2016/01/08

「分からないことだらけ」から抜け出す、ちょっとした工夫 -キャリアの浅い採用担当者へのメッセージ-

辻 太一朗(つじ・たいちろう)
(株)リクルート人事部を経て、1999年(株)アイジャストを設立。
2006年(株)リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。
2010年(株)グロウス アイ設立、大学教育と企業の人材採用の連携支援を手掛ける。
また同年に(株)大学成績センター、翌11年にはNPO法人DSS (大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会) を設立。
採用に関わる多くのステークホルダーを理解しつつ、採用・就職の"次の一手"を具体的に示すことに強みを持つ。

イントロダクション


明けましておめでとうございます。採用ナビゲーターの辻太一朗です。本年もよろしくお願いいたします。

新年を迎えたばかりですが、採用担当の皆さんは、すぐさま仕事モードに切り替え、取り組まなければならない業務が多いのではないでしょうか?

経団連より発表される採用活動解禁時期が毎年のように変化するため、どのようなスケジュールでどのような施策を講じればよいのかと悩んでおられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

特に、採用担当者としての経験が浅い方ですと、一つひとつの選択に対して自信を持って決断することが難しいのではないかと思います。

当然ながら、私も採用担当者時代は 「どうしたらよいのか分からない」 という場面に何度も出くわしました。

こうした 「分からないことだらけ」 から抜け出すために、なにを考え、なにを実践すればよいのか、今回はキャリアが浅い採用担当の皆さんとともに考えてみたいと思います。

新卒採用は 「変数」 だらけ


まずは 「新卒採用の難しさとはなにか」 という根本的な疑問について考えてみます。

それは 「制約される条件」 と 「決めなければいけない変数」 が無数に存在していることではないでしょうか。つまり、 「毎年、ここだけは絶対に揺るがない」 という固定した要素が少ない業務であることだと思います。

例えば、その年のスケジュールはもちろん、業界特性、自社の知名度・人気度、採用人数、予算、他部署の協力度合いなどは 「制約される条件」 といえるでしょう。

一方で、求める人材像の決定、選考フロー策定、予算配分、イベント企画立案、告知方法、面接手法、内定者フォローなどは、採用担当者が 「決めなければいけない変数」 といっていいでしょう。双方とも挙げればキリがありませんよね。

スケジュール変更一つを例にとっても、経団連がその年の採用活動解禁時期を変更することによって、それまでの傾向と対策が当てはまらなくなってしまい、 「他社はどう動いてくるのか?」 「学生の動きにも変化が生まれるのだろうか?」 などと、分からないことや制約される条件はさらに増してしまいます。

長きにわたって採用に携わっているようなベテランの担当者であれば、そうした分からないことだらけの中でも

「今年、学生はこのように動くだろう」
「同業他社はこう動くはず」
「解禁日が繰り上げになったことで○○は変化するが、△△は変わらないのではないか」


というように、ある程度自信をもって予測ができることも増えてきます。

これはジグソーパズルで例えるならば、ピースの半分が既に埋まっている状態から残り半分を組み立てているようなものです。

一方で、採用に関してキャリアの浅い担当者は1ピース目からスタートするようなものですから、 「どこから手をつければよいのか分からない……」 といった状態になりがちです。

これではベテラン社員と比較し、決断までのスピード、正確性に差が出てしまうのは当然です。

最適な方法を “見つけようとしない” 対策?
分からないことが多くてどこから手を付けていいのか分からない時に、私が昔からよくとっていた対策は、最適な方法をあえて “見つけようとしない” ということです。

これは学生時代に学んでいた土木工学で、土木施工計画を立てる際に用いる 「シンプレックス法」 という考え方を参考にしています。

「シンプレックス法」 とは、複数の変数があり、それぞれに何らかの制約や条件がある中で、最適な結果を導く手法のことです。

具体的には、制約や条件に合う範囲で、まずは適当に変数へ数字を当てはめていきます。ここはどんな数字でもよいのです。

仮に 「1」 と置いてみるとします。

次に、それによって得られた結果よりも、さらによい結果となるように 「2」 「3」 ……と、少しずつ変数を変えていくのです。そして、どの変数を変えてもよりよい結果がもう得られなくなったときに、それまでの一番よい結果を 「最適」 と置くのです。

つまり、最適な方法を “見つけようとしない” ということの真意は、 「最適な結果をいきなり求めようとしない」 ということです。

では、この手法を採用に当てはめて考えてみましょう。

採用における変数とは、説明会の内容や選考開始時期、選考方法、内定出しのタイミング、内定辞退防止策などで、条件は、予算や部署に対する制約などとなります。

まずは、適当に変数を固定してみましょう。

「すべて前年度と同様の施策にする」 でもいいですし 「スケジュールのすべてを2カ月繰り上げにする」 でも構いません。

そして、得られた結果を見て、気になる点を一つずつ変更していきます。

採用担当者もしくは採用部門として変更しようがない実質的な定数もあると思いますので、変えられる範囲のものでよいのです。また、 「どちらがよいのか分からない」 といったものは 「どちらでも構わない」 として、他の変数に目を向けてみましょう。

一つ、二つの変数を変えたことで、最初に得られた結果よりもよくなっていると感じることができれば、この手法を取り入れた価値が大いにあったといえるのではないでしょうか。

もちろん、その結果がベストかどうかは分かりません。しかし、 「ベターな結果を出せた」 ことには違いはありませんし、特にキャリアの浅い担当者であれば、ここまでできれば充分だと思います。

 

「自分で判断すること」 が成長への第一歩

キャリアの浅い担当者があまりにも分からないことに囲まれてしまうと、自分の考えではなく、周囲の発言に振り回されてしまい、つい 「寄せ集めの判断」 になってしまいがちです。

そうなってしまうと、結果的にそれが上手くいっても自信がつきませんし、自ら主体的に判断したものでもないため、面白くありませんよね。

また失敗したとしても、そこからなにを反省しどう活かしていけばよいのか、分かりづらいのではないでしょうか。

つまり、周囲の発言に振り回されたうえでの判断だと、上手くいっても失敗しても、自分自身の成長につながらないのではないかと思います。

新卒採用の成否の基準は各企業によってさまざまであり、一つの正解などというものはありません。

だからこそ採用担当者一人ひとりが自分で考え、ベストではないとしても、ベターな結果を見出そうとすることが大切なのではないでしょうか。

「試行錯誤をしながら、自分でノウハウを積み上げていく」

地道な活動と思われるかもしれませんが、そのプロセスこそが、やりがいと成長につながるはずです。

周囲に促されたことを実行しただけの一年と、自分で考えながら過ごした一年では、成長の度合いがまったく違ってくると思います。

今回ご紹介した手法は、あくまで私自身が実行してみた方法でしかありません。

経験を積んでいく中で自分なりの手法を身につけることができれば、それは間違いなく大きな財産になると思います。
このコラムが皆さんにとって、少しでもヒントとなれば嬉しいです。

ページトップへ