2014/09/02

こだわりを持つことが採用業務のやりがいにつながる―採用担当者のリアルな悩みにお答えしてみました―

辻 太一朗(つじ・たいちろう)
(株)リクルート人事部を経て、1999年(株)アイジャストを設立。
2006年(株)リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。
2010年(株)グロウス アイ設立、大学教育と企業の人材採用の連携支援を手掛ける。
また同年に(株)大学成績センター、翌11年にはNPO法人DSS (大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会) を設立。
採用に関わる多くのステークホルダーを理解しつつ、採用・就職の"次の一手"を具体的に示すことに強みを持つ。

イントロダクション


こんにちは。採用ナビゲーター・辻太一朗です。

採用担当者の皆様とお話ししている中で、以下のようなご相談がありました。

「どのような解決方法があるのか、ノウハウ的な部分になるとは思いますが、ご教示いただけると嬉しいです。自分なりの何かを見つけられず、前任者の基準でしか判断できませんし、自分で仕事をしているような実感もなく、自分自身のポジションや役割がわかりません」

私も採用担当をしていたころ、同じような悩みを持っていました。
前任者の業務を引き継ぐだけで、何の変化も生み出せない自分自身に嫌気がさしたこともありました。

そこで今回は、いただいたこのご相談について、私自身の経験を踏まえて私なりに考えたことを書いてみたいと思います。

「実感値がない」 から採用業務は難しい

私は新入社員の時点から人事部への配属となり、採用業務に就きました。会社として採用担当者は大勢いましたが、配属となったのは京都地区で、担当者は私を含めてわずか2名。しかも翌年には先輩が異動となり、私一人だけとなってしまったのです。

先輩がやってきた業務はある程度把握していましたが、「これから一人でどうすればよいのだろうか?」 と悩みました。

当時を振り返ってみると、悩ましさの原因は 「実感値のなさ」 にあったと思います。

新卒業務には、広報、学内訪問、企業説明会、面接などさまざまなフェーズがあるのは皆さんもご存じの通りです。

広報一つをとっても、 「どの媒体に掲載するべきか」「予算はいくらにするべきか」「我が社のどんな点をPRするべきか」 というように、考えるべきポイントは無数に浮かんできます。

採用業務(なかでも、特に広報は顕著かもしれません)は、何をもって成功、もしくは失敗といえるのかが曖昧です。
また何となく成功したと感じることができても、どの施策が効果的で成功したのかは、非常に分かりにくいですよね。

採用活動の各フェーズは時期が重複し、いくつものフェーズを同時並行で進めていかなければなりません。例えば、広報に取り組みながら企業説明会の企画を練り、説明会を行いながら面接も進めていく、といった具合です。

そのため担当者は、自らの業務を振り返る時間的な余裕が乏しく、日々の業務に確信が持てず、よって自信も持ちづらい。
これは採用に携わる上で、もっとも難しい問題かもしれません。


ささいな動機でもいい。 「こだわり」 を持ってはいかがでしょう?

地区の採用を一人で行うこととなった当時の私は、自分なりの施策を打つことはほとんどできず、先輩が行ってきたことをそのまま実施していただけでした。

今でこそ「採用ナビゲーター」として本コラムを執筆させていただいていますが、私が担当していた地区に、学生を動機づけるのが異様に上手い後輩が赴任してきたことで、私自身が降格となる異動を命じられたこともありました。おそらく、今回ご相談を寄せてくださった方は、当時の私より、よっぽど優秀ではないかと思いますよ。

ただ、実感値がない、振り返る時間もない中で新たな施策を講じるのはかなり難しいことだと思います。

慣れないうちは、前任者の踏襲でも構わないのではないでしょうか。
何事もそうですが、始めから上手くこなせる人なんてまずいません。

では、ある程度業務に慣れてきたら、何をすればよいのか。

私は、 「一つだけでも、こだわりを持つ」 ことをお勧めします。

すべてのフェーズにおいてこだわりを持つのは難しいでしょうから、まずは一つ、これまでの業務の中で 「このやり方は納得できない」「これはもっと改善できるはずだ」 といった 「気づき」 を見つけてみてください。

こうした「気づき」 が、こだわりを生む材料となります。

当時の私のこだわりは 「先輩よりも面接での見極めを高める」 ことでした。なぜ面接の見極めにこだわったかというと、私の面接評価に対して、先輩から「お前はまだまだ視野が狭いよ」 と再三いわれて悔しかったからです。

また、別のある担当者は、説明会参加者が選考に参加する比率を前年度より高めることをこだわりとしていました。
その方は説明会の司会を任されていたので、 「これだけは自分の力で変えられる!」 と考えたようです。

こだわる動機は、ささいなことでもまったく構わないのです。

こだわりを持つことが、働く喜びにもつながる

こだわりを持つことによって何が変わるかというと、ゴール設定ができるようになってきます。
さらにいえば、採用に携わること、働くことに喜びを得られるようになるのです。

当時の私の場合、先輩よりも面接での見極め力を高めたかったのですから、 「先輩よりも自分の方が見る目がある」 と思いたい。独りよがりかもしれませんが、これが私にとっての 「ゴール」 です。

ゴールにたどり着くためには、 「先輩は何が見えていたのか」「自分は何が見えていないのか」 といった現状分析が必要になります。これはスタート地点ともいえるでしょう。
ゴールを設定できていなかったときは、スタート地点すら曖昧で、「自分は何ができないのか」 も分かっていなかったのです。

分からないことを理解するためには、思い切って先輩に聞いてみるべきか、それとも本で調べればよいのか、というように主体的に考えて動けるようになるのです。これはスタートを切って走り出した状態といえるでしょう。
ゴールを見据えてから分からないことを調べるのと、漠然と分からないことを調べるのとでは、身に付き方が違います。

新たな学びから 「そうだったのか!」 と発見することが実感値を得ることであり、採用担当として働くことの喜びにもつながると思います。

一つのこだわりを持ち、ゴールに向かって走るコツをつかめれば、二つ目、三つ目とこだわりを増やせるようになるでしょう。
こうした積み重ねが、企業全体として、採用レベルの向上につながっていくのではないでしょうか。


皆さんは、いかがお考えでしょうか。

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