曽和 利光(そわ・としみつ)
2018/12/20
イントロダクション
こんにちは。組織人事コンサルタントの曽和利光です。
今回は、学生が就職活動に関して、どんなことを考えているか、あえて言うならどんなことを誤解しているのかについて、一緒に考えてみたいと思います。私は仕事柄、いろいろな学生にお会いして話をする機会が多いのですが、たくさんの間違った(?)常識が浸透していることに驚きます。人事的な考え方が、学生側には伝わっていません。
学生が誤解していることはとてもたくさんありますが、代表的なものは以下の3つです。
誤解② 志望度は会社の熟知度で測られる
誤解③ シンプルに話す方がわかりやすい
それぞれについて、以下、述べていきます。
誤解① 面接で訴求すべきことは志望度
人事の方には言うまでもないことかもしれませんが、皆さんは「自社の仕事をやりたい人」と「自社の仕事ができそうな人」のどちらを採りたいでしょうか。ふつうに考えれば、「できそうな人」ではないかと思います。「好きこそものの上手なれ」という言葉もありますので、「やりたい人」は「できそうな人」である可能性も高いでしょうが、「下手の横好き」という言葉もあり、必ずしも、「好き」が「できる」にはつながりません。ということは、二者択一となれば「できるかどうか」をみたいところです(もちろん、人事側も志望度を重視しているところも多いのですが…)。
ところが、学生の多くは、面接で「いかに自分はあなたの会社の仕事がしたいのか」「どれほどこの会社に入りたいのか」について訴求しようとします。自社のどこが好きで、なぜ好きで、どういうことをしたくて、という話をします。しかし、「意見(思っていること)よりも、事実(やってきたこと)に集中して評価を行う」面接の基本から考えると、これらの学生の「好き」はすべて「思っていること」であり、何とでも言えることですから、これに依って評価をしていては相手を見誤ることになります。「なぜ当社に入りたいのか」はほどほどに聞いておいて、「やってきたこと」=過去のエピソードをよく聞くべきでしょう。
よく知っていれば、
頑張ってくれるのか
誤解② 志望度は会社の熟知度で測られる
前頁のように、学生を評価する際に、最も集中して聞くべきことは志望度という「思っていること」≒「何とでも言えること」ではなく、「やってきたこと」から「できそうなこと」を推定するということですが、そうは言っても最終的にはもちろん志望度も重要です。特に、最終面接や内定出しのステップに近づくにつれ、重要度は増していきます。ところが、志望度の語り方においても、学生は誤解しているところがあります。
それは、どれだけその会社や仕事を志望しているかは、どれだけその会社や仕事のことを知っているかという「熟知度」で測られるということです。強く志望している会社のことは、よく調べるでしょうから、よく知っているのではないかということです。確かにそういうことはあるのですが、人事が確かめなければならないのは、「そもそも最初の志望動機が、『ねっこ』の生えた確固たるものなのかどうか」です。
人は自分で自分を容易に騙せてしまいます。特に就職活動においては、必ず志望動機をどこかで聞かれると学生は全員思っているので、本当はそこまで志望していなくても、志望している理由を何とかして考え出そうとします。そして、そうこうしているうちに、自己洗脳をしてしまい、「自分はこの会社を強く志望しているのだ」と思い込んでしまう。そう思い込めば、もちろんいろいろ調べてその会社に詳しくなります。でも、だからと言って、そもそもの元となる志望がねっこの生えた確固たるものであるかどうかはわかりません。
だから、「自社について詳しい」≒「自社への志望度が確固たるものである」と人事は考えてはいけないと思います。どれぐらい知っているのかどうかなど、ある意味付け焼き刃でどうにでもなる部分です。もともと志望度を聞く意味は、自社に入ってから、大変なこと、つらいことがあったとしても、強く根深い動機を持っていれば頑張ってくれるかどうかを知りたいからです。それを単なる自社に対する熟知度、どれだけ勉強しているかどうかなどで単純に評価してはいけないと思います。
裏返して言えば、今はまだ学生自身が気づいていなくても、きちんと情報をインプットしてあげれば、その会社に対しての志望が「目覚める」人だっているはずです。初期の頃の、まだ自社についての情報が不足している状態での志望度を、真の志望度と捉えないようにすべきでしょう。
学生と面接担当者では
「わかりやすい」が違う
誤解③ シンプルに話す方がわかりやすい
世の中には様々なプレゼンテーション手法があって、「まず3つあります」と言えとか、「結論は冒頭に言え」とか、いろいろなことが語られています。学生は、それを頑張って勉強して採用面接にも転用することが多いと思います。中でも特徴的なのは、「できるだけわかりやすく、端的に話す」ということなのですが、これも人事の方には釈迦に説法ですが、皆さんはそんなことは求めていないのではないでしょうか。
というのも、端的に話すということは、ややもすれば、シンプルに抽象的に話すということになります。中途採用ならまだしも、新卒採用の学生たちが抽象度の高い話をしだすと、だいたい似たような話になってしまい、差別化ができません。極端な話、「何かの場面で大変な問題があり」「それに対して、こういう工夫をして」「結果、こういう成果が出ました」ということを学生は話すわけですが、そういう抽象的な骨組みだけを聞いても、他の学生と何が違うのかてんでわかりません。
面接担当者が知りたいのは、「複雑で曖昧な人間という存在を抽象化して簡略化してわかりやすくした情報」ではないはずです。そうではなくて、別にすっきりとした端的な言葉になっていなくても、矛盾を孕んで曖昧な表現になっていたとしても、その人となりが何となくイメージできるように、できるだけ具体的な情報が欲しいのではないでしょうか。なので、できるだけ固有名詞や数字など、ディテールが知りたい。ディテールを知ることで、その学生がやってきたことのレベル感や、志向・価値観などがようやくわかるからです。
ですから、面接担当者は、面接においてはしつこい人間にならなくてはいけません。放っておくと、「できるだけシンプルに、端的に」と考えている学生は、話を抽象化して、「わかりにくく」してきます。これに対抗するには、彼らが抽象化したことを、ことごとく具体化する質問をすることです。「それが具体的にはどういうことですか」「その能力が発揮できた具体的な事例はありますか」等々、とにかく「具体的、具体的」と、具体化を促すということが、面接における基本的なツッコミ質問です(それだけでも、面接の精度は上がると思います)。
以上、今回は学生が面接に関して思い込んでいることについて述べてみました。相手が何を誤解しているのかがわかれば、それに対する対策を立てることができます。ぜひ、意識して採用面接に臨んでみてください。
- 曽和 利光(そわ・としみつ)
- 1995年(株)リクルートに新卒入社
、人事部配属。
以降、一貫して人事関連業務に従事。採用・教育・組織開発などの人事実務や、クライアント企業への組織人事コンサルティングを担当。リクルート退社後、インターネット生保、不動産デベロッパーの2社の人事部門責任者を経て、2011年10月、(株)人材研究所を設立。現在は、人事や採用に関するコンサルティングとアウトソーシングの事業を展開中。
「採用活動の教科書・応用編」
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