2015/02/10

【2016年卒採用】私が最も効果的だと感じている採用広報施策―行えば行うほど自社の資産にもなるその施策とは―

小宮 健実(こみや・たけみ)
1993年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。 人事にて採用チームリーダーを務めるかたわら、社外においても採用理論・採用手法について多くの講演を行う。さらに大学をはじめとした教育機関の講師としても活躍。2005年首都大学東京チーフ学修カウンセラーに転身。大学生のキャリア形成を支援する一方で、企業人事担当者向け採用戦略講座の講師を継続するなど多方面で活躍。2008年3月首都大学東京を退職し、同年4月「採用と育成研究社」を設立、企業と大学双方に身を置いた経験を生かし、企業の採用活動・社員育成に関するコンサルティングを実施。現在も多数のプロジェクトを手掛けている。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。

イントロダクション


皆さん、こんにちは。採用・育成コンサルタントの小宮健実です。

今回は、最近の自分の仕事を振り返り、 「この採用広報活動は本当に成果が上がっているな」 と感じている施策を紹介しようと思います。

最近その施策の実施に備えて数回の仕事 (施策に参加する人へのトレーニング) をしたのですが、やはり今年もその施策は間違いなく成功するであろうという予感を得ました。

その理由は、参加された方々のトレーニング終了後の表情が、高い自信と動機づけにあふれていたからです。
「はやく施策の本番を迎えたい」 という声も聞こえてきました。

彼ら彼女らが採用活動に繰り出していけば、必ず学生の心を捉えるであろうことは、疑う余地がありませんでした。実際、トレーニングを進行していた私も、進行中に何度か心を動かされた場面がありました。

もちろん、採用広報は個別の施策 (イベント) だけでなく、施策の効果的な組み合わせ (パス) 、そして対象と時期を鑑みた繋ぎ方 (チャネル) によって、その強さが決定されます。

つまり採用広報には、唯一無二の正しい施策、やり方があるわけではないのですが、今回紹介するのは、どの企業でも応用して実践すれば、1年だけでなく、自社の資産として永続的に蓄積できる施策です。
変化の激しい市場環境の中でも採用を成功させるために、ぜひ参考にしていただければと思います。

では次章にて、その施策について述べていこうと思います。

過去には浸透しなかった施策

皆さんは、「エバンジェリスト」 という職 (役割) をご存知でしょうか?

私はエバンジェリストについて、過去にコラムを執筆したことがあります。実はそのコラムでは 「リクルーター施策」 と表現したためか、私の執筆したコラムの中で、最もアクセス数が少なかった回のひとつでした (苦笑)。

エバンジェリストは、企業において実際に存在する肩書きです。
エバンジェリストは直訳すると、 「伝道師」。
その仕事は、最新のIT技術を分かりやすく説明すること。そして、自社のテクノロジーを魅力的に表現することです。

念のため申し上げますが、エバンジェリストは営業職ではありません。

「ITを使ったサービスを知りたいけれど、内容の理解が難しい」 そのような顧客の要望に応えるために、新技術やサービスの長所を分かりやすく、魅力的に伝えることが仕事です。
講演、セミナーの出演、顧客訪問などが活動の中心となり、いわば、プレゼンテーションやデモンストレーションのプロフェッショナルといえます。

私がお薦めしたい施策、それはずばり、採用活動におけるエバンジェリストを社内に養成すること です。

正確にいうとこれはひとつの施策ではなく、エバンジェリストを養成することが最も大切で、 「養成したエバンジェリストを自社の採用広報施策に動員すること」 になります。

再び念のため申し上げますが、エバンジェリストは営業職でも無ければ、採用担当者でもありません。

もちろん、強い採用広報を実現している企業では採用担当者がエバンジェリストの役割を果たしていることも少なくありませんが、ここでいう 「エバンジェリストを用いた施策」 とは、現場社員が企業説明会などにおいて、職場の様子や自分の仕事について体験談を踏まえて説明する際に、その説明内容や表現の仕方などについて、人事が質のコントロールを徹底すること を指しています。

どの企業も、「あの人なら学生に上手に話せるだろう」 という観点で、説明会に出てもらう現場社員を選出していると思います。

しかし、だからといって 「どのような話をどのように行うか」 について、多少の目的共有のみであとは社員任せ、というような状態にしてしまってはいけません。

なぜなら、そこには確実に、かつ明確に 「採用戦略としての意図」 や、人に共感を醸成させるための 「伝え方の正しさ」 が反映されなくてはならないからです。

私はエバンジェリストの養成を、 「リクルーター・トレーニング」 という呼び方で請け負っているのですが、既に数年にわたってエバンジェリストを養成しています。
結果、社内に多くのエバンジェリストを抱えている企業の採用広報施策は、私が想像していたよりもはるかに高い成果を上げており、本当に驚いています。
だからこそ今回こうして、もう一度皆さんにコラムでお伝えしているというわけです。

読者の皆さんも、もしも社内の人間が学生に対して本当に魅力的に、熱く、自信を持って仕事について語ってくれたら、人事の自分が代弁するよりインターネットや紙媒体を通じて説明するより、強力な惹きつけ効果があることは容易に想像ができるのではないでしょうか?

実際にも、その惹きつけ効果は、「自分が入社したのは、学生の時に○○さんからあの話を聴いたから」 「今も○○さんの話を思い出して目標にしている」 と語る新入社員の言葉として明確に確認することができると、様々な採用担当者の方から伺っています。

では次章では、エバンジェリスト養成の場でどのようなことを行っているかについて、述べていきたいと思います。

エバンジェリスト養成の要点

エバンジェリストの養成 (トレーニング) では、半日から2日間をかけて、以下のようなことを行っています。
私も仕事で行っているので詳細までは書けませんが、自社内でも工夫して実施できると思いますので、参考にしてください。


●自社・業界の魅力探求ワーク
社員同士で自社の魅力を探し合うワークを行っています。
複数の社員で考えを共有し、自分だけでは語れなかった自社の魅力を再認識し、きちんと言語化しておく (言葉にしておく) ことが大切です。

●自分の仕事体験談 (ストーリー) の作成
仕事の具体的な体験を通じて、やりがいや、職場環境のよさを伝えるためのストーリーをつくります。
ワークシートをあらかじめ埋めてもらい、他の社員からフィードバックを受けながらストーリーを完成させてもらっています。

●プレゼンテーションテクニック

●本番を想定した演習
本番を想定した演習は複数回必要です。
エバンジェリストに任命された人が自分のストーリーに話し慣れることは、私達が想像する以上に大切なものです。それは社員の自信として姿勢や表情に反映され、聴き手の印象に影響を与えるからです。


そして、実際に施策が成功している企業およびエバンジェリストには、いくつかの共通項があります。

・エバンジェリストに会社からの期待がしっかりと伝わっている
・エバンジェリスト同士の交流がある
・エバンジェリストが自社で働くことのよさを実感している

といったことです。

エバンジェリストに会社からの期待がしっかりと伝わっている ことは、最終成果を左右するくらい大切です。
実際のところ、エバンジェリストは誰が行ってもよいわけではありません。
自社で働く魅力を学生に語るには、その魅力を体現している社員が最も適しているため、彼ら彼女らにも、 「選ばれてエバンジェリストになってもらった」 ことは、しっかりと伝える必要があります。

また、エバンジェリストを一堂に集めてトレーニングを行うことで、ワークに相乗効果が生まれ、ミッションに対する当事者意識も生まれやすくなります。
ですから、養成するエバンジェリストの人数は企業の考えによって様々な中でも、なるべくエバンジェリスト同士の交流 の機会を持たせることがお薦めです。

3つ目の エバンジェリストが自社で働くことのよさを実感している ことは人選の上での大前提なのですが、実は、エバンジェリストのトレーニングを通じて自社の魅力を探求したり自社で働くやりがいを言語化したりする過程で、 自然と自己肯定感が生まれ、そのような状況に到達することが多いです。
このことは、エバンジェリスト自身のキャリア形成にも、よい効果を与えています。


さて今回は、エバンジェリスト施策についてお話をしてきました。
強力な施策として、折に触れて自信を持ってお話しているのですが、正直な感触としては、 「エバンジェリスト」 もしくは 「リクルーター」 という呼称を用いている限り、なかなか広く浸透しないようです。
どなたかよい名前をつけていただけないでしょうか(笑)?

 

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