2018/10/10

「話が上手い」採用担当者になるためには―そのヒントは「PREP法」にあり!?―

辻 太一朗(つじ・たいちろう)
(株)リクルート人事部を経て、1999年(株)アイジャストを設立。
2006年(株)リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。
2010年(株)グロウス アイ設立、大学教育と企業の人材採用の連携支援を手掛ける。
また同年に(株)大学成績センター、翌11年にはNPO法人DSS (大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会) を設立。
採用に関わる多くのステークホルダーを理解しつつ、採用・就職の"次の一手"を具体的に示すことに強みを持つ。

イントロダクション

こんにちは。採用ナビゲーターの辻太一朗です。

10月となり、内定式を終えられた企業もあるかと思います。厳しい就職活動を乗り越え、一回り成長した内定者の顔ぶれを見られる瞬間というのは、採用担当者にとって最もやりがいを感じられる瞬間のように思います。

さて突然ですが、皆さんは自らの“話術”に自信はありますか?

冒頭から手前味噌で恐縮ではありますが、最近周囲の方から「辻さんは話が上手いですね」とお褒めいただくことがあります。

しかしリクルートに入社したころの私は、先輩に「辻は話が長すぎて、何が言いたいのか分かりにくい」と注意されてばかりでしたので、そのころの先輩がこのコラムを読んだら、「冗談もほどほどにしろ」と怒られてしまうかもしれません(笑)。

それはともかく、採用担当者として多くの学生と向き合ってきた経験が、私自身のスキルアップにつながったこともあるかと思うのですが、それに加えて、40歳を過ぎて独立し、営業をするようになったのも大きく影響しているように思います。

どうしても入社してほしい学生がいれば、比較的長めの時間をかけて話をすることもできるとは思いますが、営業となるとそうもいきません。「短い時間で分かりやすく話して、納得してもらう」ということをより意識しなければならず、私自身、トークのスキルをもう一段階上げる必要があったように思います。

この私自身の経験をお伝えすることは「自らの採用スキルを磨いて、学生を自社へと導きたい」という気持ちを持つ、向上心の高い採用担当者にとって参考となるのではないかと思い、今回のコラムでご紹介したいと思います。

それではまいりましょう。

 

 

学生の悩みは「コミュニケーション」に関わるものばかり

私が代表を務めている株式会社大学成績センターにて実施した夏季のインターンシップには、計14名の大学生が参加してくれました。

1週間という限られた期間ではありましたが、私はその間に彼ら彼女らの就職活動に関する悩みをできる限り聞くようにしていました。

中でも多かったのが「想定外の質問を適切に答えられるか不安」「面接で自分の強みをいかに伝えるべきか悩んでいる」など“コミュニケーション”に関わる悩みでした。

そうした学生に対して、伝えたいことを分かりやすく伝える方法として私が紹介したのが「PREP(プレップ)法」です。

実は私自身、トークのスキルをあげることができたのも、このPREP法を意識するようになったからだと感じています。

PREP法はプレゼンテーションの際に用いられる情報構成方法のひとつで、すでに周知の手法でもあるため、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、ここでお伝えするのは「私なりのPREP法」となります。

 

 

話の順序よりも役に立つ整理法

PREPとは「POINT=ポイント、結論」「REASON=理由」「EXAMPLE=事例、具体例」「POINT=ポイント、結論を繰り返す」の頭文字からきています。

これは分かりやすい話し方の順序を示すものですが、実は私が意識しているのは話の順序ではありません。あくまで「頭の整理法」として用いています。

私なりのPREPは次の通りです。(順序ではなく、あくまで整理法なので「P」の登場は1回のみです)

まず「P」は結論ですから「私は何を伝えたいのか」です。これは一方向的に伝えたいことを考えるだけではなく「そもそも相手は何を聞きたいのか」も同時に考える必要があります。

次に「R」は理由ですので「なぜそれを伝える必要性があるか」です。細かく考えるならば「伝えるべき理由はいくつあるか」「その中で最も重要な理由は何か」、相手からみたら「聞きたい理由はいくつあるか」「その中で最も重要な理由は何か」も明確であるとよいでしょう。

最後に「E」は具体例ですので、「具体的にどう伝えるか」「例えばどのような事象なのか」です。相手からみたら「具体的に気になっていること」「懸念していること」でしょうか。

さて、上記のPERPを踏まえた上で、ひとつ例え話をしましょう。

あなたは面接者、つまりは聞く側だとします。あなたは学生に「学生時代で最も大変だったことは何ですか?」と質問するとします。

その学生が「最も大変だったのは、ラグビーです」と答えたとします。

言うまでもないことですが、あなたは「この学生が最も頑張ったのはラグビーだったんだ」と納得して質問を終えることはありませんよね?

あなたが聞きたいことは「最も頑張ったのはラグビー」という答えそのものではなく「どんな場面が最も大変だったのか」「その理由は何か」「大変だった場面をどのように乗り越えたのか」ということのはずです。

そしてあなたは「入社後にこういう苦労があるけど、この学生なら乗り越えてくれるかも」と判断していくはずです。

つまり「学生時代で最も大変だったことはなんですか?」というあなたの質問の意図を、学生が理解した上での回答は、

P「私はラグビーの経験を通じて、大抵の苦労は乗り越えられる自信がつきました」

R「なぜそう言い切れるのかというと、部長という立場でしか経験できない苦労をしてきたからです」

E「具体的には、○○○のようなことがありました」
となるでしょう。

つまり、聞き手が「ようするに何を知りたいのか」「なぜ知りたいのか」「具体的にはどのような事象があるのか」を理解して、話し手の学生は「何を伝える必要があるのか」「なぜそのようなこと言えるのか(それが必要か)」「例えばどのようなことか」を整理できていると、コミュニケーションがスムーズになりますよね。

 

 

学生の“質問の背景”まで考えると、別の答え方もある?

「私は大学祭の実行委員として、多くのメンバーをまとめあげ、大学祭当日の成功まで導くことができました。このリーダーシップは御社でも活かせると思います」

もしあなたがこのような自己PR書を受け取ったら、「物足りなさ」を感じるのではないでしょうか。なぜなら「一番大変だったことをどのように乗り越えたか」「メンバーをまとめるために工夫したことは何か」「この経験をなぜ自社で活かせると思うのか」といった「真に聞きたい情報」がここでは欠けているからです。

上記の情報が揃ってはじめて「この学生はウチの会社で活躍してくれる人材だ」という評価につながるわけです。

なぜこのようなコミュニケーションのズレが生まれるかといえば、学生が「伝えるべきこと」「伝える理由」「伝え方」を整理しきれていないからに他なりませんよね。

「たしかにこういう自己PR、見たことあるなあ」と笑い話で済ませてはいけません。このようなケースは、“逆のパターン”も十分にあり得るのではないでしょうか。

例えば学生が「御社の社風について教えてもらえますか?」と質問してきたとします。

それに対してあなたは「ウチは明確な評価基準があって、頑張りがしっかりと昇給や昇格に反映されますよ」と伝えたとします。ここで自分が知る限りのこと全てを伝えたとしても、学生が満足してくれるかどうかは別問題です。

なぜなら、その質問をしてきた背景に「インターネットで調べると、この会社は上下関係が厳しく、3年以内の退職率が高いという情報を見かけたから心配」という想いがあったとしたら、上の答えでは不十分かもしれません。

場当たり的に話すのではなく、「この学生は何を聞きたいのか」「なぜ聞きたいのか」「どう伝えるか」を整理してから話す必要がでてきますよね。

そこで私はこの「P」「R」「E」を常に考える、もっと言えばこの3点を「口頭で明確に言い切る」ように意識しています。こうした心がけが「話が上手い」という評価につながっているのだとしたら、とてもありがたいことです。

私はリクルートに在籍していたころ、「辻の話は分かりにくい」と手厳しかった先輩から「結局なにが言いたいんだ」「なぜそう考えるのか」「他の可能性はないのか」などを常に問われていました。
そのため、この考え方が自然と鍛えられたのかもしれません。だとしたら、先輩には感謝するしかありません(笑)。

「話の上手さ」は小手先のテクニックではありません。

●ようするに何を伝えたいのか(知ってほしいのか)

●なぜ伝えたいのか。なぜそのようなことが言えるのか

●具体的にはどのようなことがあるのか

話を始める前に一呼吸おいて、これら3つを整理することから始めてみませんか?

今月もお付き合いいただき、ありがとうございました。また1カ月後にお会いしましょう。

ページトップへ