大に勝つためのポイント」を見てみると、「奇襲をする」(桶狭間の戦い的な)か「武器の効率を高める」(武田騎馬軍団を信長鉄砲部隊が破ったような)か「兵力を集中して局所優勢を作る」(これも桶狭間の戦いが当てはまりますね)とあります。

これを採用に当てはめて考えてみると「奇襲をする」は超早期採用などでしょうが、戦争と違って相手はそこでつぶれたりせず、必ず後で反撃があるので、あまり効かないでしょう。実際、中小・ベンチャーの早期採用は途中まで良い人材と接触できたとしても、最終的には入社に至らないというケースが多いです。

「武器の効率を高める」は、AI人事などの新しいツールに投資をして利用するということでしょう。しかし、これも結局お金がいることですし、大企業や人気企業ができないことでもないため、難しそうです。今の世の中、誰かしか使えないツールというものはあまりありません。

そして残るのが、最後の「兵力を集中して局所優勢を作る」です。大企業や人気企業は、採用数に比して応募者が来すぎてしまうことが弱点です。平均的な大企業の合格率は1%程度、つまり採用数の100倍も来てしまうので、どうしても多大な採用マンパワーが必要になり、しかもどこに優秀な人がいるのかわからない(偏在している)ので、パワー分散してしまいます。ということは、手薄なところができるわけです。

つまり、そこに中小やベンチャーは採用パワーを集中して局所優勢を作り出せば、勝つことができるというわけです。大企業も手薄にしているところは、彼らの中では相対的に優先順位が低いところなわけですから、そこを中小・ベンチャーが狙って獲っても、奪い返そうとしてはこないでしょう。彼らにとって、優先順位の高い主戦場があるのであれば、そこでの負けは「捨て置け」という感じでスルーするはずです。

ここに勝機があります。

主に時期においては以前のコラムで述べたものがあるので、こちらをご覧ください。
「競合する『大手企業』とどう対峙するか」

 

大企業が狙わないところとは

さて、問題は、その大企業が狙わない対象、相対的に優先順位が低い対象とは、どういう人々でしょうか。

一つは、狙ってもなかなか採用活動の土俵に上がってこない層です。つまり、就職活動意欲が低い人達です。優秀な人であっても、就職活動に対する意欲はそれほどでもない、という人は意外にいますが、ただでさえ応募者の多い大企業がそういう人の意欲を頑張って喚起して、会っていこうとはなかなかしないでしょう。しかし、そういう人でも、体育会のキャプテンや、ゼミの論文や研究室の研究を頑張っている人、アルバイトに精を出している人、等々、優秀な人はいます。そもそも学生時代に就職活動ばかり頑張っている人よりもいい人かもしれないぐらいです。

ただ、就職活動意欲の低い人に会うにはどうしたらいいのかは難問に思えます。就職活動の意欲が低いのですから、工夫をこらした面白い就職イベントのコンテンツを作ったからといって、来てくれないのではないかということです。しかし、来てくれないのであれば、こちらから行けばよい。つまり、スカウト型採用的な考え方でアプローチすればよいのです。リファラル採用を強化したり、スカウトサービスを使ったり、学校の近くの会場にまで出かけて行って採用イベントを行ったりということです。そうすれば、就職活動意欲が低い学生でも、会える確率が高まります。

詳しくは、こちらをご参照ください。
※過去コラム
「早期母集団形成の狙い目、『就職活動意識の低い学生』」


もう一つは「彼らにとっての優秀人材の出現確率が低い(と思っている)ところ」です。もっと言えば、それまで彼らの会社に入社した人や内定者において少ない属性ということです。

それは、ある意味の「社会的偏見」の逆を行けばよいということです。例えば、男女雇用機会均等法が始まって早30年以上が経とうとしていますが、未だに大企業の採用数は男性の方が多い。つまり、狙うべきは女性です。他にも、文系なら大企業が狙う法学部や経済学部よりも文学部や教育学部、理系なら工学部よりも理学部や農学部を狙う。大都市圏の有名大学ではなく、地方都市の優良大学を狙う。野球、サッカー、ラグビーのようなメジャースポーツではなく、ラクロス、ダンス、ボートなどを狙う。

実際に、裏側から見ていると、そういう学生に対しては、届くDMの数も、アプローチするリクルーターの数も少ない。ですから、そこを狙うわけです。

このように大企業が狙わないターゲットを巧妙に避けて、そこに持てるリソースを全面投入することが、リソースが少ない企業の勝つ道筋です。くれぐれも少ないリソースを、大企業との全面対決が待っているようなところに投入してしまわないことをお勧めします。

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