“動機付け”が重要な年だからこそ「リシュ面」を―「事実」をもとに、深い関係構築が可能になる!―

辻 太一朗(つじ・たいちろう)
2016/04/11
イントロダクション
こんにちは。採用ナビゲーターの辻太一朗です。
2016年度を迎え、皆さんの職場でも新入社員の方々が新たな仲間として加わったころでしょうか。
フレッシュな彼ら彼女らとともに心機一転、また新たな一年のスタートですね。張り切ってまいりましょう!
今回は、実際に履修履歴活用面接 (通称 “リシュ面”) を導入している企業さまからお伺いした実例を、皆さんに共有させていただきたいと思います。
その企業は、不動産業界で従業員数百数十名規模の企業です。
採用活動においては、 「来たい学生を採る」 のではなく 「採りたい学生に来てもらう」 ことを目的として、面接ではいわば “動機付け” に注力してきました。
採用活動での “動機付け” というものは通常、経験の浅い採用担当者や、面接のために現場から駆り出されてきた社員にとっては特に、その実際の方法や伝え方についてためらってしまうことも少なくないものです。
しかしリシュ面を導入したところ、この動機付けについて、面接担当となる社員誰もが比較的簡単におこなえるようになったというのです。
なぜ、リシュ面が動機付けのしやすさにつながったのでしょうか?
履修履歴は動機付けの “材料” として最適
17年卒採用は、前年に引き続き 「売り手市場」 といわれています。つまり、よほどの人気企業でない限り、求める人材を入社まで導くことは大変難しい状況であるということです。
こうした状況下では、採用したい学生に対する積極的な動機付けや、内定出し後のフォローがより重要となるのはいうまでもありませんよね。
一方で、採用担当者のなかには 「そこまでしなければならないの?」 「そもそも、どうやって動機付ければいいの?」 と消極的だったり、苦手だったりする方もいらっしゃるかと思います。
確かに、動機付けは簡単ではありません。単に自社の強みを説明するだけでは、学生の心を惹きつけることはできないものです。
動機付け行為は 「誰から言われるか?」 ということが極めて重要です。
相手が自分をよく理解してくれている」 そして 「自分も相手のことをある程度信頼している」 という関係が構築されて初めて、効果的な動機付けの土台が整うことになります。
この土台がないと、いくら担当者がよい話をしても 「言っていることは分かるけども……」 というように、頭で分かっても気持ちがついていかない、すなわち本当には思いが伝わらない、心が離れた状態となってしまいます。
そのため担当者は学生に、 「この人は私のことをきっちり理解してくれている」 「私を評価し認めてくれている」 と思われるようなアプローチをすることが必要なのです。
とはいえここまでの関係構築を図ること自体、なかなか難しいものですよね。
ちなみに、面接時に分かりやすく差が出る 「元気だからいい」 「ひたむきさが伝わるからいい」 といった表層的で漠然とした印象を材料に評価を伝えても、学生は 「自分を理解してくれている」 とは感じません。
そこで、履修履歴が役立ちます。
履修履歴は4年間という長い学生生活における学業面でのエビデンスが詰まっているものです。従来の面接において学生から伝えられていたようなアルバイトやサークル活動といった学外活動での実績よりも、より信頼性の高い 「事実」 です。これをもとに対話を深めることで、学生の本当の強みなどを、より正確かつリアルにつかむことができるのです。
具体的な活用例をいくつかご紹介します。
「事実」 をもとにして学生の強みを把握する
リシュ面を通じて次のようなことが確認されている場合、その学生はどのような強みを持っていると考えられるのかという例を、以下にまとめました。
・必要な単位数をしっかりと取得している
→アルバイトやサークルといった自分のやりたいことをやりながらも、卒業や就職のために必要な行動 (学業) も同時に不足なくこなせる要領のよさがある。
・必須科目などの講義を落とさずに取得できている
→物事の重要度を考えて無駄なく必要な行動ができる資質がある。
・自分が注力した講義や、自分にとって重要だと思う講義の成績がよい
→自分の興味があることについて長期的に努力できる資質がある。
・社会的な問題をテーマとしている講義の成績がよい
→学生のうちから社会を強く意識し、企業人となる前に社会人としての意識をすでに持っている可能性がある。
また以下のように、特定の分野に力を入れていたり、秀でた能力があったりすると感じられたのであれば、その事実をベースにして「具体的に褒める」ことも効果的です。
・理工系の講義が比較的得意な学生
→「物事を区別したり考えを整理したりすることが必須の理工系の思考は企業でも重要視されるんですよ」
・グループワークのある講義に力を入れた学生
→「仲間内でない人とも積極的に話したり協働したりすることは仕事の基本。そうした志向は社会に出ても活かせると思いますよ」
・講義内容の説明が上手い学生
→「会社に入ってからは、分かりやすく伝えるということはどんな場面でも重要になります。あなたの説明が分かりやすいのは、物事を正しく俯瞰できる力のある証だと思いますよ」
このように履修履歴という 「事実」 があることによって、一般的な面接では見えづらかった学生の強みが把握でき、より信頼性の高い評価につなげることができるようになるのです。
そして、そうした事実をもとに 「褒める」 ということで、学生にとって 「この企業は自分のことをしっかり理解しようとしてくれている」 「自分でも気がつかなかった強みがあると教えてくれた」 といった好印象を強く残し、企業に対しての興味がさらに深まったり、志望度が高まったりすることがあります。
さらには、 「好きだから力を入れた講義」 はもちろんのこと 「不得意なことでも必要だと思ったから頑張った講義」 「今から考えると、もっと力を入れた方がよかったと思える講義」 などについても問うことで、その学生個人のやらなくてはならないこと (学生にとっては学業、社会人になってからは仕事) に対する考え方や価値観も見えてくるようになります。すると、入社後の働きぶりのイメージもより広がります。
最もうれしい 「褒め方」 ができるようになる
「学外活動だって、動機付けの材料になるのでは?」 と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、その側面もあるでしょう。しかし学外活動は客観的なデータがないことも多く、学生の話すことだけが頼りとなってしまいます。面接はいわば審査される場ですから、学生は話を多少なりとも“盛る”ことがあります。このことは、皆さんが最もリアルに感じていることではないでしょうか。
話を盛っているかどうかは学生本人が一番理解していますので、仮に盛った話をもとに褒められたとしても、学生も内心ピンとこないことでしょう。
したがって、学外活動よりもファクトベースである履修履歴の方が材料として適していると私は考えています。
なにより最もうれしいのは、学生自身も気づいていない自分の本当の強みを 「発見してもらい」、それを 「認めてもらえる」 ことなのです。
「あなたの大学祭での実行委員としての活躍はすばらしいと思うけど、それよりも苦手とする分野の講義に関してもしっかりと努力しようとしてきた姿勢が立派だと思いますよ」
「キミの体育会系部活動の中で培ってきたコミュニケーション能力は多くの企業で求められているでしょうが、当社では、部活と並行しながらも計画的に必要な単位を取得してきた地道な努力に、とても惹かれました」
このような具体的な褒め言葉による動機付けをおこなっている企業は、そう多くはないはずです。
またこうした手法は、学生と自社や採用担当者自身との関係構築や内定出し後のフォローのしやすさなどにも、確実にプラスになると思います。
- 辻 太一朗(つじ・たいちろう)
- (株)リクルート人事部を経て、1999年(株)アイジャストを設立。
2006年(株)リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。
2010年(株)グロウス アイ設立、大学教育と企業の人材採用の連携支援を手掛ける。
また同年に(株)大学成績センター、翌11年にはNPO法人DSS (大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会) を設立。
採用に関わる多くのステークホルダーを理解しつつ、採用・就職の"次の一手"を具体的に示すことに強みを持つ。

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