どうせやるなら、こんなインターンシップを

ここ数年、広い意味での採用も視野に入れた企業ブランディングの方法としてインターンシップを実施する会社はどんどん増えています。今回は完全に定着してきているインターンシップについて、効果を出すためのポイントについて考えてみたいと思います。

イントロダクション

こんにちは。組織人事コンサルタントの曽和利光です。今回は完全に定着してきているインターンシップについて、効果を出すためのポイントについて考えてみたいと思います。

 

ここ数年、広い意味での採用も視野に入れた企業ブランディングの方法としてインターンシップを実施する会社はどんどん増えています。新卒採用を行う企業で、インターンシップは全く実施しないというところの方が少数派になってきていると言ってもよいぐらいです。ところが、その一方で、インターンシップの効果を疑問視する会社も多いです。要は、どれだけ頑張って盛り上がるインターンシップをやったところで、それが最終的にどのぐらい自社の採用に貢献しているのかがわからないということです。

 

特に夏のインターンシップなどは、実際の本採用活動の時期よりも大幅に離れていることもあり、そこで出会った学生とのリレーションなども知らぬ間に雲散霧消してしまって、結局、学生に対して良いことはできたかもしれないが、会社にとってはどんな意味があっただろうか、というような思いを持つところも少なくありません。

 

そもそもインターンシップは学生がキャリアを考えるための機会を企業が提供するものだという趣旨に立ちかえれば、少しでも学生のためになったのであればそれでいいではないかとも言えるかもしれませんが、とはいえ忙しい中でマンパワーやお金などの貴重なリソースを割いて実施するわけですから、企業のイメージ向上をはじめとした採用活動への好影響を得たいものです。

基本的に「学生のために役立つもの」にする

では、広い意味での採用に好影響を与えることのできるインターンシップのポイントを考えてみます。

 

ポイント1:学生が経験したいものは自社の職務の疑似体験ではない

1つ目のポイントは、学生がインターンシップを通じて知りたいことというのは、皆さんの会社が超人気企業でもない限り、「自社の情報」よりも「キャリアを考えるのに役立つ情報」であるということです。どうしても自社のセールスポイントを知ってほしいという気持ちになるのはわかるのですが、そこをぐっと抑えてもっと広く一般的に「仕事」というものを知れたり、自社ではなく自社の「業界」を知れたりするような内容にすることです。

 

そうすることでもちろん学生にメリットが出るのですが(1社でインターンシップをしただけでいろいろなことが知れる)、企業側にもメリットがでます。自社のことをよく知ってもらえるようなプログラムだけでインターンシップが構成されていた場合、そこに来るのは、少なからず自社に既に関心がある人です。そういう人は、言葉を選ばずにストレートに言うと、「後でも来る」人です。インターンシップという手間のかかるイベントに呼び込まなくても、ふつうに本選考をやれば受けてくれる人です。自社のことを知ってくれる人の裾野を広げたいのであれば、逆説的ですが「自社のことに集中しない」ということです。

 

ただ、その場合に重要なのはメインコンテンツの節目節目で行われる懇親会や会社見学会などのように、自社の社員や職場に「自然に」触れることができるような機会です。コンテンツは自社に訴求しないものであっても、懇親会などでは自然に自社についての話になり、自然に自社の情報がインターンシップ学生に入っていきます。実はこれが重要です。インターンシップを経験した人は、メインのコンテンツからだけ学ぶわけではなく、それを主催しサポートしてくれている社会人の人たちの言動全てから学びます。そう考えると、懇親会など、自社の社員とインターンシップの学生がフラットに膝を突き合わせて、いろいろなキャリアについての話ができるような場こそ、本当のインターンシップのコアコンテンツと言ってもよいかもしれません。

 

ポイント2:ただし、長期インターンシップは別

ただし、1日だけのインターンシップなどもあるように、たいていが数日から2週間程度で企画されていることが多いインターンシップの中では、数ヶ月にわたる長期のインターンシップの存在は一部の学生にとっては貴重です。その場合は、原理的に「自社の仕事」以外の特別プログラム(ビジネスプランコンテスト等)で数ヶ月過ごすというようなことは難しいため、「自社の仕事」の経験で構いません。それよりも、学生にとってはオフィスワーク自体が良い体験になります。

しかし、その場合でも、単なる「長期間のアルバイト」と差異化するためには、振り返りの機会をつくっておくことが重要です。人は経験をするだけでは成長しません。経験を振り返って、そこから教訓を得ていくことで、他の場所でも転用可能な知識やスキルを身につけていくのです。ですから、インターンシップを銘打つ限りは、学生にとってその経験が役に立つように、必ず経験したことを振り返って棚卸を行い、そこで得たこと学んだことを整理するような機会をつくって学習のサポートをしてあげることが必須です。

インターンシップで「学びたい」学生を集める

ポイント3:リファラルやスカウトなどの募集チャネルを重視する

集客においてもポイントがあります。就職活動を強く意識している学生の方がインターンシップを探す意欲、参加する意欲も旺盛ですが、逆にそのような学生を繋ぎ留め続けることは非常に困難です。ただ単にインターンシップの広報を行って待っているだけでは、結果としてそのような学生が大変増えることとなります。
ではどうするのか。そこで重要となってくるのがスカウト型の候補者集団形成手法です。「待ち」ではなく「攻め」ることで、待っていては来ない「それほどまだ就職活動意識が高まっていない学生」にアプローチするということです。

 

主な手法は二つです。一つは内定者や新人などの後輩をたどっていくリファラル(紹介)です。リファラルで先輩からインターンシップを紹介されたので応募してきたという学生の中には、まだそれほど就職活動意識は高くなく、「いい機会だから勉強になるかも」というぐらいの人も多いことでしょう。もう一つはスカウトメディアの利用です。なんとなく自分の情報をスカウトメディアに登録をしてはいるけれども、積極的に自分からいろいろ調べて応募しようとは思っていない層にこちらからスカウトメールなどを打つことで、アプローチします。これもリファラルと似たような効果があります。

 

以上、今回は企業の中でかなり一般的になったインターンシップの効果的な実施ポイントについて考えてみました。一般的になったが故に、いろいろ工夫して臨まないとせっかくの労力が報われません。少しでもご参考になりましたら幸いです。

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曽和 利光(そわ・としみつ)
曽和 利光(そわ・としみつ)
1995年(株)リクルートに新卒入社 、人事部配属。
以降、一貫して人事関連業務に従事。採用・教育・組織開発などの人事実務や、クライアント企業への組織人事コンサルティングを担当。リクルート退社後、インターネット生保、不動産デベロッパーの2社の人事部門責任者を経て、2011年10月、(株)人材研究所を設立。現在は、人事や採用に関するコンサルティングとアウトソーシングの事業を展開中。

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