
辻 太一朗(つじ・たいちろう)
2011/03/01

イントロダクション
こんにちは。採用ナビゲーター・辻太一朗です。
「短い面接時間では、学生の本当の姿が見えない」というお悩みをよく聞きます。確かに面接で、事前準備をしてきた学生の“素”の姿をどう見るかは、皆さんの悩みの種、頭が痛いところですよね。では、面接で「学生の“素”の姿」を引き出すにはどうしたらよいのか。
今回は、面接という「場」の捉え方を変えることで、事前準備をしてきた学生の本来の姿が見えてくるという話をしてみたいと思います。
「面接での会話」では、
学生の姿は見えてこない!?
どうすれば面接で「学生の“素”の姿」を見ることができるのか。
この話をする前に、少々根本的な話、面接とは学生のどんな能力が見られる場かという点を整理してみたいと思います。
私は、面接の場で見ることができるものは、2つに分類できると考えています。一つは「直接的」に見られるもの。もう一つは「間接的」にしか分からないため、会話から想像し、判断する必要があるもののことです。
「直接的」に見られるもの ・コミュニケーション能力、論理的思考力 ・業界知識、専門領域の知識 など
「間接的」に分かるもの ・忍耐強さ、協調性、責任感 ・継続的に努力できるか、誠実に対応するか など |
このうち、「直接的」に見られるものは、コミュニケーション能力に代表されます。面接の場で話が分かりやすければ、コミュニケーション能力が高いし、話が分かりにくければコミュニケーション能力は低いと判断できます。面接での言動から、すぐに確認できるものです。
一方、「間接的」にしか見ることができないものは、面接での会話から想像するしかないものです。例えば「責任感の強さ」は、面接での言動では確認できません。
責任感の強い人といえるのは、「過去の行動の中で、責任感のある行動を、他の人よりも高いレベルで実行してきた人」です。
そして、その人物が「責任感の強い人か」どうかは、「どのような状況の中、どのような行動を、どのようなレベルで行動したのか」によって判断されるものです。
つまり面接での会話から、その場面の状況を想像して判断するしかないのです。
ここで、皆さんに注意していただきたいのは、「責任感の強そうな印象」の学生と、本当に「責任感の強い行動をしてきた学生」とは違うということです。実際、「責任感の強そうな“印象”」の学生を、「責任感のある学生だ」と表現している面接者がいました。
繰り返しになりますが、見えないからこそ、その学生が「どんな場面で、どういうことを、どんなレベルで行ってきたか」を引き出し、過去の事実から皆さんが判断する必要があるのです。
そのためには、「志望動機は」「弊社に入社して、どんな活躍をしたいですか」という表面的な質問を繰り返していてはダメなのです。

私は、学生の本質的なところを見るためには、皆さんの「聞く姿勢」を変えることが必要だと考えています。
相手に質問を投げ掛けて、答えをそのまま聞く「ヒアリング」ではなく、相手の内面を探り、見る「インタビュー」をするという意識を持つことが重要です。
相手の発した言葉から、その背景にある事情、要望を想像し、真意を探る。そんなコミュニケーションができれば、「表層的な」学生の模範回答の裏にある「本質的な」思い、考え方などが見えてくるのではないでしょうか。
ただ、急に「インタビュー」というと、特殊な会話の印象を与えてしまうかも知れませんが、実は、皆さんが普段されている会話と同じなのです。
皆さんが職場の部下や後輩から、報告・提案を受けるときの会話を思い浮かべてみてください。
「いい企画を考えたんです」と提案があったとき、「君がいうなら、いい企画だろう」とそのまま受け取りますか。
「どうしてその企画なのか」「背景は」「ターゲットは」と質問していきませんか。また、ビジネスの場ではやみくもに質問するのではなく、5W1Hの要素で情報を引き出し、具体的な中身を掘り下げていきませんか。
こうして引き出した情報から、成功するかどうかを想像し、最終的に企画内容の良しあしを判断していきませんか。
結局、面接での会話もこれと同じなのです。
面接での会話を
どんどん掘り下げていくには?
「自分のここがすごい」「こんなに頑張った」という学生の話を、表面的に聞いているだけでは判断がつかないのは当然です。
では、日常の職場での会話と同じように、面接での会話を掘り下げていくにはどうしたらいいか。ここからは、具体的なやりとりについてお話ししましょう。
とかく面接の場では、「選ぶ/選ばれる」という関係から、コミュニケーションも一種独特なものになりがちです。
そんな中で、「日常の職場での会話と同じように」と言われても、なかなか難しいですよね。
ちょっとしたコツですが、学生へ質問する時に、「大学時代のサークルやアルバイトの後輩」に話し掛けるつもりで向き合ってみてください。そして、話を聞くときも、そんな気持ちで聞いてみてください。
そんな雰囲気で会話を切り出して、いよいよ面接での質問です。例えば「学生時代に一番苦労したエピソード」を聞くとします。
「何でそれは大変だったのか」「他に方法はなかったのか」と、そのエピソードの状況や大変さのレベルを想像しながら、話を掘り下げていきます。ここで忘れてはいけないのは、ビジネスの場と同じで、きちんと 5W1Hの情報を引き出すこと。
そして話を掘り下げた上で、どんな状況で、どのレベルまで頑張ることができるのかを、想像しながら、「苦労があっても頑張り続けることができるか」を判断していけばいいのです。
学生の受け答えが皆同じと嘆いていないで、「職場での日常の会話」を試してみませんか?
今回のコラムでは、面接でどのような「聞く姿勢」をとるかという話をしました。ぜひ実践してみてください。
- 辻 太一朗(つじ・たいちろう)
- (株)リクルート人事部を経て、1999年(株)アイジャストを設立。
2006年(株)リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。
2010年(株)グロウス アイ設立、大学教育と企業の人材採用の連携支援を手掛ける。
また同年に(株)大学成績センター、翌11年にはNPO法人DSS (大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会) を設立。
採用に関わる多くのステークホルダーを理解しつつ、採用・就職の"次の一手"を具体的に示すことに強みを持つ。

「見極め」
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