競合する「大手企業」と、どう対峙するか―採用活動の教科書・応用編―

採用選考が一斉に始まるこの時期、大手企業との競合対策をしっかりしなければ、採用成功はおぼつかないことでしょう。大手企業の皆さんも、自社より人気のある企業への対策は必須です。今回は、すぐそこに来ている大手企業の採用選考への競合対策について考えてみたいと思います。

イントロダクション

こんにちは。組織人事コンサルタントの曽和利光です。

今回は、一般的な大手企業の採用選考への競合対策について考えてみたいと思います。

まず、一般的な大手企業の採用選考の一番の特徴は「一斉に」始まるということです

そうなると、何十社も同時期に受けることはできないため、必然的に学生は、受ける企業に優先順位付けをしなければならなくなります。多くても10社前後が精一杯ではないでしょうか。皆さんの会社がその「10社」に入る企業であれば、何の問題もありません。しかし、多くの場合、ふつうにやっていては、そこから漏れてしまうというのが現実です。では、どう対処すればよいのでしょうか。

方向性はふたつあります。ひとつは大手企業の採用活動と競合しないように動いて効果的に採用活動をする「対決回避」、もうひとつは大手企業との採用競合に面と向かって臨む「真っ向対決」です。あるいは、パワーがあればその両方を行っても構いません。

率直に申し上げると、採用パワーがそれほどない会社にとっては、最初の「対決回避」がお勧めです。「回避」と言ってしまうと言葉は弱く聞こえますが、実際には「賢く立ち振る舞う」という感じで、決して採用のレベルを落とすということではありません。むしろ、中途半端に対決するよりは、よりよいレベルの人材が採用できると思います。

しかし、一採用担当者として、「真っ向対決」も捨てがたいです。これだと思った意中の人をみすみす大手企業に取られるのではなく、心を込めて動機づけたいものです。しかし、これをする以上、かなりの覚悟が必要です。

では、このふたつのアプローチについて、具体的にご説明したいと思います。

方向性1:大手企業と「対決回避」するには

「対決回避」をするには、大手と採用活動の時期をずらすことが基本です。自社の採用選考ピークを大手企業と同じ時期に持ってきてしまうと、キャンセル率が上がり、せっかく用意したマンパワーが無駄に消費されてしまいます。

これを避けるには、採用選考の時期を後ろ倒しにして、一般的な大手企業の採用が終わってからにしてしまうか、もしくはそこまで極端に遅らせるのが怖いと思われるのであれば、一般的な大手企業との同じ時期の選考枠を極力少なくして、薄く後ろに伸ばしていくのがよいと思われます。そうすることで、会社として採用活動に用意できる選考パワーを無駄なく行使することができます。

大手企業の選考に時期をぶつけた場合にはキャンセルする、もしくは受けてくれなかった学生たちが、選考を後ろ倒しにすることで、ちゃんと受けてくれるわけです。

大手企業に落ちたといっても、この時期であれば、自社にとって望ましい人は十分残っている可能性があります。むしろ、説明会ピーク時期や、選考会ピーク時期には大手に流れて来てくれなかった層が戻ってくることで、自社にとっては最も望ましいと接点を持てる時期といってもよいかもしれません。

時期をずらした際に、加えて重要なことは、それ以前に「辞退された」学生にも声をかけるということです。説明会キャンセル者や、選考途中辞退者にもドンドン、再度声がけをしてください。一度辞退された学生には、二度とアプローチしない企業が多数だとは思いますが、時期が変われば学生の気持ちは変わることもあります。

その際、これまでも再三申し上げて来ましたが、「電話」で呼び込むことが大変有効です。学生側も一度「振って」しまった会社は、もう自分を受け入れてくれないだろうと思い込んでいます。電話で濃いコミュニケーションを取ることで、「一度断ったのに、まだ受けさせてもらえるのですか!」ということになり、喜んで受けてもらえるかもしれません。

方向性2:大手企業と「真っ向対決」するには

かなり覚悟のいる選択肢ではありますが、大手企業と「真っ向対決」するというのも、成功すれば最も自社にとって望ましい層を採用できる可能性が高いわけですので、ぜひトライしていただきたいと思います。

「真っ向対決」の基本はスピードUPです。大企業のスピードを上回る速さで、採用選考を進めることで先回りして内定出しを行うことが前提となります。大手にスピードで負ければ、その時点でアウトです。できる限りのパワーを選考に注ぎ込んで、一気に選考を進めてしまうことで、先に学生に「プロポーズ」しなければなりません。

ただし、大手の採用活動ピークにぶつけるのであれば、方向性1にも書いたように、ふつうに呼び込みしていてはキャンセル率が高まります。この場合も、選考への呼び込みの基本は「電話」が適切です。電話で選考予約をすることで、最も大手と競合しそうな層からアポイントの連絡を入れることができます。また、アポイントの日程も、放っておけば、大手企業のアポが先、自社のアポは後、となってしまいます。電話であれば、こちら側主導で、自社にとって望ましい層にこそ「先」の日程でアポを入れることができます。

そうして、スピード内定を出すことができたなら、次に行うことは学生に受験先を絞ってもらうことです。内定がひとつもないうちは、学生も不安でしょうから、むやみに受験先を絞るということはしません。自社が内定を早く出すことで、学生側にも安心感ができ、それを前提とすれば、以前にはしてくれなかった絞り込みをしてくれる可能性があります。少しでも競合を減らすわけです。そうすれば、大手に最終的には縁がなかったときに、自社への入社を決めてくれるという確率が増します。

もちろん、自社の採用への熱意をきちんと伝えていかなければ、そんなに簡単には受験先を絞ってはもらえません。学生視点で合理的に考えれば、「少しでも広い選択肢の中から会社を選びたい」というのが筋だからです。学生に受験先を絞ってもらう方法は、ただひとつしかありません。「あなたにウチの会社に来て欲しい」と動機づけることです。もちろん、「絞らなければ内定取り消し」などといった恫喝的なことは言語道断です。あくまで、自社の思いを伝え、相手が選べる状態にしなければなりません。

こうして、後は、絞られた受験先の結果を待つのみ、というわけです。


以上、今回は、一般的な大手企業の採用活動への対峙の仕方について述べてみました。避けて通れない大手対策ですが、本稿のふたつのアプローチをご参考にいただけましたら幸いです。

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曽和 利光(そわ・としみつ)
曽和 利光(そわ・としみつ)
1995年(株)リクルートに新卒入社 、人事部配属。
以降、一貫して人事関連業務に従事。採用・教育・組織開発などの人事実務や、クライアント企業への組織人事コンサルティングを担当。リクルート退社後、インターネット生保、不動産デベロッパーの2社の人事部門責任者を経て、2011年10月、(株)人材研究所を設立。現在は、人事や採用に関するコンサルティングとアウトソーシングの事業を展開中。

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