お電話でのお問い合わせは

0120-98-3454 受付時間 9:00〜18:00(土日祝祭日を除く)

※電話内容については、正確を期すため録音しております。

2019/12/11

JOB型新卒採用への道のり-大きな理想と企業・採用担当者の役割-

小宮 健実(こみや・たけみ)
1993年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。 人事にて採用チームリーダーを務めるかたわら、社外においても採用理論・採用手法について多くの講演を行う。さらに大学をはじめとした教育機関の講師としても活躍。2005年首都大学東京チーフ学修カウンセラーに転身。大学生のキャリア形成を支援する一方で、企業人事担当者向け採用戦略講座の講師を継続するなど多方面で活躍。2008年3月首都大学東京を退職し、同年4月「採用と育成研究社」を設立、企業と大学双方に身を置いた経験を生かし、企業の採用活動・社員育成に関するコンサルティングを実施。現在も多数のプロジェクトを手掛けている。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。

イントロダクション

皆さん、こんにちは。
採用・育成コンサルタントの小宮健実です。

令和元年もいよいよ終わりに近づいてきました。
年が明ければ、採用活動もいよいよ本番という雰囲気が訪れます。
しっかりと準備して、万端な状況で臨みたいですね。

さて、今回取り上げようと思うテーマは、「JOB型採用」です。

今、JOB型採用について、多くの採用担当者の方々が対応を求められているようです。

JOB型採用という言葉自体は、もう1年くらい前から耳にしていると思いますが、新卒採用の設計は多くの企業にとって1年に一度の作業です。

それゆえ、今が自社の新卒採用においてJOB型採用導入を考察するタイミングである企業が多いのだと思います。

JOB型採用は、正直とてもスケールの大きなテーマです。

取り組みには大きなエネルギーと労力を伴うかもしれませんが、採用テックと同様、取り組み続ける必要性があるテーマだと思います。

では、さっそく始めていきましょう。

JOB型採用のおさらい

まず、JOB型採用について、簡単におさらいしましょう。

JOB型採用は、JOB型雇用が基になっている言葉です。
JOB型雇用とは、職務や勤務地を明確にし、専門の能力を評価して結ばれている雇用契約のことです。

つまりJOB型採用とは、応募者は自分の専門の能力を基に(勤務地や処遇条件も考慮して)求人に応募し、採用側もその専門の能力を軸に評価して採用活動を行うことを指しています。

これに対して、職務や勤務地などが限定されない雇用形態をメンバーシップ型雇用と言います。
つまりこれは新卒に一般的な「就社」の概念そのものです。

新卒領域でJOB型採用が語られ出した背景には、就社を前提とした新卒採用スキームからの脱却があります。

専門性を評価して人材を採用するに当たっては、一括採用のスキームも破壊しやすく、働き方の多様性にもつながるので、働き方改革の観点からも、JOB型採用は今最も頼りにされているビジョンだと思います。

JOB型採用と職種別採用

ではJOB型採用のコンセプトを、自社の実務レベルに重ねてみるとどうでしょうか。
きっと多くの方が、理系の技術系・開発系採用を思い浮かべるのではないでしょうか。

その意味では今でも多くの企業で、いわゆる職種別採用として、そうした採用が行われていると思います。
では、JOB型採用と職種別採用との違いは何でしょうか。

職種別採用で応募者の履修・研究内容を選考の評価に含め、事前に明示した職種や組織への配属をコミットする採用活動を行っていれば、それは既にJOB型採用の素地があると言えると思います。

そして先に申し上げてしまえば、私は現実的なJOB型採用への移行の姿として、職種別採用+秋採用(2次募集)という過渡期を相当期間過ごすのではないかと思っています。

ただし、応募者側から見ると、職種別採用とJOB型採用では、見え方もアプローチもまったく異なります。

職種別採用では、応募者はまず企業に応募し、職種の希望を伝えます。それゆえ、まず企業研究をしてその後で希望職種を考える就社型のアプローチです。

一方でJOB型採用では、応募者はまず自分の専門能力からJOBを想定し、そのJOBで求人をしている企業を探して応募する、就職型のアプローチです。

応募者の動きがまったく異なる以上、当然、新たに準備すべきことも生じてきます。

JOB型採用に必要な準備

ではJOB型採用に必要な準備とは、どのようなものでしょうか。

先程、職種別採用がJOB型採用の素地になると述べましたが、実現までの道程は簡単ではないかもしれません。
実際に実現するにはさまざまな社内調整が必要で、自社ではできないこともあるからです。

・JOBの切り出し
まずは、JOB型採用に耐え得る職の切り出しが必要です。
いきなり職を広げることは現実的ではないことが多く、多くの企業でまずは開発系・技術系や、データサイエンス、人事、経理、マーケティングなどの分野が候補になると思います。

・JOBを伝えるもの
JOBの内容を記述したもの(職務記述書=ジョブ・ディスクリプション)が必要です。
採用活動と入社後の雇用契約の前提になることを踏まえて職務を言語化する必要があります。

社内に職務記述書がすでに存在している企業もあると思いますが、それをそのまま新卒採用に使うことは難しいかもしれません。
職務記述書が学生に理解できるように記述されているとは思えないからです。

また、そもそも自社内に職務記述書があっても適切に活用されていない企業が少なくありません。
社員が普段活用しきれていない職務記述書では、自信を持ってJOB型採用を行うことはできないでしょう。

・入社後のキャリア体系
JOB型採用で入社した人材のキャリア体系が想定されている必要があります。

JOB型採用は、入り口だけの話ではなく、その後の自社におけるキャリア形成の話そのものです。
これを保証しなければ、JOB型ではなく、メンバーシップ型になってしまいます。

それゆえJOB型採用の実現は採用チームだけでは完了せず、ほかの人事組織を巻き込むことになります。
企業によっては、これが実現を妨げる大きなハードルになるかもしれません。

例えば昇格制度については、管理職になることを前提とした昇進昇格制度ではなく、高度専門職に向けた制度が必要になると思いますし、処遇体系については、JOB型採用が一律性の撤廃につながることが珍しくありません。どちらも検討に多くの時間を要する可能性があります。

また、JOB型からメンバーシップ型の鞍替えについても想定しておく必要があります。
専門能力のミスマッチがあったり、ジョブやタスク自体が消滅したりすることがあり得るからです。

JOB型雇用の話だけであれば、こうしたことについて、事象が起こるたびに考えていけばよいのかもしれません。

しかし、JOB型採用ということになれば、採用時に応募者に説明し、あらゆる質問に答えることを想定しなくてはいけません。

こうしたことを鑑みるに、JOB型採用が中心的な採用方法になるには相応の時間と労力が伴うのではないかと思います。

そうした意味で、私たちは大きな課題を背負っているのだと思います。

JOB型採用は企業の話に収まらない?

前章で私は、自分たちではできない準備もあると述べました。

これは、先月のコラムでも少し触れたことなのですが、JOB型採用では、まず学生が世の中にどのようなJOBが存在しているのか知る(JOBラーニング)必要があります。

このJOBラーニングをどう成立させるかという課題の方が、私は社会的に大きな問題だと思っています。

高い専門能力を求めるJOBであればあるほど、大学のキャリアセンターがその(JOBを理解させる)役割を担うことは難しくなるからです。

一方、企業の人間がJOBラーニングの役割を担うのならば、常にJOBと社名は一対になり、社会が望むような変革は結果的に起りづらい状況に陥ると思います。

なぜなら、学生がまず企業名で学ぶJOBを選別してしまうからです。
これは今、インターンシップでも同じ状況が起きています。

結局、どのJOBを学びたいかよりも、どの企業のJOBを学びたいかという態度を促してしまうことになるでしょう。

この辺りの課題感については、現状では「職業観の早期醸成」といったような言葉で片付けられていることが少なくありません。
具体的な解決イメージは、これから検討していかなくてはいけないと思います。

もっともこの辺りのグレーさは、現在もキャリア講座で業界研究を担当する企業は広報上有利になり得るわけですから、バランスが重要ということで議論を終えるのかもしれませんが。

学生の学びはJOB型採用に生かされるか?

さて、いずれにせよJOB型採用は、学生が行うキャリア形成のアクションや、就職活動の方法に大きな影響を与えることになるはずです。

それどころか、本質的な意味で、学修と就職のマッチングを目指していくことが求められます。

かなり先にある崇高な目標かもしれませんが、こうしたことを最終的にかなえる意識をわれわれが持たなければ、努力して構築した仕組みがすべて見せかけの「はりぼて」に帰してしまう可能性があります。

「学校基本調査」などによると、学生の間でも実務専門性の高い分野の学部が人気だそうです。

学生が獲得する専門性が高まれば、企業が求める専門能力とのマッチングは行いやすくなるはずです。

しかし一方で、自身の興味や適性と、実際の学修内容とのミスマッチは以前よりも許容されなくなり、学生の将来に直接影響を与えることになります。

「転学部」や「学び直し」もそれなりに行われていますが、むしろそうした行動を起こさずに、大学ブランドや就職の損得勘定で学生生活を過ごしてしまうサイレントマジョリティの問題が、いずれ表面化するのではないかと思います。

大げさですが、JOB型採用の話題は、大学選定や履修選択の精度を高めようと努力することから議論を始めないと、再び「問題が発生する時期を動かしただけ」になってしまうかもしれません。

JOB型採用の話題は、以前より、企業、学生、学校といったプレイヤー間の密接な連携で全体をデザインしていかなければいけない話題だと思います。

まだ、今時点では、企業、採用担当者がどのような社会的役割も担うことになるのか明らかになりませんが、こうした全体的な視点から問題意識を感じていないと、採用活動が設計できず目的を完遂できないような時代が訪れるかもしれません。

さて、今回はJOB型採用についてお話ししてきました。
継続性の高いテーマですし、皆さんの方が私よりも現場で感じている課題もあるかと思います。
またいずれ具体的なお話ができればと思います。

では次回もよろしくお願いいたします。

ページトップへ