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求める人材像:要件は最小限に準備する/採用計画
監修:曽和利光(組織人事コンサルタント)


「求める人材像」に含まれる人材の特性要素を決定するときには、できるだけ最小限の数に要素を絞らなければならない。対象者が制限されすぎる可能性があること、入社後に育成しにくい「先天的な要素」を持つ人材は希少であること、荒削りな人材を採用できなくなること、策定した人材要件が陳腐化しやすいことなどの理由から、「求める人材像」の必要条件は、優先順位を考え、できるだけ少なくなるように検討する。

「求める人材像」に含まれる人材の特性要素を決定するときに、念頭に置いておかなければいけないのは、できるだけ最小限の数に要素を絞ることです。あれもこれもと、不必要にたくさんの要素を入れた「人材像」をつくってはいけません。これにはいくつかの理由があります。
まず、たくさんの要素を同時に満たす人材のみを採用対象としてしまうと、対象者が限定されてしまいます。少ない対象者の中から、相対的に望ましいだろう応募者を選ぶしかなくなります。「裾野広ければ山高し」といいますが、少ない対象者の中からでは、必要な数の応募者を採用できない可能性が生じてしまいます。あまりに多くの要素を要求すると、「そんな人は世の中に存在しない」ということにもなりかねません。
次に、人材を構成する能力や特性、志向などの各要素には、入社後に育成することのできない「比較的先天的な要素」と、入社後の仕事や研修などを通じて「十分育成可能な要素」があります。後者は、社内の育成パワー次第ですが、できるだけ採用時の要件としない方が賢明です。入社後に育成しにくい能力を持った人材は、労働市場においては引く手あまたであり、多くのライバル企業と取り合いになることが考えられます。このことをきちんと意識し、ターゲティングをしておかないと、採用競争に勝つことはできません。
さらに、特に新卒採用などのポテンシャル採用においては、まだ成長途上の荒削りな人材が多く、バランスよく、たくさんの特性を持っている人は多くはありません。ある能力はかなり高くても、ある能力はやや劣るという、でこぼこした人材がたくさんいます。求める人材要件を多くしてしまうと、こういう荒削りな人材を採用できなくなり、小さくまとまった人材ばかりになってしまう恐れがあります。
加えて、現在のような変化の激しい時代においては、策定した人材要件が、すぐに陳腐化してしまう可能性もあります。多くの企業は、自社の組織内の多様性を確保するよう、常に努力しています。一般に、「組織が環境の変化に対応できるようにするためには、できるだけ外部環境と同等の多様性を、組織内につくること」といわれています。同時にたくさんの要件を、採用する人材に要求すると、同質性の高い、多様性のない組織となっていきます。しかも、その要件のセットは、次の時代にも必要とされるものかどうか、分かりません。
このような理由から、「求める人材像」の必要条件は、吟味を重ねた上で、優先順位を考えて、できるだけ少なくなるように、絞った方がよいのです。