テストの必要性を再検討する際に持つべき視点とは?準備する/採用計画

Q

面接前にテストを行うことで応募ハードルが上がっていると感じます。テストの必要性を再検討する際に持つべき視点はなんでしょうか


当社では、面接前に一般教養に関するテストを実施してきましたが、その必要性を再検討したいと考えています。

もちろん、学生が一般教養を持っていることに越したことはありません。しかし、評価軸は他にも多くあると思いますし、テストを課すことで応募のハードルが上がっているのではないかという懸念もあります。

自社が本当にテストを実施する必要があるのかどうかを判断するためには、どのような視点が必要でしょうか?

( 専門商社/従業員規模 500~1000人未満/採用業務経験 3~5年 )

Q
テストのメリットを理解し、「求める人材像」を意識して検討しましょう!

テストを使うメリットは、オペレーションと評価の精度という2つの側面から考えることができます。

オペレーションの面でいうと、少ない労力で多くの応募者の結果を同時に得られるというメリットが挙げられます。 ゆえに、応募者の人数が多く、面接に呼べる人数まで絞り込みたいときなどに使用している企業が多いでしょう。

「テストを課すことで受験することのハードルを上げてしまっているのではないか」 ということですが、確かに、応募者に事前学習が必要だと思われたり、実施日程や実施場所の利便性が悪かったりすると、そのようなことが起こるかもしれません。 しかし、それらは告知の仕方や実施方法の調整でコントロールできるのではないかと思います。

一方、評価における精度という面においてテストを使うメリットは、人よりも客観的な評価が可能だということです。

例えば、応募者の 「性格」 を評価したい場合。心理学のプロでもない面接者が評価するよりも、専門家が作成した質問に回答させ、それに統計的な処理を施したほうが信頼性は高いといえます。 特に 「性格」 などについては研究の歴史も長く、テスト結果に対する信頼性もそれなりに期待できます。

つまり、評価したい対象によっては、テストは面接より評価手法として優れているといえるのです。

ですから、テストの利用を検討する際には、自社の求める人材像をもとに、テストで何を評価したいのか検討することが重要です。

一般的に、「求める人材像」 は以下のような評価対象を組み合わせて定義されています。

・ 性格
・ 基本処理力 (地頭と呼ばれるような力)
・ 価値観
・ 知識やスキル
・ 興味
・ 意欲
・ 行動の質 (主体性・コミュニケーション力・協調性など)


このうち、性格・基本処理力・価値観などについてはテストがよく利用されています。 これらはあまり変容しないため、一般的に入社後の教育対象ではありません。 そのため、テストは有効な選択肢になるでしょう。

知識やスキルも、テストによる評価はとても有効です。 例えば、プログラミングのスキルや会計の知識、英語力などは、面接で問うよりもテストを実施したほうが圧倒的に信頼性の高い評価が可能です。 ただし、知識やスキルは入社後に育成することも可能です。ゆえに、入社後のこともあわせ考えたうえで実施を検討するとよいと思います。

個人的見解ではありますが、興味や意欲については変容が大きいため、あるタイミングのものをテスト結果によって得たとしても信頼し続けることは難しいでしょう。一時的な参考にするということであればよいかもしれません。

行動の質 (主体性・コミュニケーション力・協調性など) については、 多くの企業で行動の質を軸にして「求める人材像」が表現されているので、テストで評価できるのであれば、導入を大いに検討してよいと思います。 ただ、私の個人的な見解としては、テストで応募者の行動の質を正しく評価するのは難しいのではないかと考えています。 例えば、リーダーシップがある行動がとれるのと、リーダーシップについて詳しい (知識がある) のは意味が異なりますが、テストでは、それらを区別することが難しいのです。


読者の皆さんの中には、自社で採用しているテストの結果に、まさにこうした行動の質について記載があることに疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。テストによって異なりますが、それは大概、性格テストの結果をもとに蓄積したデータをテスト作成会社が独自に分析して、受験者がとりやすい行動を表しているものです。

それらを参考にすることはもちろん可能だと思います。ただし、応募者が本当にどのような行動の質を備えているのかは、 (面接やグループワークなどで) 個別具体的な本人の行動事実を確認するしかない (するべき) というのが実情だと思います。

また、上述してきたテストの他にも、メンタルヘルスを測定するものなど特定の観点を目的としたテストもありますので、ニーズがあれば満たすことも考えられます。


ちなみに、質問者様の会社では一般教養のテストを実施しているとのことですが、一般教養は私の説明にあてはめると 「知識」 の分類になります。

つまり、一般教養のテストをするメリットとしては、

・ (入社後に育成はしないので) 応募時点であるレベルの一般教養を求める必要がある。
・ テスト手法を用いることで、同条件下における応募者の一般教養の質を測れる。
・ オペレーション面で、一度に多くの応募者を少ない労力で測定できる。

といったようなことになります。

これらのメリットを重視して活かし続けるか、もしくは、

・ 一般教養は入社後に教育する。
・ 求める人材像を鑑みた場合、もっと他にテストで測定したい(すべき)ものがある。
・ テストによって面接可能な人数まで絞り込む必要がない。

といったような状況であれば、違うテストに置き換えたり、選考プロセスからテストを除外することが検討できると思います。


最後に。何らかの形 (継続もしくは置き換え) でテストを継続した場合には、テストの結果と入社後の評価に相関があることを検証することをお勧めします。

テストの導入には多額のコストが伴う場合も多いので、コストの観点からもその有用性を検証し、選考プロセスを見直し続けることが大切です。

ぜひ慎重に検討していただき、採用活動をよりよいものにしていただければと思います。
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