2016/03/10

2017年採用戦線本番を占う!―『就職白書2016』からの考察―

岡崎 仁美(おかざき・ひとみ)
1993年(株)リクルートに新卒入社。以来一貫して人材関連事業に携わる。
当初7年間は大阪にて人材採用・育成の営業に従事、中堅・中小企業を中心に延べ約2000社を担当。2000年に首都圏に異動し、転職情報誌『B-ing関東版』の編集企画マネージャー、同誌副編集長、転職サイト『リクナビNEXT』の編集長を経て、2007年4月に、『リクナビ』編集長に就任。以後、大学などでの講演も数多く行う。プライベートでは3児の母でもある。

イントロダクション


こんにちは。就職みらい研究所所長の岡崎仁美です。

いよいよ、2017年卒採用が本格スタートとなりました。

企業の採用意欲は、15年卒、16年卒に引き続き極めて高く、また16年卒から大きく変更となった就職・採用活動スケジュールがわずか1年で修正されるなど、採用担当者の皆さんからは 「今年も依然 “視界不良”」 といった声をしばしばお伺いします。

そこで今回は、先日就職みらい研究所が発表した 『就職白書2016』 の調査結果をベースに16年卒就職/採用をあらためて振り返ると共に、17年卒採用戦線の行方を探ってまいります。

■調査概要

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採用予定者数の1.7倍に内定出し。辞退者は5年前の3倍超に


2013年の 「日本再興戦略 (同年6月14日閣議決定)」 において政府方針として決定された要請により、活動開始スケジュールが大幅に変更された16年卒就職/採用は、どのような着地を迎えようとしているのでしょうか。

まず学生から見てみましょう。

16年卒予定者として民間企業に就職活動を行った大学生・大学院生の実に86.8%が、2015年12月時点で就職先を決めていました。これは前年の84.5%より2.3ポイント増です。

16年卒の就職戦線についてはさまざまな関係者が“混乱した”と評していますが、代表的な結果指標である 「就職決定率」 は、昨年よりむしろ上昇したのです。

 

■図表1: 民間企業を対象に就職活動を行った学生の進路の確定状況 [12月時点] (学生全体/単一回答)

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※「その他」は割愛

 

また、就職予定者の入社企業に対する満足度を見ても、81.7%が 「非常に満足」 もしくは 「どちらかというと満足」 と回答しており、 「非常に不満」 「どちらかというと不満」 を合わせた 「不満・計」 の3.3%よりも圧倒的に高い数字となりました。

 

■図表2: 就職先が確定している学生の入社予定企業への満足度 (就職先確定者/単一回答)

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※カッコ内の数値は前回調査との差

 

これらの結果から、16年卒の学生の就職活動は、全体的には概ね 「結果オーライ」 だったともいえましょう。

一方の企業はどうでしょうか。

2015年12月時点で採用数を充足していた企業は、新卒採用を行った企業の48.3%と、昨年の53.9%から7.6ポイントも減少しました。『就職白書』 が現在の形態となって今年で5年ですが、この「採用充足率」が半数を下回ったのは調査開始の2012年以降初めてです。

 

■図表3: 2016年卒の採用数の計画に対する充足状況 [12月時点] (全体/単一回答)

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入社予定者への満足度は 「満足・計」 が64.7%であるのに対し、 「不満・計」 は15.5%と、「満足」 が 「不満」 を大きく上回る回答結果となったものの、採用活動全体の満足度は 「満足・計」 が47.0%とやはり半数を下回っており、また昨年と比較しても-8.6ポイントと大きく減少しています。

これらの値は、 「企業の16年卒採用は混乱した上に成果も芳しくない」 という大方の認識を裏付けています。

 

■図表4: 2016年卒の入社予定者への満足度(全体/単一回答)

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※カッコ内の数値は前回調査との差
※データは無回答サンプルを除いて集計
※従業員規模や業種不明・無回答企業があるため、規模別、業種別の計と全体は一致しない

 

■図表5: 2016年卒の採用活動全体の満足度 (全体/単一回答)

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もちろん企業も手を拱いていた訳ではありません。 16年卒採用においては、当初から少なからぬ内定辞退が発生することを予測し、採用予定数に対する内定出しの数を高めて対応していたことが、確認されています。

「採用予定数を100」 とした場合の内定出し者数および内定者数の割合を見ると、内定出し者数は166.6と、採用予定の実に1.7倍の内定出しをしていたのです。

 

■図表6: 「採用予定数を100」 とした場合の内定出し者数および内定者数の割合
(面接から内定まで全回答企業/実数回答) ※全回答企業社数2016年卒:1018社

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同じ 『就職白書』 の調査ではないので単純比較はできませんが、リクルートワークス研究所が11年卒の際に行った同様の調査では、採用予定数を100とした場合の内定出し者数は104.8にとどまっていました。

つまり、求人倍率が低かった5年前と比較すると、企業の採用予定数に対する内定出し者数は1.6倍程度に拡大しているのです。

 

■図表7:2011年卒との比較

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ただし、その分、辞退者数も大きく増えています。

16年卒では採用予定数を100とした場合、内定辞退者は76.0でした。これは内定出し者数166.6の45.6%にあたります。 同じく11年卒時の調査結果と比較すると、内定辞退者数はなんと3.4倍にも上ったのです。

一方で、最終的な内定者数については、11年卒では採用予定数100に対して82.6と大きく不足した状態でしたが、16年卒では90.6と11年卒比で1.1倍に伸びています。

11年卒の採用活動が行われていたころは、リーマンショック後の景気後退局面であり、各企業の 「採用予定数充足」 に対する意欲が今ほどは高くありませんでした。

片や昨今は、中途採用市場も活況を呈し、全体的に求人難の傾向がみられる中、ある決まった時期に相当規模の新規就労者が労働市場に参入するという“新卒採用”への期待が一層高まっています。そんな中で、企業は採用予定数に少しでも近づくために、多くの内定を出し、結果として5年前よりも高い充足状況に辿りついているのです。

 

広報活動は4ヶ月繰り下がりで始まり、選考活動は分散

次に、企業の採用活動スケジュールを見てみましょう。

まず採用広報について、 『就職白書』 では 「採用に関する情報の提供」 「プレエントリーの受け付け」 「合同説明会・セミナー(大学開催)」 「同(大学以外開催)」 「自社の説明会・セミナー(対面)」 「同(Web)」 の合計6つのプロセスについて、企業が何月から開始したのかを調査しています。その結果を前年の15年卒と比較すると、2つの特徴が挙げられます。

1つは、採用広報活動の開始ピークが12月から3月に繰り下がっていること (図表8内 【a】)。
もう1つは、15年卒では 「情報提供」 「プレエントリー受け付け」 「合同説明会」 の後にあった 「自社説明会 (対面)」 の開始ピークが、16年卒ではその他のプロセスと同じ3月となっていることです (図表8内 【b】)。

 

■図表8: 採用活動プロセス毎の開始時期 (実績) <採用広報>

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16年卒採用からのスケジュール変更により、採用広報開始から採用選考開始までの期間=採用広報期間は、従前の4カ月から5カ月へと、1カ月延長されました。それにもかかわらず、採用広報の各活動開始は “期間内最前” に集中したのです。

これは、実際には8月よりもずっと前に採用選考活動を始めた企業が一定数存在したことや、学事日程を鑑みると、春休み期間の説明会開催がリーズナブルであることが背景にあると考えられます。

また、求人倍率が高騰している状況に大幅なスケジュール変更が重なり、採用への危機感が一層高まる中、企業がより “直接接点” を重視するようになったことも一つの要因でしょう。


続いて採用選考について、 『就職白書』 では 「書類選考」 「適性検査・筆記試験」 「面接」 「内々定・内定出し」 の4つのプロセスを捕捉しています。

こちらも開始ピーク月を15年卒の調査結果と比較してみましょう。

「書類選考」 は2月から3・4月に、 「適性検査・筆記試験」 は3月から4月にと、変化は1カ月にとどまりました (図表9内 【c】)。「面接」 は、4月集中から4月と8月に開始ピークが分散、 「内々定・内定出し」 は15年卒では4月を頂点とした “高い山” がありましたが、16年卒では最大値は8月ではあるものの、全体的に“なだらかな丘”へと変わっています (図表9内 【d】)。

つまり、ガイドラインでは面接選考開始時期を4月から8月に繰り下げたはずが、実際は 「4月集中型」 から 「4~8月分散型」 への構造変化が起きたのです。

 

■図表9: 採用活動プロセス毎の開始時期 (実績) <採用選考>

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※データは無回答サンプルを除いて集計

 

選考活動の分散は17年卒でも継続の予測


では、17年卒の新卒採用活動はどのように動くと見ればよいのでしょうか。

採用広報について、 「採用に関する情報の提供」 と 「自社の説明会・セミナー (対面)」 をそれぞれ何月から開始するかと尋ねたところ、ピーク月は15年卒と同じ3月でした。

「情報提供」 については77.2%が3月開始と回答している一方で、それより以前に開始する、いわゆる“フライング”は19.9%と前年よりも6.1ポイント増加しています。

「説明会・セミナー」 については65.2%が3月、22.0%が4月に開始するとしています。それより以前は7.9%と限定的ですが、昨年と比べると+3.1ポイントと、やはり上昇しています。

開始時期が8月から6月へと前倒しされることになった採用選考はどうでしょう。「面接」 の開始ピークは4月で33.9%、次いでガイドラインの6月で27.4%です。

5月以前に面接を開始するとした企業はなんと67.9%。前年の70.8%よりはポイントを下げていますが、8月から6月へと前倒しした効果は、この調査結果を見る限りでは極めて限定的になりそうです。

一方、 「内々定・内定出し」 の開始ピークは6月で41.6%と、ガイドラインの時期と一致しています。
ただしこちらも“フライング”は44.1%にも上っており、昨年の61.3%からは大幅に値を下げてはいるものの、内々定・内定出しの分散傾向は続きそうです。

 

■図表10: 採用活動プロセス毎の開始時期2017年卒 (予定)、2016年卒・2015年卒 (実績) <採用選考>

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※「選考開始月までの累計」 2017年卒:2016年5月まで / 2016年卒:2015年7月まで / 2015年卒:2014年3月まで

 

このように16年卒から続く混乱が予感される17年卒の採用戦線ですが、企業の採用基準に変化はあるのでしょうか。

17年卒の採用基準を前年と比較した場合の見通しを尋ねたところ、 「前年卒並み」 が79.9%と圧倒的に高い回答率となりました。

16年卒において採用予定数を充足した企業の割合は低く、採用環境は依然不透明ではあるものの、基準が「緩くなる」という企業はわずか4.0%です。

 

■図表11: 2017年卒の採用基準の見通し (前年採用実績企業/単一回答)

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また、仮に17年卒の採用数が満たなかった場合の対応方針についても尋ねていますが、 「採用数を満たすために基準を見直し、柔軟に対応する」とした企業の割合は12.4%にとどまりました。

 

■図表12: 2017年卒の採用数が満たなかった場合の対応予定 (前年採用実績企業/単一回答)

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きちんと採用数を確保したい、しかし質にはこだわりたいという企業のジレンマが、こうした調査結果からも垣間見えます。

採用環境における 「売り手優位」 に歯止めがかからない中、自社の事業を支え、成長に導き得る人材をいかに確実に確保するか。私が所長を務める就職みらい研究所では、採用担当者の皆さんの活動に少しでも役立てる情報収集・発信を心がけて活動する所存です。ご意見等いただけたら幸いです。

 


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