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求める人材像:「演繹的アプローチ」と「帰納的アプローチ」準備する/採用計画
監修:曽和利光(組織人事コンサルタント)
「求める人材像」は、採用活動のゴールであり、採用戦略のベースともなる、非常に重要な概念である。この「求める人材像」を策定するには、「演繹的アプローチ」と「帰納的アプローチ」の二つの方法がある。自社の置かれた環境を鑑みながら、両者をバランスよく取り入れることが重要である
1.「求める人材像」とは
新卒採用を行うにあたって、まず検討しなくてはならないのが、自社がどのような人材を採用したいのかということです。これは一般的に、「求める人材像」と呼ばれています。
すべての採用活動は、この「求める人材像」をベースに進められていくことになります。
たとえば、リクナビなどの就職情報サイトや自社の採用ホームページを企画する際には、この「求める人材像」を読者(ターゲット)として想定し、コンテンツを考えていきます。また、適性検査や面接などの選考設計をするときには、「求める人材像」に合致した人物を絞り込んでいけるような基準作りをしなくてはなりません。採用活動のスケジュールやプロセスなど、全体の設計をする際にも、自社の求める人材が、就職活動の中でどのような行動をとるのかということをよく意識する必要があるのです。
2.「演繹的アプローチ」と「帰納的アプローチ」
「求める人材像」を策定するには、大きく分けて、「演繹的アプローチ」と「帰納的アプローチ」の二つの方法があります。
「演繹的アプローチ」とは、自社の事業戦略や組織戦略から「求める人材像」を導き出す方法です。自社の事業戦略を推進し、価値を生み出していくためには、どのような組織を作る必要があるのか、そしてその組織はどのような人材で構成されるべきなのか、ということをトップダウン的な発想で考え、求める人材の能力や特性にまで落とし込んでいきます。
一方、「帰納的アプローチ」とは、自社で実際に高い成果を出している人材(ハイパフォーマー)について分析し、その人たちがもっている能力や特性、指向などを抽出する方法です。「演繹的アプローチ」とは反対に、ボトムアップ的な発想といえます。
具体的には、ハイパフォーマー本人に対するインタビューや適性検査を実施したり、経営者や管理職層に対して「ハイパフォーマーが成果を生み出している要因」をヒアリングしたりするなどして、「求める人材像」の要素を導き出していきます。
3.「求める人材像」の策定のしかた
演繹的アプローチと帰納的アプローチには、それぞれにメリットとデメリットがあります。
演繹的アプローチによって作られた人材像は、事業を推進していくための「あるべき姿」である一方、理想像にすぎないという側面もあります。実際に採用を進めていくと、その理想像に合致した人物などめったに存在していなかったり、仮にいたとしても、他企業と激しく競合してしまったりということになりかねません。
一方で、帰納的アプローチから作られた人材像は、現実に即したものではありますが、あくまでも現時点におけるベストな要件ということになります。今後の環境変化や、将来的に自社が目指す姿を考えたときには、現在とはもっと違った人材が求められるかもしれないのです。
このようなことを考慮すると、「求める人材像」を策定する際には、ひとつのやり方で決めてしまうのではなく、両方のアプローチから検討し、両者をバランスよくすり合わせていくことが大切です。
あくまで一般論にはなりますが、自社を取り巻く環境が比較的安定していれば帰納的アプローチを、自社が変革期にあり、今後新たな人材が必要となっていく場合には演繹的アプローチを重視してもよいかもしれません。