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2019/04/10NEW

「ほとんどの企業では、新入社員が成長しない仕組みになっている」―就職活動時の成長スピードを持続させる仕組みづくり―

小宮 健実(こみや・たけみ)
1993年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。 人事にて採用チームリーダーを務めるかたわら、社外においても採用理論・採用手法について多くの講演を行う。さらに大学をはじめとした教育機関の講師としても活躍。2005年首都大学東京チーフ学修カウンセラーに転身。大学生のキャリア形成を支援する一方で、企業人事担当者向け採用戦略講座の講師を継続するなど多方面で活躍。2008年3月首都大学東京を退職し、同年4月「採用と育成研究社」を設立、企業と大学双方に身を置いた経験を生かし、企業の採用活動・社員育成に関するコンサルティングを実施。現在も多数のプロジェクトを手掛けている。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。

イントロダクション

皆さん、こんにちは。
採用・育成コンサルタントの小宮健実です。

4月になり、新しい元号が発表になりました。

ひと昔前、産業界でグローバル化の重要性が唱えられた時、多くの企業が西暦を社内標準として用いるように改めました。

採用活動も常に「年度」が意識される仕事ですが、「2019年採用」、「2020年採用」という言い方が定着しています。

ただ、業務では西暦が標準の会社でも、個人の話になると「私は2000年、つまり平成12年入社です」といった具合に、元号表現を添える人が少なくありません。

生活レベルでは、それくらい元号は身近ということなのだと思います。

さて、4月に私たちは、平成の最後の新入社員を迎えます。
平成最後だからという訳ではありませんが、新入社員には大きく成長してもらいたいものです。

私はこの時期、選考プロセスの設計を依頼されますが、グループワークを設計したようなときには、新入社員に試しに受けてもらうことがあります。

実はそのようなとき、新入社員、もしくは2年目の社員に覇気がないといったことがよくあります。

問題があるほどではないですが、就職活動の時のあの元気がないのです。
もちろん、就職活動中の学生に比べたら、モチベーションが全く異なることはわかります。
ですが、それを差し引いても、こちらが思う期待値と大きな乖離があったりします。

皆さんもご存じの通り、学生は就職活動中に著しく成長します。
特に主体性や、コミュニケーション力といったものは、就職活動期間に多くの新しい出会い、知識や価値観に触れることで急成長します。

その成長のスピードは、残念ながら企業に入社後は維持されないことが多いようです。
なぜ入社後、成長のスピードが遅くなってしまうのでしょうか?

これは、企業規模にかかわらず、どんなに優良企業であっても、共通している現象だと思います。
今回は、「入社後に成長が止まる理由」についてお話ししていきたいと思います。

 

就活中に急成長するワケ

私は仕事柄、採用だけではなく、人材育成のプログラムを作る機会もあるのですが、設計の際に必ず押さえるポイントがあります。

そうしたポイントを外さずに設計すれば、対象者やテーマが変わっても、成長の仕組みを提供することができるのです。

ある時、就職活動中の学生がどうしてこんなに急成長するのか、考えてみたことがありました。
その際、そうした人材育成プログラムの設計ポイントと就職活動を照らし合わせてみたとところ、その答えが明らかになりました。

人材育成プログラムの設計ポイントが、就職活動にはすべて埋め込まれているのです。

つまり、就職活動中の学生は、社会に仕掛けられた、とても大掛かりな「人材育成プログラム」に参加しているのと同じ状況なのです。

そのポイントとは、どのようなことでしょうか。
以下に説明していきたいと思います。

 

人が育つ仕組みに必要な7つのポイント

人が育つために押さえるべきポイントを見ながら、就職活動を考えてみます。

1. “自分ごと”であるタスク
成長のために取り組むタスクは、本人が心の底から「自分ごと」であると認識していなければいけません。
自分ごとであるが故に責任感が伴い、アクションの一つひとつに真摯に取り組めるのです。
どんなに素晴らしいプログラムであっても、他人ごとという意識で取り組んでいたら、何ら効果を期待することはできません。

では就職活動はどうかというと、非常にわかりやすく「自分ごと」です。明らかに自分が主人公であり、直接的であるため、他者に依存したり、責任転嫁したりすることが難しいと言えます。
「自分ごと」であるというポイントは、最も押さえるのが難しいポイントですが、就職活動は、このポイントをまさしく押さえています。

2. ストレッチされた目標
ストレッチされた目標とは、簡単に叶う目標ではなく、努力してどうにか届く挑戦的な目標設定をすることです。
教育学では、背伸びしてどうにか届くくらいの目標設定をすることが望ましいと考えられています。

就職活動では、多くの学生が第一志望の企業を設定します。ただし、売り手市場であっても、誰もが第一志望の企業に入社するわけではありません。「挑戦する」という意思を自然に持ちやすいのが就職活動だと言えます。

3. 承認の機会・成長の可視化
教育学では、スモールステップという表現が一般的ですが、成長意欲をもたらすためにも、自分ができるようになったことを、その都度きちんと可視化し、認めてあげることが必要だとされています。

就職活動では、通らなかったエントリーシートが通るようになったり、面接の練習をしたことで落ち着いて本番に臨め、次の選考に進めるようになったりする体験をします。努力をすれば、結果につながるといった体験を短期間に連続的にしています。

4. リフレクション(省察)の機会
PDCAと表現してもよいですが、やってみて振り返る、というプロセスは育成プログラムの要だと言えます。プログラム中の行為そのものより重視されていることも珍しくありません。

就職活動は長期間にわたって行われることには問題を唱える人が多いのが事実ですが、教育的観点から見ると、リフレクションの回数や時間が十分にあるというメリットがあります。
学生は就活ノートを作ったり、誰かに相談したり、本を読んだりするようなことをしながら、就職活動をすることができます。
極端な自分探しはネガティブな言葉になってしまいましたが、かといって、まったく自己を振り返ることができない人材に成長が見込めないのは明らかです。

5. アドバイザーやメンターの存在
アドバイザーやメンターといった、支援をもたらす人の存在の重要性はますます高まっています。
2.ストレッチされた目標、3.承認の機会・成長の可視化、4.リフレクションの機会、いずれの質を高めるためにもアドバイザーやメンターの存在は大きいと言えます。

就職活動中は、学生を囲む多くの人がアドバイザーやメンターとして機能します。
人生においても、これほど周囲から支援を受けやすい時期はないかもしれません。知らない人でさえ、就職活動をしていると言えば相談に乗ってくれるのですから、恵まれているとしか言いようがありません。

6. 再チャレンジの機会
人が成長するには、一度だけの取り組みではなく、ループやサイクルといったスキームになっていることが重要です。
リフレクションの機会があっても、そこで得たことをもう一度実践する場が無ければ成長はもたらされません。

就職活動は、一括採用などと言われますが、実際にはその期間に複数の再チャレンジの機会があるのも事実です。
むしろ不合格になった体験をする学生のほうが圧倒的に多く、その振り返りを生かして次に臨むというサイクルが自然に行われています。

7. 仲間
一緒に目標に向かう仲間の存在が重要であることは、説明の必要が無いでしょう。
同じ立場だからこそ、アドバイザーやメンターとも違って、本音で話すことができます。
それは励ましになり、継続を支援します。

就職活動中は、学生は仲間とのつながりを楽しんでいるようにも見えます。
お互いに励ましあって、活動をしているのだと思います。
さて、ここまで見ていただいたように、学生が就職活動で急成長するのには相応の理由があったのです。
同時に、入社後に成長が止まる理由についても、見えてきたような気がします。

 

ほとんどの企業では、新入社員が成長しない仕組みになっている

では、新入社員の育成環境において、成長する仕組みに必要な要素はどれくらい機能しているでしょうか。

ここからは、社会性の高い就職活動よりも、自社の個別の環境の話になるので、読者の皆さんがそれぞれ「自社はどうだろうか」と考えていただく必要があります。

以下はあくまで私の個人的な感想ということで、コメントをしたいと思います。

●必要な要素
1. “自分ごと”であるタスク
2. ストレッチされた目標
3. 承認の機会・成長の可視化
4. リフレクション(省察)の機会
5. アドバイザーやメンターの存在
6. 再チャレンジの機会
7. 仲間


まず1.ですが、新入社員はきちんと自分の仕事を「自分ごと」と捉えられているでしょうか。
多くの人にとって、入社してすぐの研修や仕事が「これが自分の求めていたことそのものだ」と思えることは少ないでしょう。
むしろ「言われたことをやっている」という意識が、(ネガティブな意味ではなく)普通だと思います。

2.「ストレッチされた目標」はどうでしょう。
新入社員や2年目の社員は、挑戦的な目標を自分で設定することはなく、どちらかといえば、きちんとやれば当然クリアできる目標を他者から与えられるのではないでしょうか。

そうした目標設定は、「よく目標を達成したね!」という承認の機会につながらず、「そうそう、ちゃんとやれば絶対できるでしょ!」という抑圧(プレッシャー)の機会につながってしまいます。
成長の可視化は喜びの対象ではなく、みんなが同時にできるようになる中、「自分だけできなかったらどうしよう」という恐怖の対象になってしまいます。

4.リフレクションの機会はどうでしょう。
一括採用として批判される就職活動よりも、新入社員の育成のほうが硬直的なスケジュールで、リフレクションの時間は限られていることが多いのではないでしょうか。
「就活ノート」のような振り返りの行為を見ることは、ほとんどありません。

5.アドバイザーやメンターがどのように機能しているかは、企業差が激しいでしょう。
支援する人ではなく、先輩として指示する人になっているケースも多いのではないかと思います。

6.再チャレンジの機会はどうでしょう。
日本企業では、若手は横並びで扱うことが多いと思います。再チャレンジ=落ちこぼれと見えることが多いのではないでしょうか。

7.仲間についてはどうでしょうか。
ここまでネガティブなコメントを続けてしまいましたが、同期との絆については、どの企業も有益な関係ができているのではないでしょうか。

このように、新入社員や2年目の社員が置かれる環境は、成長する仕組みの観点から見たときに、必ずしも優れているとは言えません。

就職活動中の成長は、ポテンシャルではなく事実です。
それを入社後も引き出し続けるためには、方針や制度について見直すことが必要かもしれません。
その際に今回のコラムが少しでも参考になれば幸いです。

ではまた1カ月後にお会いしましょう。
次回もよろしくお願いいたします。

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