2018/11/07NEW

あなたの個性はそのままに、ワンランク上の採用担当者へ―学生が“求める姿”を意識できていますか?―

辻 太一朗(つじ・たいちろう)
(株)リクルート人事部を経て、1999年(株)アイジャストを設立。
2006年(株)リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。
2010年(株)グロウス アイ設立、大学教育と企業の人材採用の連携支援を手掛ける。
また同年に(株)大学成績センター、翌11年にはNPO法人DSS (大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会) を設立。
採用に関わる多くのステークホルダーを理解しつつ、採用・就職の"次の一手"を具体的に示すことに強みを持つ。

イントロダクション

こんにちは。採用ナビゲーターの辻太一朗です。

内定式を終えられた企業も多いことと思います。内定者の顔ぶれを眺めて、ここ数カ月の頑張りが実を結んだと改めて感じられた方も多かったことと思います。

さて、前回のコラムでは「『話が上手い』採用担当者になるためには」と題して、相手に伝えたいことを分かりやすく伝えるため、私なりの「PREP」の意識の仕方について記しました。

すると、前回のコラムを読んでくださったある方から「私の場合、話の内容というよりも、話し方や表情の問題の方が大きい気がしているんですよね」といった相談がありました。

実は、こうした悩みというのは学生も抱えていることが多いようで、似た内容の相談を以前にも受けたことがあります。プレゼンテーションや話し方に関するハウツー本が世の中にあふれているような時代ですから、面接を受ける際に悩んでしまう気持ちはよく分かります。

そこで今回のコラムでは「話の上手さ」とは別の視点で、伝えたいことを相手に正しく伝えるためのコミュニケーションについて考えてみたいと思います。

それではまいりましょう。

 

最近の学生は感情表現が苦手?

以前『人は見た目が9割』という本がベストセラーとなりましたが、私は表情や話し方といった“見た目”に関わる要素と「話の内容」というのが伴って、初めて適切なコミュニケーションが成立すると思っています。

冒頭から昔話で恐縮ですが、私が入社2年目、リクルートで採用担当をしていたときのことです。
新入社員が配属され、初めて後輩を持つことになりました。

とても優秀な後輩だったのですが、彼は自らの意見を伝えるときに「どう考えても○○○ですよね」というのが口癖でした。
それに対して私は、自らの意見を伝えるとき「ふと思ったんだけど、○○○ってどうかな?」というのが口癖でした。
さて、どちらの言い回しが聞いている側にとって説得力があると思われるでしょうか。
私自身、当時は彼の勢いに押されて、どちらかというと彼の意見に寄った結論を出すことが多かったように思います。

そこから数年経ち、当時を客観的に振り返ると、彼の意見も私の意見も、実はレベル感としては同じ程度だったのではないかと思うようになりました。

当たり前のことですが、同じ内容であっても自信をもって話している人の方が聞き手には納得感があるでしょう。

一方で「自信」と「傲慢」は紙一重ですよね。後者と受け止められない術を、コンサルタントは特に心得ていると思います。

私の新人時代と比べると、今はメールやLINEなど非対面でのコミュニケーションを取る機会が増えています。それもあってか、今の学生の方が、リアルな会話で感情を表すことが少なくなっているのではないかと思います。

 

成長のためには「自分を変える」しかない?

私は新人時代に先輩から「お前は学生とフランクに接しているのはいいんだけど、ちょっと“チャラい”雰囲気が出ているのが気になるな」と言われたことがあります(笑)。

前回のコラムでは、先輩から「お前の話は長くて分かりづらい」という指摘を受けていたということをお伝えしましたが、実はそれだけではなく、ちょっとした口癖から表情、ジェスチャーなど、あらゆることを指摘されていたのです。

話し方の技術に関することを指摘されるのはありがたかったのですが、表情など見た目に関わることについて指摘されるのは、自分の個性や性格を否定されているようで、正直、ちょっといやな気持ちになりました。

もちろん露骨に反発することはありませんでしたが、先輩は私の気持ちに気づいていたのでしょう。
「話の内容だけで絶対に相手を納得させる自信があるのなら、それ以外のことは気にする必要はない。だが今のお前は全ての学生を、話の内容で納得させることができているのか?」と問われました。

私は「……できていません」と答えるしかありませんでした(苦笑)。

先輩は「だとしたら、表情や身振りも含めて、変えられることは全て変える必要があるんじゃないのか?」と続けました。

皆さんも私と同様に「自分を変える」ということに対して抵抗や恥ずかしさを感じる方が多いのではないでしょうか。それが、見た目に関わることであればなおさらです。

私は先輩の意見は正しいと思いつつも、すぐに気持ちを入れ替えて「明日から変わってやる!」と意気込んでいたわけではありませんでした。

 

自分を変えたくないから「演じてみた」

先輩とはその後何度も話をしたのですが、当然のことながら、先輩は私の人間性を否定していたわけではありませんでした。

先輩が伝えたかったこと。それは「学生とコミュニケーションを取る」という「仕事」に取り組むため、学生にとって理想的な採用担当者に近づけるよう、あらゆる努力をするべきということだったように思います。

「自分を変えずに、学生が求める採用担当者になる方法はないのか」
そう考えた末に出た結論は「演じればいい」というものでした。

「学生と話をする」という役を仕事として「演じる」。そう考えるようになったことで「自分自身は今のままでいいんだ」と少し気持ちが楽になったのです。

「演じる」ということを大げさに捉える必要はありません。自分の個性を変えるのは辛いから、学生と接しているときだけは、いつもとはちょっと違うスイッチを入れるようにしようと思うことで、自分を納得させているだけのことです。

次第に私は「では、どのように演じてみようか」と考えるようになりました。

まずは個性が自分に近いタイプの先輩を探し、その先輩が学生とどのように接しているのか、話し方やジェスチャーだけではなく、歩き方などの仕草も細かく観察しました。

先輩の参考とすべき部分を自分でも真似しているうちに、演じるということが思っていた以上に抵抗がないことにも気づきました。自分を変えたわけではなく、あくまでその場だけのロールプレイをしているに過ぎないからです。「前回はAさんの仕草を参考にしてみたから、今回はBさんの仕草を参考にして、学生の反応にどんな違いがあるのか比べてみよう」といったように、自分でも面白く思えてきたのです。

大昔の私を知っている人は、私が学生と接している姿を見て「辻はずいぶん変わったな」と思うかもしれませんが、おそらく根の部分は全くといっていいほど変わっていないと思っています(笑)。

今回はノウハウではなく“考え方”についてお伝えしました。
ささいなことかもしれませんが、今回のコラムを読んでくださった方の中に「自分を捨てなくても、学生が求める採用担当者になれるんだ」と少しでも気持ちが楽になった方がいらっしゃれば幸いです。

それではまた、1カ月後にお会いしましょう。

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