面接精度を高めるために一番重要なこと

近年では、ピープル・アナリティクスなどの広がりなどに伴って、さまざまな採用活動の実態が顕在化してきており、そのために採用面接の精度の低さについて問題視されるようになってきています。面接の精度が低下する原因は、いくつかパターンがあります。自社の面接精度の低下の原因を特定することが、精度向上策を考えるためには必要です。

イントロダクション

こんにちは。組織人事コンサルタントの曽和利光です。そろそろ今期の新卒採用活動のピークに入る準備をされている会社が多いころで、お忙しく過ごされていることかと思います。

 

特に近年では、ピープル・アナリティクスなどの広がりなどに伴って、さまざまな採用活動の実態が顕在化してきており、そのために採用面接の精度の低さについて問題視されるようになってきています。これまで感覚で行ってきた面接の評価が実は入社後のパフォーマンスとは相関がそれほど高くないというような事実が各社で出てきているからです。

 

面接の精度が低下する原因は、いくつかパターンがあります。自社の面接精度の低下の原因を特定することが、精度向上策を考えるためには必要です。

 

1)採用基準がズレている → 「意見」だけでなく、「事実」から基準をつくる
一番多い原因は、ハイパフォーマーとなる可能性が高い人材を落としている、もしくはローパーフォーマーとなる可能性が高い人材を採用しているという「採用基準のズレ」です。

 

これは、経営者や現場リーダー、ハイパフォーマー自身に「どんな人が自社に向いているのか」という「意見」を聞いて、それを整理するだけで採用基準をつくっていることが主な背景になっていることが多いです。

 

人は自分のやっていることに自覚的ではない場合もあります。特にハイパフォーマーは、無意識でいろいろな良い行動を取れるから良い成果を出せる人であり、その人に「あなたは何ゆえにハイパフォーマーなのか」を聞いても、意識化できるかどうかわかりません。日本語ネイティブのわれわれが文法を意識しなくても日本語を正しく話すことができ、一方で、文法について説明することができないことも多いというようなことと同じです。

 

これを解決するためには、上記のような「意見」だけからではなく、「事実」から採用基準をつくることです。最もわかりやすい「事実」とは、ハイパフォーマーたちが行っている行動を把握することです。営業同行を行うなど「行動観察」を行うことで、ハイパフォーマーの特性を理解することは重要です。しかし、すべての人の行動観察をするのは負荷が大きいですし、プログラマーのような知的な仕事では観察してもよくわからないこともあります。その場合は、SPIなどのパーソナリティテストを用いて特性を分析してもよいでしょう。

 

もちろん「意見」がすべてダメなわけではありませんし、「事実」が完璧なわけではありません。今のハイパフォーマーの特性が理想かどうかはわからないからです。「意見」が正しい場合もあるでしょう。ただ、「意見」だけからではなく「事実」からも基準を検討する多面的な見方が重要ということです。

もう二つの原因

2)人を表現する言葉が曖昧→ よく使われる言葉を一義的に定義しておく

二つ目の原因は、言葉の問題です。「コミュニケーション能力」「地頭」「ストレス耐性」「意欲」「主体性」など、これらは人を表現する際によく使われる言葉ですがすべて曖昧さがあります。

 

例えば、「コミュニケーション能力」は「感受性(空気が読める)」なのか「理解力」なのか、はたまた「筋道が通った話ができる」なのか「表現力が豊か」なのか、多様な意味があり、どれを指しているかによってまったく違う人材像になります。「ストレス耐性」でも、「鈍感でストレスを感じない」のと「仕事に対する意味づけ力がありストレスを感じない」のとでは大きな違いです。

 

このような言葉を私は「Big Word」と呼んでいます。面接の精度を高めるためには、面接担当者の間でこのような意味の曖昧な「Big Word」をあまり使わずに、意味が一つだけに定まる「一義的な」言葉を使うことです。曖昧な言葉が出てきたら「それはどんな意味で使っているのか」についてすり合わせを行っていくことが重要です。

 

3)インタビュー力が低い→ 事実ベースでのヒアリング重視
最後の原因は、面接における情報収集力の弱さ、インタビュー力に問題があることです。採用面接の研究は日本ではあまり多くはありませんが、アメリカなどではさまざまな研究があり、その結果、「意見」ではなく「事実」から人材を評価することで精度を高めることがわかっています。

 

この方法はBEI(Behavioral Event Interview/行動評価面接)などと呼ばれることもあります。「どんな場面で、どんなことを考え、どんなことを行い、どんな結果になったのか」を中心に聞くというシンプルなものです。逆に「志望動機」や「将来どうなりたいか」等々の「意見」については参考程度にしておき、評価の主軸にはしません。

 

さらに詳しい手法については、こちらをご参照ください。

 

最近では、インタビュー力を高めるだけでなく、AI面接(面接の質問をAIが行う)を導入するなどの方法も出てきています。録画面接(事前に決めた同じ質問に対して、録画で返答を送ってもらう)なども、面接担当者個々人のインタビュー力に左右されない方法で、よく使われるようになっています。

面接精度を高めるために最も重要なことは…

以上、面接精度を低下させる3つの主な原因について述べてきました。これらの原因を特定して解決策を実施すれば、面接精度は向上していくと思います。しかし、これらの解決策を実施するために、最後の大きな落とし穴があります。それを乗り越えなければ、効果は望めません。

それは、面接担当者の「危機意識」です。

面接担当者は、たくさんの面接をすればするほど、自分の評価能力に自信が出てきて、優秀人材のイメージが固定化されていくことがわかっています。ところが、事業や組織文化が変化していけば、それに連れて求める人材像も変わるものです。それなのに、旧態依然とした評価基準で面接を行えば、いくらインタビュー力やアセスメント力があっても、結果が悪いのは当然です。

自分の評価能力に対して、「『完璧ではない』という健全な危機意識がなければ、改善しなければならない」とは思えないでしょう。ですから、面接トレーニングの担当者は、いかにして、面接担当者個々人に「危機意識」=「改善意識」を植え付けるかを考えなくてはなりません。

一つの方法は、データで示すことです。これまでにその担当者に実施してもらった面接評価結果と最終的な合格との相関を見せて、自分の評価がそれほど高い妥当性がないことを明確に示せば、どんなに自信満々な面接担当者でも改善意識を持たざるをえません。

上記の「最終合格との相関」に加えるなら、示すと良いデータは、その担当者が合格にした候補者と、不合格にした候補者のパーソナリティの比較や、担当者のつける総合評価(合否判定)と、詳細評価(○○力、○○性など、下位評価項目)との相関などです。これらを示すことで、自分の評価傾向を知ることにつながります。

もう一つの方法はすり合わせの強化です。負荷はかかってしまいますが、一人だけで面接をするのではなく、候補者1名に対して複数の面接担当者が同席して面接を行い、面接後にすり合わせを行うことで、同じ情報を得ても評価が違うことが明らかになります。これも改善意識につながることでしょう。

すり合わせの際には、まずはすり合わせをせずに個々に評価をつけてみた上で、それをお互いに見せ合い、違いを顕在化させることが重要です。評価をつけないうちに議論をしても、あまり論点がわからない場合も多いので、ぜひ個々に評価をつけてからのすり合わせをお勧めします。

このように、「自分の面接精度はそれほど高くないのだ」という事実を示せば、前に述べた3つの原因のうち自分の面接精度を下げている理由で最も大きいのは何なのか、自然に追求したくなります。面接担当者の「危機意識」の醸成を進めることは、皆さんの会社の面接力向上には必須だと思います。

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曽和 利光(そわ・としみつ)
曽和 利光(そわ・としみつ)
1995年(株)リクルートに新卒入社 、人事部配属。
以降、一貫して人事関連業務に従事。採用・教育・組織開発などの人事実務や、クライアント企業への組織人事コンサルティングを担当。リクルート退社後、インターネット生保、不動産デベロッパーの2社の人事部門責任者を経て、2011年10月、(株)人材研究所を設立。現在は、人事や採用に関するコンサルティングとアウトソーシングの事業を展開中。

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