曽和 利光(そわ・としみつ)
2014/06/17
イントロダクション
こんにちは。組織人事コンサルタントの曽和利光です。
そろそろ「インターンシップを企画しなくては」と検討されている企業も多いと思います。
特に、昨今では、日本経団連の「採用選考に関する指針」などの影響で、本採用の活動時期に制限があるために、採用期間以外にも、自社のことや業界・事業・仕事について学生に知ってほしいと、インターンシップを導入する企業が増え、インターンシップの競合が以前よりも激しくなってきています。今回は、どのようなインターンシップが学生にとって魅力的なのかについて述べたいと思います。
インターンシップのもともとの定義は、広い意味でのキャリア教育の一つであり、さまざまな業界や仕事、企業とはどんなものなのかなどについて知る機会ということになっています。もちろん、そういう側面が重要なのはいうまでもありません。しかし、だからといって「その企業の仕事の面白さがよく分かる」ということが学生のインターンシップ選びのメインの軸であるかというと、実はそうでもありません(それは学生にとって「当たり前」の基準ではあると思いますが)。
多くの学生がインターンシップ選びの基準として挙げるのは、「そこに、どれだけ魅力的な学生が集まっているか」です。魅力的な学生と出会うことで、切磋琢磨して自分の力を試したり、刺激を受けてモチベーションが上がったりすることを望んでいるのです。
学生は、よく「何をやるかよりも、誰とやるか」ということを就職における企業選びの基準としていますが、インターンシップでも同じです。
つまり、インターンシップは第一に、魅力的な学生が集まってくるような場にしなければなりません。コンテンツよりも、どういう人が来るか、です。極端なことをいえば、よくあるビジネスプランコンテストのような、あまり差別化できないコンテンツであっても、「あそこには面白い人が集まるから楽しいよ」と噂が立てばまったく問題ありません。コンテンツ企画に注力するのは大事ではあるのですが、魅力的な学生の集客をおろそかにしてしまえば、コンテンツのよさは生かされることはないでしょう。
では、インターンシップに魅力的な学生を集めるためには、どうすればよいでしょうか。
自社の魅力だけで惹きつけようとせず、
一般的な魅力をつくる
多くの会社が実際にやっていることですが、あまりお勧めしないのは、自社の魅力をうまく抽出し、強く打ち出すこと「だけ」によって、学生を惹きつけようとするようなコンテンツをつくることです。そういう方向だと、どんなにうまくコンテンツをつくったとしても、いわゆる自社の「ファン」(そもそも志望度が高い層)がたくさん来るだけです。
「ファン」層のレベル感は、自社の採用ブランドのレベル感にほぼリンクします。もし、ファン層ばかりが集まってくるような企画にしてしまうと、自社の採用ブランドにはそれほど魅力を感じないという層には刺さらずに、そういう人たちはやって来てくれないということもありえます。
ちなみに、蛇足かもしれませんが、私は「ファン」の価値を低く見ているというわけではありません。会社にとって「ファン」はとても大事な存在です。しかし、こと採用活動のパワー配分ということだけでみれば、採用担当者があまり介在せずとも、企業の採用ブランド力に頼っていれば、ちゃんと受験して入社してくれるのがファンというものですから、そこについて過度なパワーを割くのは効果的ではないということです。
このことから、インターンシップは、自社のファン以外の、学生一般から見ても魅力を感じるようなものにしなければなりません。以下に例を挙げます。
自社のこと「だけ」をテーマにインターンシップを設計しなくても、自社にとって望ましい学生を集め、接し、結果として、自社のことを知ってもらうことは十分にできると思います。
企画力に自信がなければ、
地道な集客活動で勝負
とはいっても、業態によっては、なかなか学生一般に受けそうな面白い企画が思い浮かばない……ということもあると思います。そんな場合には、どうすればよいのでしょうか。
冒頭にも述べましたが、結果として「魅力的な学生が集まっている」状態をつくればよいのです。先述したように、コンテンツの魅力で集めるのもよいのですが、自社にとって望ましい学生を見つけて、こちらから声をかけて来てもらえれば、結果は同じことです。つまり、コンテンツで「引き」がつくれないのであれば、集客活動を頑張るということです。商品力がなければ営業力でなんとかなるのです。
自社にとって望ましい学生をコンテンツに頼らずに集めるのであれば、企業の側からアプローチをしなければなりません。
最も簡単なアプローチは、内定者や新人の後輩たちへのアプローチです。「類は友を呼ぶ」ですから、自社に入社する人のまわりや後輩たちの中には、自社に適している、自社にとって望ましい人材が存在している確率は高いと思います。
インターンシップを企画したなら、そういった彼らに、直接的に広報活動を行っていけばよいのです。簡単なビラをつくったり、メーリングリストで流せるようなファイルをつくったりして、内定者や新人に「これを後輩たちに宣伝してくれないか」、あるいは、もっと直接的に「誰か自社に合いそうな後輩に、インターンシップに参加してもらうことはできないか」と依頼するのです。
このように、集客を頑張ることで自社にとって望ましい学生を集めるという手もあります。
以上のように、コンテンツや集客の努力で学生が集まったら、次に行うのは「場づくり」です。いくら自社にとって望ましい学生が集まったからといっても、そのままにしていては面白い場にはなりません。宴会の時、参加者の席順や式次第などを考えないような幹事は失格ですよね。場が盛り上がるように、さまざまな仕掛けをつくっておくことが大切です。
採用ブランドだけでなく、インターンシップのブランドも今後、ますます重要になっていくことでしょう。もし、自社にとって望ましい学生を集め、面白い場をつくることができたなら、皆さんの会社のインターンシップは「面白いから絶対に参加した方がいいよ」と、学生の間で評判になっていき、年々、好循環が生まれて、自社にとって望ましい学生をより効果的に集めることができるようになっていくのです。
- 曽和 利光(そわ・としみつ)
- 1995年(株)リクルートに新卒入社
、人事部配属。
以降、一貫して人事関連業務に従事。採用・教育・組織開発などの人事実務や、クライアント企業への組織人事コンサルティングを担当。リクルート退社後、インターネット生保、不動産デベロッパーの2社の人事部門責任者を経て、2011年10月、(株)人材研究所を設立。現在は、人事や採用に関するコンサルティングとアウトソーシングの事業を展開中。
「採用活動の教科書・応用編」
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