お電話でのお問い合わせは

0120-98-3454 受付時間 9:00〜18:00(土日祝祭日を除く)

※電話内容については、正確を期すため録音しております。

新卒採用の相談窓口はこちら

2013/08/20

「今年も多く見かけた、選考設計の弱点について」―「評価項目の設定」がリクルーティング・デザインの質を左右する―

小宮 健実(こみや・たけみ)
1993年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。 人事にて採用チームリーダーを務めるかたわら、社外においても採用理論・採用手法について多くの講演を行う。さらに大学をはじめとした教育機関の講師としても活躍。2005年首都大学東京チーフ学修カウンセラーに転身。大学生のキャリア形成を支援する一方で、企業人事担当者向け採用戦略講座の講師を継続するなど多方面で活躍。2008年3月首都大学東京を退職し、同年4月「採用と育成研究社」を設立、企業と大学双方に身を置いた経験を生かし、企業の採用活動・社員育成に関するコンサルティングを実施。現在も多数のプロジェクトを手掛けている。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。

イントロダクション

皆さん、こんにちは。採用・育成コンサルタントの小宮健実です。

いよいよ夏真っ盛りです。そんな中、汗をかきつつリクルーティング・スーツに身を包む就活生を目にすると、とにかく応援したくなってしまいますね。

一方でこの時期、採用担当者の方の取り組みは、採用活動の継続であったり、インターンシップ、15卒に向けての構想づくりであったりなど、企業によってそれぞれ異なっています。採用担当者の方も就活生同様、暑い夏、いや熱い夏をお過ごしのことと思います。

さて、そのような中、私が考えるこの時期にこそ取り組むべきことは何かというと、第一にリクルーティング・デザインのブラッシュアップです。リクルーティング・デザインとは、主観的な採用活動から脱出するために、少しずつ新たな科学や専門知識をもって、自社の採用活動を客観的に強化・改善していくことです。

日本企業の採用活動は、伝統的に主観と経験に大きく頼っており、その根拠が不明瞭な部分も多く、それ故に見直し方も洗練されていません。また、採用の進め方の特徴から、見直しのテーマが採用広報の分野に偏重する傾向も強くあります。

その状態から、新たな科学や専門知識をもって、自社の採用活動を正しい方向に強化・改善していくには、「採用担当者が採用活動そのものについて新たに学ぶ」ことが必要となるわけですが、そもそも多忙な採用担当者の方にとってそれが比較的に可能なのは、消去法的に今の時期しかないと思います。

残念ながらその学びをこのコラムでカバーするのは難しいのですが、今回は私が今年もいろいろな企業の選考設計を拝見してきて、どの企業においてもたいがい脆弱だと感じる設計ポイントについてお話ししたいと思います。自社のリクルーティング・デザインについて考える、きっかけとしていただければと思います。

何を見るかいい加減=すべていい加減

今回私が取り上げようと思うのは、「評価項目の設定」です。

「評価項目の設定」という言葉を見て、多くの採用担当者の方が興味を失ってしまうのかもしれません。評価項目の設定は、なぜかびっくりするくらい興味対象ではなく、ぞんざいに扱われているように思います。それこそ前年踏襲か、少しの変更を加えただけならば、設計に一時間もかかっていないかもしれません。

ここで先に、私が考える選考設計の3種の神器を申し上げましょう。

それは「求める人材像」「評価項目」「評価基準」です。中でも「評価項目」の設定は特別な存在意義を持っています。つまり、「評価項目の設定」こそ、選考設計の中枢的存在なのです。

私は普段多くの企業と仕事をしていて、この「評価項目の設定」に脆弱性を感じることが少なくありません。それは、どんなに採用広報を上手に展開して母集団形成をしても、どんなに時間をかけて面接者トレーニングをしても、最終的に求めている結果をすべて手放してしまうほどのリスクを抱えています。

ぜひ、自社の面接評価表をお手元に準備してください。今回は簡易的に、私が依頼を受けて評価項目の精査を行うときに、まずどのような観点でチェックを始めるかを、お話ししたいと思います。

***

お手元の面接評価表にはおそらく、自社が応募者の見極めに使っている評価項目が示されていると思います。まずはそこに載っている評価項目の理解を深めることから始めましょう。

前提を再度お話しすると、これらの評価項目の評価上位者が実際に内定者となり入社してくるのですから「自社に、どんな人に入社したもらいたいのか」という問いに対する、最も直接的な答えだということになります。

翻っていうと、設計上はこれらの評価項目以外については、一部の収集情報を除き、応募者を評価しないことになります。それゆえ、評価項目の設定の意味は重大です。抜け・漏れがないか、最後まで議論を尽くし、精査しなくてはなりません。

こういうことを書くと、もしかしたら、「うちの場合はこういった評価項目はあくまで最終合否判定の参考にしかすぎなくて、もっと総合的に面接者が人物評価をしている」という方もいらっしゃるかもしれません。そうである場合、理屈的には現状、リクルーティング・デザインと呼べるほどの設計がそもそも施されていない段階だと考えていただいた方がよいでしょう。

では話を戻して、まずは評価項目を精査できるようになるために、こちらのモデルを使って理解を深めましょう。


評価項目への理解を深める



このモデルでは簡易的に、「人が人を見るとき」の観点を、先天的な要素か後天的な要素かによって並べています。それぞれの観点において、研究者や専門家が体系化し知識化しています。例えば「特性」であれば人の特性についての専門知識があり、「価値観」であれば人の価値観についての専門知識があるといった具合です。

ほとんどの企業のケースにおいて、設定されている各評価項目は、このモデルに示した観点のいずれかに属しています。「特性」や「基本処理力」を評価するために、SPIテストを導入している企業が多いのはご存じの通りです。

面接で最も多くみられているのはどれでしょうか。これはほとんどの企業で間違いなく「行動特性」です。

「行動特性」は、行動の特性ということですから、ある特徴立った行動がとれる人物かどうかということであり、加えて「行動特性」にもいろいろな種類があるのだろう、ということはお分かりいただけると思います。

そこで「行動特性」には例えばこのようなものがある、ということを知っていただくために、経済産業省が提唱している「社会人基礎力」を紹介します。




どうでしょうか。お手元の面接評価表の評価項目に近いものが並んでいると思います。

では、こちらでは架空の企業A社の評価項目を例に挙げて、説明をしていこうと思います。皆さんは自社の評価項目も併せてご覧になっていただければと思います。


 
r_kcl0009_zu3

これらの評価項目が、先ほどのモデルでいうところの、どの観点に識別されるのか考えながら、ブラッシュアップの手掛かりを探してみましょう。次に、私が評価項目の精査の依頼を受けたとして考えた識別とともに解説をします。

カギは「求める人材像」構築の経緯

私がA社の評価項目の精査の依頼を受けたとして考えた識別を、一番右側の列に追加したものがこちらです。

r_kcl0009_zu4


「主体性」、「コミュニケーション力」、「実行力」、「協調性」についてはおそらく「行動特性」の評価項目だといえます。行動特性は、面接で過去の行動事実を聞き、その質と頻度によって評価することになります。いわゆる、構造化面接手法です。

識別上、その定義が要確認だと思われるのは、「責任感」と「ストレス耐性」です。「責任感」のような表現は、何をどのように考える(感じる)、もしくは何をどのようにする行為について「責任感」があると評価するのか、これは人によって大きく見解が異なるため、「責任感がある」という一言だけでは、ほぼ間違いなく評価のブレを誘引します。しっかりと共有が可能な、具体性のある定義が必要です。

「ストレス耐性」も同じように、ストレスをストレスと感じない肝の大きい人物を求めているのか、ストレスがあってもいいけれども、ストレスの原因に自ら働きかけてストレス状況を脱することができるような行動力のある人を求めているのか、定義によって評価項目のラベルが持つ意味は変わり、評価の方法も変わってきます。

この「責任感」も「ストレス耐性」も、「求める人材像」を構築した経緯を振り返り、「例えば、〜なときに、〜なことができるような人のことだ」というように、その持つ意味を確認することが大切です。それにより、その評価項目がどの観点に識別されるのか明確になり、ついては評価の質も整っていくでしょう。

ぜひ、自社の評価項目を眺めて、定義が曖昧な項目がないかを確認してください。知識を評価したいのか、考え方や価値観を評価したいのか、過去の行動事実を評価したいのか。人(面接者)によって、同じ事象に対し評価のバラつきが出てしまいそうなものがあれば、「求める人材像」と突き合わせて修正をしてください。

私が見る限り、選考設計が未熟な企業ほど、実質的には応募者集団の中での相対的な印象評価によって、力技で合格者を決めてしまう傾向があります。自社で求める能力と無関係に合格を出すのですから、入社後に自社にフィットせず、活躍できない人材を迎えてしまうリスクがあります。

「評価項目」を精査することで、確実にその特徴を備えた人材を社内に迎えることが可能になります。毎年どのような特徴を備えた人材に入社してもらいたいのか、人事は終わりのない改善を追求し、継続し続けなければなりません。

そして以前にも述べましたが、いろんな人がいてよいから……、という考えは、選考設計を行わない理由にはなりません。そのような場合も、確かな意図をもって多様性を生じさせるべきであり、設計の質を高めた結果の多様性であるべきです。

このコラムを読んでいる方の間で、リクルーティング・デザインの重要性、採用担当者の学びの必要性について、意識が高まっていくと幸いに思います。

ページトップへ