辻 太一朗(つじ・たいちろう)
2013/03/05
イントロダクション
こんにちは。採用ナビゲーター・辻太一朗です。
2月、3月は、会社説明会も佳境に差し掛かっているかと思いますが、状況はいかがでしょうか。昨年度と比較して、就職活動での学生の動きが大きく変わっていることにお気づきですか?
ある企業の人事の方と話した際にも、「会社説明会への参加率を考えると、この時期はもっとエントリーが増えてもよいのに……」「学生が今現在、どのような気持ちなのか、どのような問題を抱えているのかが見えにくく、このまま進めてよいかどうか判断に迷う」とおっしゃっていました。
景気や世の中の動向が大きく動いている中での就職活動になりますから、学生の企業を見る視点や就職への意欲も、刻々と変化しているといってよいでしょう。
つまり、昨年度と同じ考え方や方法では、採用したい学生にアプローチしにくくなっているのが現状ではないかと思います。
昨年度と大きく異なる環境の中で、企業としてどのように対応すれば、採用成功へとつなげていけるのでしょうか。
その方法のひとつとして、思い切って「採用活動の方法を柔軟に変えてみる」ということも、視野に入れてみたらどうでしょうか。
では、具体的に、「昨年度と何が違っているのか」を、まずは整理してみましょう。
昨年度と比較し、何が違うのか?
では、昨年度とは何が違ってきているのでしょう?
昨年度も人事におられた方であれば経験されたと思いますが、一昨年6月に「採用活動は12月スタート」ということになり、それまで設計していた選考フローや採用計画を見直さねばならないこともあったかと思います。
学生にとっても、OBOG訪問や情報収集の時間も少なくなり、インターンシップも前倒しになるなど、難しい就職活動を強いられたことでしょう。
しかし、本年度は、最初から「12月スタート」ということが分かっている中での就職活動です。大学側も、学生に対して、早めに業界・企業の情報収集を行えるような環境をつくるようにしていました。
企業側も、インターンシップを増やしたり、業界情報や企業情報などを伝えたりするためにソーシャルネットワークを活用するなど、さまざまな取り組みがあったようです。
学生にとっては、比較的長期間にわたって企業研究を行える環境にあったため、昨年度の学生とは、準備の仕方が大きく異なっています。
加えて、景気の変動も考慮する必要があります。1年前の業界や企業に対する市場の期待感と、昨年末からの市場の期待感とでは、円安や株価の上昇が示している通り、大きく変わってきています。
こうした外的な環境の変化が、学生の就職活動の後半において、企業を見る視点に影響を及ぼしている可能性があります。
こうした状況は、企業規模に関係なく、その影響の余波を受けることになるでしょう。しかし、これが実は、中堅中小企業の強みになる可能性もあるのではないかと思います。
採用活動を柔軟に変えられるのは、中堅中小企業だからこそ!
こうした変化の時期にある中で、例えば学生の応募が多い企業はどのような対応が可能でしょうか。
学生の応募が多い企業は、年単位で予算や人員ががっちり組まれていたり、採用コンセプトも長い時間をかけてつくりあげていくので、その場その場で簡単に変更できるようなものではありません。
もし、変えられたとしても、多くの学生がエントリーしていますので、混乱が起きる可能性もあります。
つまり、学生の動きや景気の変動に、すぐには対応しにくい体制になっているのが学生の応募が多い企業だといえるでしょう。
では、中堅中小企業はどうでしょうか。
エントリーしている学生数は比較的少ないため、採用方針や手法を変更しても混乱や批判が起きにくく、採用活動に大きな影響を及ぼす可能性は比較的少ないと考えられます。また、柔軟に対応するための社内の承諾を得やすい環境にあるといえるでしょう。
変化に即して柔軟に対応し、学生の動きや志望度合にマッチした採用活動へと変えられるのが、中堅中小企業の「強み」であるといえるのではないでしょうか。
さて、それでは、いざ採用方針・手法を変えるとなった場合、どのような考え方を持てばよいのでしょうか。それを、次ページで詳しくお話ししましょう。
これからも皆さんの採用活動に役立つコラムをお届けしていきたいと思います。
会社説明会の場をさらに活用し、学生から話を引き出そう!
学生の動向や気持ちを知る方法として、一番確実なのは、学生に直接、話を聞いてみることです。例えば、OBOG訪問の場でもよいでしょう。もしくは、学生が多く集まる会社説明会の場を活用して、話を聞いてみるのもよいかもしれません。
学生の話を聞く際に考えるポイントは、大きく分けて3点あると思います。
- (1) 自社にとって望ましい学生が来ているかどうか、レベルがどのくらいかの検証
- (2) 学生が自社と他社をどのように比較して、どれくらいの志望意欲があるのかの確認
- (3) 他社の状況を知る
この3つのポイントを軸に、学生に話を聞いてみてはいかがでしょうか。
- (1) 自社にとって望ましい学生が来ているかどうか、レベルがどのくらいかの検証
- (2) 学生が自社と他社をどのように比較して、どれくらいの志望意欲があるのかの確認
まず(1)(2)について、自社にとって望ましい学生が自社に来ているかどうかの確認を行っていくことが重要だと思います。
「自社にとって望ましい学生が来ていない」ということであれば、集客の方法を変えれば、改善できるかもしれません。その予算がないのであれば、エントリーしている学生の中から自社にとって望ましい学生をピックアップして、電話で直接、呼び込みを図る方法もあります。
「自社にとって望ましい学生がいるのに、他社への志望が高く、自社に対する志望意欲が低い」ということであれば、会社説明会の内容を変えてみることも考えたほうがよいでしょう。
「自社にとって望ましい学生も少なく、志望意欲が低い」ということであれば、採用活動のフロー自体を見直し、変更することも視野に入れた方がよいかもしれません。なるべく早いうちに、会社説明会の頻度を増やしたり、先輩社員との接点をさらに増やしたりして、自社の魅力を伝えていくフローに変えていくということです。
ただし、会社説明会の頻度を変える場合、採用活動の終盤になってから変えてもエントリー数にはあまり影響しないので、早期に決断して動くことが大切です。
また、面接の回数を増やしたり減らしたりすることも、考慮に入れるとよいかもしれません。
(1)(2)に加えて、他社の状況を学生に聞いてみることも、重要ではないかと思います。
他社は、この時期にどのように採用活動を行っているのか、どれくらい学生との接点を持っているのかを、学生の口から聞いてみることで、自社に欠けている部分や自社の強みの検証にもつながっていくはずです。
この時期だからこそ、まずは学生に会って、上記の3つのポイントを頭に入れながら直接話を聞いてみることで、自社の採用におけるリスクヘッジにつながることでしょう。
- 辻 太一朗(つじ・たいちろう)
- (株)リクルート人事部を経て、1999年(株)アイジャストを設立。
2006年(株)リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。
2010年(株)グロウス アイ設立、大学教育と企業の人材採用の連携支援を手掛ける。
また同年に(株)大学成績センター、翌11年にはNPO法人DSS (大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会) を設立。
採用に関わる多くのステークホルダーを理解しつつ、採用・就職の"次の一手"を具体的に示すことに強みを持つ。
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