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2019/08/07

「社会が変わる。求める人材像は変わる?」-少し先の未来を踏まえて人材像を検討する-

小宮 健実(こみや・たけみ)
1993年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。 人事にて採用チームリーダーを務めるかたわら、社外においても採用理論・採用手法について多くの講演を行う。さらに大学をはじめとした教育機関の講師としても活躍。2005年首都大学東京チーフ学修カウンセラーに転身。大学生のキャリア形成を支援する一方で、企業人事担当者向け採用戦略講座の講師を継続するなど多方面で活躍。2008年3月首都大学東京を退職し、同年4月「採用と育成研究社」を設立、企業と大学双方に身を置いた経験を生かし、企業の採用活動・社員育成に関するコンサルティングを実施。現在も多数のプロジェクトを手掛けている。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。

イントロダクション

皆さん、こんにちは。
採用・育成コンサルタントの小宮健実です。

私は多くの企業の求める人材像の設計に携わってきました。
求める人材像について、皆さんはどのような考えを持っていますか?

「新卒採用においては、どの企業も似たようなものだ」
「適切に構築すれば、必ずその企業のDNAを表現したオリジナルのものになる」

これは、私の経験上、どちらも正しいと思います。
では、このような問いかけについてはいかがでしょうか?

「求める人材像は変化するか?」

「新卒採用においては、社会人としての基礎的な能力だから普遍性が高い」
「社会の変化とともに、求められる能力についても変化がある」

これに関しても、どちらの考え方にも思い当たるところがあります。

では、(普遍的な部分はよいとしても)変化していることとは何でしょうか?

今回は、私が仕事を通じて感じている、「求める人材像の変化」についてお話ししたいと思います。
では、さっそく始めていきましょう。

社会が変われば…

今、(ビジネスにおける)社会の様相を表現する言葉としては、「VUCAワールド」が最も知られていると思います。

ご存じの通り、企業を取り巻く市場環境が、不安定で変化が激しく(Volatility)、先が読めず不確実性が高い(Uncertainty)、かつ複雑で(Complexity) 曖昧模糊としている(Ambiguity) ということを指しています。

そのような状況の中、配車サービスの「Uber」や民泊サービスの「Airbnb」が成功事例としてよく取り上げられることも、皆さんご存じの通りです。

こうした情報は理解しつつも、自社の新卒採用や育成の枠組みにまで影響を与えているかというと、そこまでは至らないという企業がほとんどだと思います。

私は、こうした現状は、ややもすると採用チームが打ち出す「求める人材像」が社会の変化に後れを取る事態を招くのではないかと危惧しています。

もう少し身近なところで考えてみましょう。

日本では来年、2020年に5Gの規格を実用化しようとしています。
5Gはご存じの通り、次世代の無線通信システムで、現在主流の4Gと比べると速度は100倍と言われています。

5Gが普及することで、車の自動運転を筆頭に、IoT(あらゆるモノをインターネットにつなげて実現するサービス)がさらに進化します。ビッグデータの構築にも拍車がかかり、AIの利用法も格段に進展をもたらします。様々な利用場面で、今までの常識を覆すでしょう。

こちらは、政府が打ち出している「ソサエティ5.0」を紹介しているウェブサイトです。
「ソサエティ5.0」は、政府が提唱している少し先の未来社会の姿です。
「あなたの暮らしや働き方が変わる」様子を、動画も交えてわかりやすく紹介しています。
https://www.gov-online.go.jp/cam/s5/
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html

「あなたの暮らしや働き方が変わる」ということは、当然そのようにビジネスが変わるということです。

「こんな風な暮らしや働き方がもうすぐ実現しそうなのに、自社の新卒採用や育成の枠組みに何も影響を与えない?そんなことはないのではないか…」そう感じていただけるのではないかと思います。

では、そのような時代に求められる人材像をどのように考えていけばよいでしょうか?

時代が求める人材像

ソサエティ5.0では、ビッグデータを踏まえたAIやロボットが、これまで人間が行っていた作業や調整を代行・支援するため、日々の煩雑で不得手な作業などから解放されると説明しています。

文面通りに受け取り過ぎてはいけませんが、(どんなに煩雑であっても)ルール化に成功した仕事は自動化され、人間の手元から無くなっていくでしょう。

そしてそれは、今採用した人材が一人前に育成される5年後、10年後には、ずいぶん進んでいる可能性が高いと言えます。

では、そのような時代に求められる人材像をどのように考えていけばよいでしょう。

(私が考えたというよりも)社会の変化によって明らかに重要視されるようになる能力を以下に記していきたいと思います。

■専門性(学べる・学び続けることができる・学び直すことができる)


1つ目は、ゴール逆算型ではなく、ゴールが見えない(もしくは解がない)状況下で、変化に応じて知識を学び直し、活用する力です。

これから多くの仕事の進め方は、ゴールまでのステップを区切り順序良く進めていく「ウォーターフォール型」ではなくなっていきます(もうそうではない企業も多いと思います)。

これでは、変化に対応できないからです。
ゴールは変わってしまうことを前提に、まずその時点のベストでの解を出し、それでどこまで行けるのか確かめつつ、ゴールに近づいたらそのゴールを見直しながら進む、いわゆるアジャイル型の進め方が増えるでしょう。

そうした状況下では、求められる専門性についても変化を前提に学び続けたり、柔軟に学び直したりすることが求められます。

今まで、採用活動において、専門性の獲得については、メッセージしていない企業も多いのではないかと思います。

今後は当然、就職活動をするほうも、そのような支援に関する興味が高まっていくと思います。

■共創(協働できる・自分の専門性を他領域の課題に活用できる・他者の専門性を自領域の課題に活用できる)

2つ目は、共創する力です。

ビジネスは、成長市場をいち早く見つけて参入し、いかに生産性を最大化するかではなく、(UberやAirbnbのように)技術の進化をうまく取り込んで創造性を高め、自ら市場を掘り起こすことが重要になっています。

そのように市場を掘り起こす、つまり事業を構想していくためには、多様な分野の専門人材が共創することが重要です。

これは、「専門性がない領域の課題(解が定まっていない課題)に対して、それぞれ何かの専門性を人材が持ち寄りコラボレーションして、新領域の専門性を共同で構築していくプロセス」だと言えます。

つまり個人レベルでは、「他者の多様性を受け入れ、そこから新たな洞察を得て、自分にとって新しい課題に適用できる」といった、共創によって自らを進化させる能力が求められていると言えます。

多くの企業はこれまで、チームワークというレベルで、共同作業に耐え得る人材像を掲げてきたと思います。

他者に配慮できる、会話がスムーズに成立するというレベルから、さらに質の高いメッセージをする段階に来ていると思います。

■人中心(利用者の立場に立てる・利用者の気持ちを考えられる・利用者の問題を発見し課題を整理できる)

3つ目は、人を中心に考える力です。

イノベーションに関するナレッジで注目されているコンサルティングファーム、IDEO(アイディオ)では、イノベーション実現の要素には、Viability(ビジネス化)、Desirability(人間中心)、Feasibility(技術)の3つが大切だと紹介していますが、必ずスタートは「人間中心」であると述べています。

顧客視点で考えることは、もちろんさほど新しい考え方ではありません。
ただ、この数年で、モノからコトへの重心の移動が著しいと感じています。

ドリルを買いにきた人が欲しいのはドリルではなく「穴」であるという、アメリカの学者レビットがマーケティングを解く本の中で紹介した話を聞いたことがある人もいると思います。

顧客の問題解決でも、モノに重心を置けば、私たちのビジネスは高性能で安いドリルの開発製造に向かうでしょう。

一方で、コトに重心を置けば、その人があけたい「穴」に対する解決策に向かいます。「どうやって穴をあけるか」という問いへの解答は、ドリルを売らない新しいビジネスに向かうかもしれません。

つまりここで、モノとコトの発想を分けるのは、問いの立て方だと思います。

私もこれまでに「問題発見力・課題解決力」という観点を含んで、求める人材像を設計した経験が少なからずあります。

とかく、問題解決の手続きを知っていたり、論理性が高かったりすると高評価につながる観点ですが、今後はより、人の感情や期待に寄り添う形で「問いを立てる」力が求められていると思います。

いかがでしょうか。
もちろん、求める人材像はすべての企業が同じ観点・表現になるものではありません。
一方で、こうした環境要因は、多くの企業に共通するもので、同じベクトルの変化を促す要因だと思います。

採用活動の内容も変化が予想され、求める人材像についても改めて検討が必要になると思います。
今日お話しした観点以外に、何が普遍であるのかといった議論も必要でしょう。

このテーマでは、当コラムで書き切れないことが多々あるのも正直なところですが、新しい求める人材像の検討のきっかけやヒントになれば幸いです。

ではまた1カ月後にお会いしましょう。
次回もよろしくお願いいたします。

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