辻 太一朗(つじ・たいちろう)
2019/02/06
イントロダクション
皆さんこんにちは。採用ナビゲーターの辻太一朗です。
2月に入りまして、リクナビ2020もついに来月オープンと次年度の採用シーズンが本格化してきた中で、慌ただしい日々を送っている方も多いと思います。
さぁこれから採用だ、というこのシーズンに人事異動で採用担当を離れてしまう方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。
最近の傾向として、どの企業も採用担当の交代が数年ごとにあり、採用担当になった人からは「業務での目標や自分のキャリアパスを描きにくい」という話を耳にしました。
確かに、採用担当は1年を通して採用フローを回すことで手いっぱいになってしまいますし、2~3年で異動となってしまう可能性もあれば、成長の軸をどこに置けばいいのか分からない、と悩んでしまうのも無理はありません。
今回はそういった「社内における自身の成長」についてのお話をさせていただきます。
私の話が少しでも参考になれば幸いです。
目標設定が高すぎると、疲れてしまいませんか?
リクルート時代、私が新卒採用担当をしていたころの話です。
面接で出会う学生たちは皆、非常に目標が高く、意欲に満ち溢れていました。
私もそんな学生たちに対して、大きな期待をもって一次面接を合格にしたところ、次の上司との面接でことごとく不合格になっていました。
なぜ落としたのか聞いてみると、「学生の目標設定が高すぎる」と一蹴されてしまいました。
どういうことなのか、もう少し理由を掘り下げて聞いてみると「目標設定が高いことは非常にいい事だよ。しかし、辻が合格と判断した学生に会ってみると、いままでの能力に見合っていないケースがほとんどなんだよ。あまりにも意識が高すぎる学生が多いというか…。この目線での面接を繰り返すと、入社したとしても設定した目標を達成できずに疲れてしまうのではないか」と上司は教えてくれました。
最近、採用担当の方々の悩みを伺ったときに、この上司の指摘を思い出したのです。
多くの採用担当の方と接していると、とても真面目に「自分はこうあらねばならない」と考えている人が多い印象を受けます。
社会人として、採用担当として、社内の人や学生に対して「こうでなければならない」という理想像を自分の中で自然と作り上げているというか…。
そのため、理想像に向けて設定する目標が、自然と高くなってしまうのではないでしょうか。
いっそのこと「こうでなければならない」という意識をなくすのも大切でしょう。
私自身の経験からいえば、成長につなげるために大切な事は「自己肯定感」かもしれません。
ではその自己肯定感、一体どうやって培っていけばよいのでしょうか?
「自己肯定感」を自ら生み出す目標設定。
私がリクルートに勤めていたころ、小さなことに対して「俺こんなことやったけど、すごくない?」「よし!昨日はできなかったのに今日はできた!」と自分で自分を褒められる社員がたくさんいました。
それは自ら設定する目標レベルが、あくまでも目線の先にあるものであり、些細なことに対してもしっかりと自分で自分を評価してあげられたからだと思います。
もちろん全てそうとは言えませんが、あえて目標レベルを低く設定し、ちょっとしたことでも素直に喜べる人は継続的に頑張れる傾向があるのかもしれません。
この「自画自賛」は、実はとても大切だと思います。
仕事のスピードを上げることや、トラブルを減らすことなどは、普段の業務を進める中で比較的目標にしやすいですよね。
「業務が自分の計画していた通りに進んだ」「大きなトラブルもなく滞りなく終わった」「前回やったときよりも早く作業を進められた」など、些細なことと思うかもしれませんが、十分に素晴らしい成長ではないでしょうか。
目標レベルが低すぎてもいけませんが、高すぎても大変です(笑)。
なのでこうした日々の業務の中で見つかる小さな変化に注目して、自己肯定感を上げることで自身の成長につながっていくのではないでしょうか。
話している中で思い出したのですが、リクルート時代の後輩の話をさせていただきます。
他の営業メンバーが売り上げ目標の達成率にヒリヒリしている中、その後輩は「いかに楽をして売り上げ目標を達成するか、ということに最大限の努力をしています!」と言っていました。
一見すると「楽をして結果を出せるの?」と疑問に思うかもしれませんが、これを達成するために必要となってくるのは、自分の仕事を俯瞰して、いかに効率的に作業を進めるか、という考え方ですよね。
日々の業務を通して効率化に対する改善点はどんどん見つかりますし、それをクリアすれば「お、自分、結構できるじゃん!」と自分で自分を褒めてあげられます。
これを繰り返していった結果、彼はどの社員よりも効率よく仕事を進めていき、後に数百億円規模の一大企業の創業者になりました。
そんな彼の姿を思い起こすと、仕事における成長軸は大きく分けて2種類存在するのかもしれません。
一つは質。もう一つはスピードです。
冒頭でもお話ししましたが、新卒採用は異動も多く、採用フローも前年と同じことをやっても採用成功に結びつかない、なんていうこともあるでしょう。
そもそも採用における質の高い仕事、ということ自体が非常に曖昧な上、周りの判断を仰いでも目標提示が難しいですよね。
だからこそ、業務のスピードやミスの削減などに成長の軸を移してみると、自分の中の成長の物差しがくっきりと見えてくるかもしれません。
仕事の流れを読み、効率化を図ること=自分の成長 と認めてあげる。
業務を合理的に進める人にはある特徴があります。
それは全体を俯瞰して作業を見つめ、分解するということ。
例えば、昨年と同じ内容のインターンシップを行うとしましょう。
そこで昨年の資料を読み、書いてある順番で準備を実行する人は、結果的に時間がかかってしまったり、本来起こさないですむようなトラブルに見舞われたりするように思えます。
確かに、前年の資料で「この手順」と書いてあればその通りに進めるのは、ある意味正解です。
ですが、人それぞれ進捗には差がありますし、同じ段取りでも状況や環境が違えば結果が変わるのは当然です。
なので、まず初めに仕事の全体を見て、自分がしっかり分かっているかを確認することが必要です。
ほとんどの場合、分からないことが必ず出てきます。それを周りの人や前任に聞くことは決して悪い事ではありません。むしろそれをすることで、見えなかった全体像がしっかり分かるようになります。
そうして、業務全体の流れを見て次に確認するのは、「自分で進められること」と「他者の力が必要なこと」を精査することです。
その割合によって、動きが変わってくるでしょう。
自分でやることはひとまず後回しにして、まずは他者の協力が必要なことに対しての段取りを組んでみてはどうでしょう。
やみくもに進めても、あとから「これは自分で決められないことだ。どうしよう」と焦ってしまいますよね。
また、そこで他の人に声をかけても、すぐに対応できるわけではないでしょう。
そのため、他者の力を借りるためには作業全体の流れをしっかり把握し、自分が決めることと他者の判断を仰ぐものを分けて動くと良いかもしれません。
この作業組立がしっかりできれば、業務の合理化を図ることができるので、結果として仕事のスピードアップにつながります。
この「業務効率化」に注力して日々の仕事をするだけでも、自身の成長につながっていくでしょう。
以上、一つのヒントではありますが、成長に悩んでいる方は違う角度から自分の成長目標を設定してみてはいかがでしょうか。
今月もお付き合いいただきありがとうございました。
- 辻 太一朗(つじ・たいちろう)
- (株)リクルート人事部を経て、1999年(株)アイジャストを設立。
2006年(株)リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。
2010年(株)グロウス アイ設立、大学教育と企業の人材採用の連携支援を手掛ける。
また同年に(株)大学成績センター、翌11年にはNPO法人DSS (大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会) を設立。
採用に関わる多くのステークホルダーを理解しつつ、採用・就職の"次の一手"を具体的に示すことに強みを持つ。
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