内定辞退を減らすための効果的な手法はありますか?動機づける/内定フォロー

Q

内定辞退を減らすための効果的な手法はありますか?


毎年、内定者の2~3割ほどが内定後に辞退をしてしまい、どうすれば辞退を減らすことができるのか、解決策が見いだせずにいます。
辞退を減らすための効果的な手法があれば、ぜひ教えていただきたいです。

( サービス業/従業員規模 100~300人未満/採用業務経験 1~3年 )

Q
まずは「すべきことはやっているか」の見直しですが、構造的な問題も

私が(民間企業の採用担当者として)採用領域に携わったのは約20年前なのですが、その当時から内定辞退の話題は変わっていません。

それどころか、それ以前に15年ほど採用業務に携わっていた私の前任者も、同じ課題に取り組んでいました。ですから、この内定辞退という話題はもはや会社単位の話ではなく、社会的な採用(就職)活動の構造から来るものだと言っていいと思います。

最近ではオワハラなどの話題もあり、内定を既に持っていても(10月1日までを目途として)就職活動を続けることが認められる風潮があります。

そうした中、内定辞退防止のアクションは、やり方を間違えると社会的批判を受ける可能性も高まっていると言えます。

ではそのような環境下で、どのようなアクションが考えられるか、以下に示してみたいと思います。

1. 腹落ち面談を実施する
他社の受験を妨害するような施策(日程を拘束するなど)はもはや逆効果です。
内定者は全員、特に自社への入社に腹落ち感が不足し、他社を受験する希望がありそうな応募者に対しては早急に面談を実施し、応募者との関係を深化させる必要があります。

面談では、こちらの採用事情についてもオープンにし、お互いに事情があることを認めあうスタンスが必要です。対等の立場で駆け引きをしないこと、上から目線ではもちろんうまくいきません。

そして面談では、採用活用で得た応募者の情報を振り返り、応募者について自分たちが(応募者が思っているより)よく理解していることを伝えることが重要です。

応募者が今まで頑張ってきた経験(学生時代に力を入れて取り組んだことなど、採用活動の中で知り得た情報)が自社で働いたときにどう活かせるか、つまりこの会社で活躍できる見込みがあることや、応募者が大事にしたいと思っている価値観が満たせる(志望動機など)ことなどを積極的に伝えましょう。

2.同期・社員とつなげる
同期のつながりをフォローし、グループ化することは、親和的動機形成(仲が良い人たちと一緒に居たいという気持ち)をもたらし、一定の辞退防止効果があると考えられます。

もちろん、ただ懇親会を開いたり、SNS上に掲示板を公開したりするだけでは、本当に親和性を高めることができているかどうかわかりません。

内定者がただ集まる機会ではなく、リーダーを決めてチーム単位で何かをしたり、社員がアクションを共にするなどして、同じ目的で何かに取り組むような機会とする工夫が必要です。

内定者および社員の親和性が高まると、情報が入りやすくなるという効果もあります。 辞退を考えている応募者は、そのタイミングで関係性も希薄になりますが、そうした状況を、他の内定者経由で気づけることがあります。

3.課題を与える
人は成長実感があると、「自分がその場にいる意味」を見つけることができます。
つまり、「その企業の内定者になれたことで成長している」という実感があると、その場を離れないほうが自分にとって良い選択だと考えます。

これももちろん、課題を与える=成長実感がある、ではありません。内定者に課題を与えたら、その結果に対し社員がフィードバックをするなど、適切な育成施策を実施することにより、成長実感を与えることができます。

ただ、これは逆の効果を招くこともあります。課題があまりに物足りないと感じたり、難しすぎたりすると「この会社は自分に合っていない」という思いを招いてしまいます。
(これは、内定者の質がバラバラな時にも起こることがあります)

その他、内定者に課題を与えることは、踏み絵のような(例えが悪いですが)効果をもたらし、決断を促す作用をもたらすことにもつながります。

多くの人は、自分がダブルスタンダードの状態であることに対して嫌悪感を持っています。
他社に興味がある状態で、この会社の内定者として課題に取り組み始めることは、その後ろめたさを増長させるのです。

その場合、課題の伝え方も重要です。教材をただ郵送するような形ではまったく効果はありません。例えば、「内定者の皆さんには、9月1日より・・・に取り組んでいただきます。目的は・・・であり、入社後の・・・につながっています云々・・・」というように、事前に実施の目的や理由(重要性)を丁寧に説明する必要があります。

もちろん、課題を与えることについては、学生の学業の妨げにならないような配慮をすることも必要です。

ここまで述べてきた他にも、過去のコラムで内定辞退防止のアクションについて紹介していますので、ご参考いただけたらと思います。

内定出し後「すぐに」やるべき3つのアクション
「この会社に決めよう」と思わせる、3つの話題

内定辞退において危険なことは、面談を実施したり、懇親会を開いたりすること自体が目的化してしまい、真の目的が叶えられているか鈍感になってしまうことです。

多くの企業で、「すべきことはやっているのに効果が出ない」という状況になっているのですが、すべきことは関係構築であり、イベントの実施ではありません。

関係構築の達成度合いについては、簡単に確認することができます。
内定者個々人は、採用担当者であるあなたを当然覚えていて、会った際には「〇〇さん!」と自然に声をかけてくれるでしょうか?

そしてあなたも、(例えば駅でばったり遭遇しても)「あ、〇〇さん、こんにちは!偶然だね!今日は学校?」と笑顔で話しかけられるでしょうか?

もちろん内定者の人数が多い、担当者の数が少ないので無理、という企業も多くあると思います。ただ現実的に関係構築以上の特効薬はなく、それができなければ内定者との間に容易に情報の非対称性、つまり隠しごとが生じることを受け入れなくてはいけません。

ただ、内定辞退については冒頭に述べた通り、構造的な問題と捉えても良いと思います。
質問者の方の「2~3割が内定辞退をする」という現状は、私は異常とは思いません。

これを限りなくゼロに近づけるには、採用活動の構造を一変させることが必要です。
その選択のひっ迫性についても、落ち着いて考えてみる必要があるかもしれません。
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