辻 太一朗(つじ・たいちろう)
2014/09/30
イントロダクション
こんにちは。採用ナビゲーター・辻太一朗です。
この時期は2015年卒採用での内定式を終え、16年卒採用の準備に取り掛かっている企業も多いかと思います。
さて、日々の採用に携わっている皆さんの中には、「採用業務は社内調整が多い」 とお感じになられる方もいらっしゃると思います。
例えば説明会やインターンシップ、面接などで他部門の社員に協力を依頼することもあるでしょう。
それが会社としての繁忙期と重なってしまい、社員からの協力を得られなかったご経験をお持ちの担当者もいらっしゃるかと思います。
特に若手の採用担当であれば、ことさらそうした経験をすることが多いのではないでしょうか。
私も新卒1年目から採用担当となったがために、幾度となくそうした経験をしたものです。
当時の私がこのような社内調整に対して、どう向き合ってきたかをお伝えすることで、皆さんが同じ立場に立たされた時の参考としていただけたら幸いです。
「他の社員に頼めばいいだろ!」冷たい態度に凹む毎日
中小企業では、人事部門のみで採用を進めることもあるかと思いますが、一般的には他部門を巻き込む採用活動の方が、結果として良い採用につながるといわれています。
とはいえ、全社員が採用活動に協力的だという企業は稀でしょう。
新卒1年目から採用担当となった当時の私は、上司や先輩から指示されたことだけをバタバタとやっている状態でした。
また、現場の方々の仕事内容や忙しさや、人事からどのような依頼がどのような流れでいっているのかも正直よくわかっていませんでした。
そのような状態で社員から冷たい言葉を浴びせられると、正直 「そんなこと分からない」「私に言われても……」 などという気持ちになりました。
もしかすると、日々多忙な社員にとって、私のような新人は日頃から感じている人事部門への不満を吐き出すには格好の的だったのかもしれません。
特に困ったのは、やっと先輩社員の協力をとりつけたのに、会わせる予定だった学生から突然、アポイントキャンセルをされた時です。
当時の私にはどうしようもないことではありましたが、ご迷惑をおかけした社員からこっぴどく叱られて、私自身もどこに怒りをぶつけてよいのかわからず悶々としていたのを覚えています。
社員の協力を得るのは難しい
協力すればそれだけ時間も手間もかかりますし、協力した分の手当が出せるような企業もほとんどないでしょう。
また、時間や準備に追われて、肝心の本業が進まずに成績が下がったからといって、部門で大目に見てもらえることも当然ありませんよね。
そう考えているうちに、協力してくださる社員の方々に申し訳ないという気持ちが芽生えてきました。
そこで、社員にかかる負担を減らすことはできないかと上司に相談してみました。
「じゃあどうするの?」 上司からの返答はたった一言でした。
代案を持ちあわせていない私は黙ることしかできませんでした。
「どうすれば積極的に協力してくれるのだろうか」 と考えましたが、なかなか良いアイデアは浮かびません。
「なぜあなたの協力が必要なのか」 をロジカルに説明するように試みたこともありましたが、あまり効果はありませんでした。
そこで思いついた一つ目の案は、どうせ怒られるなら 「気持ちよく怒られる」 ということでした。
怒られることも、大切なコミュニケーション!
「気持ちよく怒られる」とはどういうことかといいますと、相手の怒りに対して単に謝るのではなく、その怒りを真摯かつ積極的に、元気よく受け止めようという姿勢を表すことです。
相手も怒りたくて怒っているわけではないので、変な言い方かもしれませんが 「後味が悪くならない怒られ方」 という感じです。
間違っても下を向き、じっと黙って耐えているという感じにはならないことです。
自分自身に明らかな非があったのであれば別ですが、相手の怒りが 「どこにぶつけてよいのか分からない」 というような状態であった場合には、過度に神妙な面持ちで謝ったところで、そこから前には進まないと思います。
それよりも、前向きに協力してもらうためには、 「○○さんしか頼めないんです。(元気に)本当にすみません!」 と素直に謝ってお願いする方がいいように感じました。
二つ目は、自分で努力できることは 『早く』『手間を惜しまず』 実行しようということでした。
それが、手間をかけている社員に対する感謝になると思うようにしました。
具体的には、その社員が関わった学生の選考状況などを逐次報告することであったり、学生の面接スケジュールが決まったり、変わったりしたらすぐに連絡するといったごくごく普通のことです。
このようなことを続けているうちに、社員の方と話すことが増え、声をかけられることが増えていったように思います。
また、私の至らないことや人事部門の至らないことを怒るだけでなく、改善点を指摘してくれるようになりました。
結局、怒られることもコミュニケーションのひとつなのです。
一つ一つの積み重ねによって関係性を構築できれば、社員の方々も徐々にこちらの頼みを聞いてくれるようになると思います。
一人の社員が採用全体の方向性を変えることは難しいものです。
特に若手のうちは、自分ができることにも限りがあると思います。
そこで、自らの手間は惜しまず、上司に対しての報告は素早く正確に行い、社員が協力してくれる方向性に少しでも導くことができれば、それは素晴らしいことではないでしょうか。
- 辻 太一朗(つじ・たいちろう)
- (株)リクルート人事部を経て、1999年(株)アイジャストを設立。
2006年(株)リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。
2010年(株)グロウス アイ設立、大学教育と企業の人材採用の連携支援を手掛ける。
また同年に(株)大学成績センター、翌11年にはNPO法人DSS (大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会) を設立。
採用に関わる多くのステークホルダーを理解しつつ、採用・就職の"次の一手"を具体的に示すことに強みを持つ。
「人事のキャリア」
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