2012/10/02

「本当に採用したい!」と思える学生を採用できましたか?―採用したい学生像を明確化し、人事自らが体制を構築していくのが、採用成功のコツ―

辻 太一朗(つじ・たいちろう)
(株)リクルート人事部を経て、1999年(株)アイジャストを設立。
2006年(株)リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。
2010年(株)グロウス アイ設立、大学教育と企業の人材採用の連携支援を手掛ける。
また同年に(株)大学成績センター、翌11年にはNPO法人DSS (大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会) を設立。
採用に関わる多くのステークホルダーを理解しつつ、採用・就職の"次の一手"を具体的に示すことに強みを持つ。

イントロダクション


こんにちは。採用ナビゲーター・辻太一朗です。

今年の採用もそろそろ結果が見え始め、その一方で来年に向けた採用活動を考えるような、谷間の時期ではないかと思います。

採用活動をあらためて検証すると、コスト面や採用人数についての課題が最初に上がってくると思います。会社説明会などの企画面の課題について話し合っている企業もあるでしょう。もしくは今年の採用がまだ続いている中で、来年のことまで、まだ考える余裕もない、という企業もあるかもしれません。

しかし、「本当に採用したい!」と思える学生をちゃんと採用することができたかどうかに焦点を当てて考えることも、必要ではないかと思います。なぜならば、採用の役割は採用基準に合った人材を必要数採用するだけでなく、「本当に採用したい!」と思う人材像の具体化、そして、その人材を確実に採用することだからです。

そこで今回は、来年に向けて、企業の将来を担う学生を確実に採用できるような準備をしませんか? という観点からお話ししたいと思います。

次のページで、まず、新卒採用の意味についてあらためて考えてみましょう。

自社にとって望ましい学生を採用できたのかどうかが、10年後の企業の姿を決める。

私がセミナーや講演で、新卒採用の重要性についてお話しさせていただく際に、よく用いる「3つの力」の話をここで紹介します。

企業というのは、営業力があるかどうかによって、1年後の業績が決まります。近い将来に生み出す商品開発力があるかどうかによって、3年先の成長が決まるでしょう。そして、新卒の採用力があるかどうかによって、10年先の姿が決まってくるのです。

つまり新卒採用というのは、それだけ企業にとって重要な「戦略」なのです。

業態にもよりますが、入社2、3年では、まだ十分な活躍はできないでしょう。それを、しっかり教育し、社員一人ひとりが持つ素養に期待し続け、入社10年後に大きく花開いて企業を変革し、業績を上げられる存在にしていくことが企業の発展に結び付いていきます。

しかし、それだけではありません。

例えば、中堅中小規模で業績を大きく上げている企業を見てみると、新卒採用のときに「本当に採用したい!」と思える中核になり得る人材を採用できたことにより、その人材が中核を担う役割として成長したり、会社を変化させる原動力になったり、他の社員を牽引する存在になっている、といったケースが多いようです。

そう考えると、「本当に採用したい!」と思える学生を採用することが、いかに大切かが、お分かりになるのではないでしょうか。

そのためには、事前にしっかりと分析し、自社にとって望ましい学生を採用に結び付けていくための準備をする必要があります。その方法や考え方について、さらに詳しくお話ししましょう。


「本当に採用したい学生」を、具体的にイメージしていましたか?

まず、ここで確認したいことがあります。今年の採用活動の中で、「本当に採用したい!」と思う学生が目の前に現れたのか、そうではなかったのかを振り返ってみてください。

「いや、来なかったな……」と思う方は、「本当に採用したい!」と思う学生とはどのような人材なのか、きちんと整理できていたかを、再度検証するとよいかもしれません。漠然としたイメージではありません。「こんな人材だったら、うちの会社で活躍できるのになあ!」と思う資質や志向などを、具体的に描けていたかどうかということです。

「本当に採用したい学生」の具体的なイメージを持っていれば、その学生が興味を抱いていることや、行動パターンを把握できますよね。その学生がどこにいるのか、どんなメディアを使い、どんなメッセージを好むのかをイメージしながら、エントリー、会社説明会などの告知の方法も的確に行えていたはずです。それができていないのであれば、「本当に採用したい学生」のイメージが明確になっていなかったということです。

では、イメージできていたのにもかかわらず、それでも出会えなかった、という場合はどのように考えればよいでしょうか。それは方法論の問題だと思います。会社説明会などのイベント告知の手法や量、メッセージを工夫すれば出会えたかもしれません。

ここで絶対にブレてはいけないのは、「自社の将来を担う、本当に自社にとって望ましい学生を採用する」ということを目的とするべきだと思います。

次に、「本当に採用したい学生」に出会えていた場合を考えてみましょう。

会社説明会や選考会には参加してくれたのに、結局他社へ行ってしまったという場合もあるでしょう。自社に、一時は興味を持っていたものの、ただ、「一番行きたい会社」と学生に思われなかった、ということだと思います。

この場合、どのような考え方で施策を打っていくべきでしょうか。それを、次のページで詳しくお話しすることにします。

人事が中心となって採用成功をイメージし、学生へ個別対応を行おう!

「本当に採用したい学生」を確実に採用してくためには、個別対応が欠かせません。多くの学生に対する施策はできていても、個別対応を行うような施策を実施できていたかどうかを、検証してみてください。

この検証で大切なのは、「誰に・何を・どのように」というポイントを押さえて採用活動をしてきたかどうかを確認することです。

まず「誰に」とは、もちろん「本当に採用したい学生」ですが、その学生はどこにいて、どんな考えを持っているのかをしっかりと理解できていたのかどうかを、振り返る必要があるでしょう。

次に「何を」伝えていくべきか。それは単に、仕事内容や企業概要を指しているのではありません。個人の裁量権なのか、経営者との近さや、若いうちから重要な仕事に携われる成長スピードなのか。その学生が気にしている点を、自社が把握していたかどうかということです。そして、どのポイントだったら、競合他社に勝てる可能性があるのかを考えてみましょう。例えば、「企業規模は小さいが、仕事内容に深みがある」ということを伝えるべきか、もしくは「社風や環境面での社員の満足度の高さ」を伝えるべきかを考えていくのです。

つまり、他社と比較したときに「この企業に行きたい!」と、学生に思ってもらえるような仮説を、事前に描いておくことが大切になってくるわけです。

この「誰に」「何を」は、人事担当者が考えて、まとめておくべきでしょう。その上で、企業の強み・魅力を「どのように」伝えていくか。根底となる設計部分については人事担当者が行わなければなりませんが、そのすべてを、人事担当者が伝えていくのは限界があります。ここから先は、自社のリソースを使い切るくらいの総力戦で考えていかなければなりません。

例えば、社長が直接伝えるほうがよいケースもあるでしょう。若手社員の口から伝えていくほうが、効果的な場合も考えられます。

そう考えたときに、今、社内でやるべきことも見えてくるかと思います。もちろん、選考段階で協力してくれる社員も多いと思いますが、さらに一歩深めて、確実に採用に結び付けていくための体制を今から準備しておくのです。

ここではそのための1案として、3つの方法についてお話しします。

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1.学生に寄り添えるリクルーター

まず、リクルーターの準備です。

企業によってリクルーターの概念は異なりますが、ここでいうリクルーターとは、「本当に採用したい学生」にしっかりと寄り添って、学生の気持ちを理解し、状況を判断しながら採用へ導いていける社員のことです。

学生には、選考途中で悩みが出てきたり、他の企業が気になったり、さまざまな状況が訪れるでしょう。そのときの変化を察知して、人事担当者と連携をはかるなど、採用されるまで学生に寄り添っていけるような存在が重要になります。

リクルーターには、話をしっかりと聞くことができ、学生からなんでも相談をしてもらえるような「近さ」が必要になります。つまり「動機づける」役割とは別に、「寄り添える」役割の社員を置くのです。

1〜2週間に1回は学生と連絡を取り合う役割を担いますので、「動機づける」役割とは異なり、比較的長期にわたる活動を行います。このリクルーターは、「自社が本当に好きな人である」ことを前提に選ぶ必要があります。なぜなら、リクルーターの自社に対するスタンスは、長期にわたるような接触の中では、相手の学生に必ず伝わってしまい、それによって自社の企業イメージが大きく変わってしまうからです。加えて、できれば、学生に近い年齢の若手社員のほうが適任でしょう。

こうした役割をつくっておくと、「本当に採用したい学生」が現れたときに、そのリクルーターが学生に寄り添っていくことで、状況に応じた個別対応が可能になるでしょう。

2.インパクトのある話ができる社員

次に、要所でインパクトのある話ができる社員の準備です。

これは、企業の特色や仕事の醍醐味について、学生の印象に残るような話し方ができる社員のことです。この役割を担う人は、就職メディアに掲載されているような情報よりもさらに深くダイナミックに、社員間のつながりや仕事の深さについて、臨場感を込めて伝えられる人がよいでしょう。

過去の仕事の中で、インパクトのある経験や事実を持っている人で、それをうまく話せる人であればなおよいかと思います。

3.経営者の活用

そして最後に、社長などの経営層を採用活動に結び付けていくための準備です。もちろん、採用には積極的に協力してくれる社長や経営者が多いと思いますが、今までは最終面接のみに関わるケースが多かった企業もあるのではないでしょうか。

そうではなく、さらに経営者を生かすことを考えてみませんか、ということです。この準備として、「本当に採用したい学生」に向け、「どのタイミングでどのようなテーマを経営者に話してもらうか」を人事担当者が設計することが重要だと思います。

例えば、なぜこの理念なのか、どんな将来ビジョンを描いているのかなど、経営者でしか語れない話を、人事担当が想定したタイミングで話していただくようにするのです。

企業によっては、上記の3点をすべて行うのは難しいかもしれません。しかし、まずはできる部分から確実に準備していきませんか。採用に協力いただける方々も「なぜ自分がやる必要があるのか?」が納得でき、「自分が何をやり、それで効果がでる」と実感できるとモチベーションが上がります。

人事担当こそ、採用の主導権を握り、「本当に採用したい学生」を採用するためのシナリオを描ける立場にあります。

自ら採用成功へ向けた施策を設計し、それをもとに、社内に協力体制をつくり上げていくことが、採用成功へ向けた大きな一歩につながっていくのではないでしょうか。

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