6月を戦い抜くために、今すぐ調整すべき7つのポイント―「6月」に対する理解の差が採用の明暗を分ける

経団連の指針による選考活動解禁の6月が、いよいよ目前に迫ってきました。これから選考を開始する企業だけではなくすでに選考を終えている企業にとっても、この6月をどう過ごすかがとても重要であることは、疑いの余地がないと思います。そこで今回のコラムでは、目前に迫った6月を戦い抜くために、今すぐ調整すべきポイントについてまとめてみました。

イントロダクション

皆さん、こんにちは。採用・育成コンサルタントの小宮健実です。

経団連の指針による選考活動解禁の6月が、いよいよ目前に迫ってきました。

これまで採用担当者の皆さんが地道におこなってきた活動は、選考活動に参加した 「応募者」 が、 「内定者」 となることで初めて成果の形を成します。

もちろん、すでにこのタイミングである程度の成果を出している企業も多いと思いますが、今年は昨年に引き続き売り手市場という特徴もあります。

したがって、これから選考を開始する企業だけではなくすでに選考を終えている企業にとっても、この6月をどう過ごすかがとても重要であることは、疑いの余地がないと思います。

5月も半ばを過ぎ、検討に使える時間もあとわずかです。

そこで今回のコラムでは、目前に迫った6月を戦い抜くために、今すぐ調整すべきポイントについてまとめてみました。

スケジュール変更と「6月」の意味

まず、今更ではありますが、今年のスケジュール下における学生の就職活動についておさらいをしたいと思います。

今年のスケジュール変更から学生が受けた影響は以下の通りです。

  • ・今年は昨年に比べ、採用広報期間が2カ月短くなった
  • ・今年は昨年に比べ、選考開始が2カ月早くなった

これらのことから単純に推測できるのは、 (昨年の学生と比べて) 学生が就職に対し未成熟なまま、選考に突入するであろうということです。

一方で今年の学生は、昨年の学生よりもインターンシップについて、より多くの情報と支援を受けていました。一部の学生は、採用広報開始以前から社会人と直接コミュニケーションをとり、順調に就職活動への道筋に乗っていたのです。

3月から就職活動を始めた学生と、早期にインターンシップに参加して就職活動の道筋に乗った学生 (もちろんそのインターンシップの質も問わなくてはいけませんが) 、両者の間には、簡単には埋まらない経験の差があることは事実です。

こうした学生の状況をふまえて、今年の選考活動において今すぐにした方が良い7つのポイントについて、説明していきたいと思います。

  • ポイント1: 今までの就職活動の過程を聞く

最初のポイントは、 「応募者に今までの就職活動の過程を聞く」 ということです。

理由は先ほど述べた通り、3月から就職活動を始めた学生と、早期にインターンシップに参加していた学生には差があるためです。

ただし、私がいいたいのは、インターンシップに参加して順調に就職への意識を高めた学生を高く評価しようということではありません。

インターンシップに参加して順調に意識が高まった学生に接すると、インターンシップに参加していない学生に対し、 「経験がない」 のではなく 「自社にとって望ましい学生ではない」 とみなしてしまう心理的バイアスが発生しがちです。

成熟感のある学生を採用できればそれはそれでよいことなのですが、3月から就職活動を始めた学生の中にも自社にとって望ましい学生はいるため、安易に不合格としないように配慮すべきというのが私の考えです。

インターンシップ経験にとらわれず、今までの就職活動の過程について質問をしてみましょう。学生たちが各々、どれほど自分なりの経験に基づいて今の状態にたどり着いているかが確認できます。

「この学生はまだ意識が高まっていない。それは経験がないからで、今から経験をすれば十分追いつくだろう」 といったように、伸びシロを正しく見極めるようにするとよいと思います。

  • ポイント2: 志望動機で合否判断をしない

次のポイントも、学生の就職活動の成熟度に起因するものです。

私は、就職に関する成熟度の差は志望動機に最も表れると思っています。

志望動機が本音でしっかりとつくられている学生ほど、働くことへの腹落ちがなされていて、内定辞退をすることもありません。

ただ、今年のようなスケジュールの場合には、志望動機は質問しても評価には使用しないことをお奨めします。

では、なぜ質問をするのかというと、志望動機は (応募者が自社にぜひ迎えたい人材だった場合に) 入社意欲を高める要素として用いるためです。

よくない典型的なパターンは、応募者が述べた志望動機に対し 「なぜ自社なのかが分からない。他社にも通用する志望動機で自社への理解が低い」 といった理由で不合格にしてしまうことです。

志望動機がしっかりとつくられていないと思われる学生に対しては、こちらから介入し、十分な情報を提供して一緒に志望動機をつくり込み、合格レベルまで引き上げてしまうことをお奨めします。

学事日程が採用活動を妨げる

今年のスケジュール変更の特徴のひとつに、 「短縮」 があります。

先ほど述べたように、採用広報期間もそうなのですが、実は最も 「短縮」 が体現されるのは選考プロセスだと私は考えています。

それは、選考開始が 「6月」 だからです。多くの大学の学事日程で7月は試験期間として設定されているため、7月に入ると、学生は試験のために就職活動ができなくなります。

  • ポイント3: 選考は7月にかからないように計画する

そのため、7月にかかるような選考スケジュールを提示することは、学生の本分である学修を阻害してしまうので適切ではないと考えます。

今年の選考スケジュールについては、6月の第1ラウンド、8月以降の第2ラウンドと設定することが、産業界と教育界の折り合いとして、企業が取るべき対応だと思います。

すると、第1ラウンドは7月の試験期間に入るまでの1カ月の間に終える必要がでてきます。しかし、だからといって安易に選考プロセスを省略すると、内定を安易に出しているようにも見えてしまうことにもなりかねません。

短期に内定を出すにしても1回1回のプロセスの密度を高めましょう。手ごたえのある選考だったと応募者が感じることは、合格したことへのプライドを高め、結果的に応募者の心を惹きつけるためにも有効です。

  • ポイント4: 応募者の学事日程を把握する

ポイント3を実現するために、今年の応募者情報に学事日程を加えましょう。

応募者によっては、どうしても試験期間をまたいで選考を実施しなくてはならない状況が発生するかもしれません。

他社との競争力を失わないためにも企業としての社会的責任を果たすためにも、応募者の学事日程を把握した、個別の柔軟な対応が可能な環境を準備しておきましょう。

  • ポイント5: 選考日程の重複で落とさない

説明するまでもなく、6月戦では多くの企業が「短縮」されたスケジュールの中でひしめき合うことになります。学生の立場からみれば、各社からの呼び出しがバッティングすることも必ずあるでしょう。

その際、 「予定が重複したからどちらかの企業を辞退するしかない」 という状況は、学生・企業双方にとって損失だと私は思います。

ある応募者が自社より他社を強く志望していたとして、その他社の選考に落ちて自社に入社した結果、才能の花が開くということは、まったく珍しくない話です。ただし、他社を志望した時点で自社への道が閉ざされてしまっていては、花が開くことはありません。

さて次は、内定者への対応についても触れたいと思います。売り手市場の環境下、内定出しが集中する6月は当然、内定辞退も頻出することが予想されます。

  • ポイント6: 内定者とは直接コミュニケーションする

今年最も注力すべきことは、内定者と直接コミュニケーションを取り続けることだと思います。

特に採用活動が集中する6月と8月にどれだけ直接的なコミュニケーションを取れるかが、内定辞退を防ぐことが出来る重要なポイントになると思います。

もちろん、そう簡単に直接内定者と会い続けることができるわけではありません。

そこで私は最近、内定者とのコミュニケーションにオンライン面談を活用することをお薦めしています。

オンライン面談は慣れてしまえば容易に実行可能で、時間・場所の制約を最小化できます。パソコンやスマートフォンの普及により、実施環境も十分整っています。

電話やメールでのコミュニケーションは一般的ですが形式的なものになってしまうことも多く、費やす労力に対して思ったほど効果が高くありませんが、オンライン面談は実際に会うに等しいコミュニケーション密度を実現することができます。

  • ポイント7: 第2ラウンド(8月戦)の準備をする

嵐のように過ぎ去るであろう6月は、一部の学生と企業のマッチングが成立しつつも、ほとんどの企業にとっては時間が足りないと思われます。6月終了の時点では、企業によって明暗が分かれてしまうかもしれません。

その時大切なことは、自社が6月時点で仮に “暗” の状態だったとしても、それは自社の採用力だけが理由なのではなく、今年の採用スケジュールも大きく影響しているのだと理解することです。

つまり、あらかじめ8月戦を睨んだ十分な準備をしておくことが、今年における正しい成果の出し方だと考えます。

 

以上、ここまで6月を戦い抜くために今すぐ調整すべき7つのポイントについてお話ししてきました。

残された時間は多くありませんが、今から間に合う対策もあると思います。これまで積み上げてきた努力を実りあるものにするためにも、最後まで最善を尽くしましょう。

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小宮 健実(こみや・たけみ)
小宮 健実(こみや・たけみ)
1993年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。 人事にて採用チームリーダーを務めるかたわら、社外においても採用理論・採用手法について多くの講演を行う。さらに大学をはじめとした教育機関の講師としても活躍。2005年首都大学東京チーフ学修カウンセラーに転身。大学生のキャリア形成を支援する一方で、企業人事担当者向け採用戦略講座の講師を継続するなど多方面で活躍。2008年3月首都大学東京を退職し、同年4月「採用と育成研究社」を設立、企業と大学双方に身を置いた経験を生かし、企業の採用活動・社員育成に関するコンサルティングを実施。現在も多数のプロジェクトを手掛けている。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。

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