2014/08/26

『新卒採用セミナー』ダイジェスト<後編>―2016年卒採用の展望―

岡崎 仁美(おかざき・ひとみ)
1993年(株)リクルートに新卒入社。以来一貫して人材関連事業に携わる。
当初7年間は大阪にて人材採用・育成の営業に従事、中堅・中小企業を中心に延べ約2000社を担当。2000年に首都圏に異動し、転職情報誌『B-ing関東版』の編集企画マネージャー、同誌副編集長、転職サイト『リクナビNEXT』の編集長を経て、2007年4月に、『リクナビ』編集長に就任。以後、大学などでの講演も数多く行う。プライベートでは3児の母でもある。

イントロダクション


こんにちは。就職みらい研究所所長の岡崎仁美です。

新卒採用の需給バランスを示す大卒求人倍率が、90年代後半から10年近く続いた超氷河期を抜けたとされる2006年卒と同水準の1.6倍となり、企業の危機感が高まりました。

それにより、会社説明会の開催件数が大幅に増え、企業のセミナー動員は難度が上昇。 全体的なスケジュールもやや前倒しが見られ、内々定出し開始の4月集中傾向が一層顕著になりました。

そのため、学生の就職活動の進捗は非常に早く、7月1日時点で既に大学生の7割以上、大学院生(理系)の9割以上が、内々定を獲得しています。

重複内定者の割合も高まっており、他数の内定辞退が発生する企業が増加。
また採用活動終了企業の割合も、昨年に比べると低下しており、今年の採用戦線の厳しさを物語っています。

このように、2015年卒採用がまだまだ予断を許さない状況が続く一方で、採用担当の皆さんは、そろそろ次年度の採用戦略立案にも思いを巡らせているのではないでしょうか。

特に次は、いよいよ “さらなる後ろ倒し”が適用される節目の年です。

今回は、2013年卒のスケジュール変更の際には動かなかった“面接選考開始”時期が4か月の繰り下げとなるということで、大きな不安を抱えている方も少なくないでしょう。

そこで後編では、企業の皆さんに対するアンケート結果なども交えながら、2016年卒採用の展望について述べてまいります。


■表1: 調査概要

※調査結果をご覧いただく際にご注意ください。

  • %を表示する際に、小数点第2位で四捨五入している点、学生調査についてはウェイトバック集計を行っている点の影響で、%の合計が100%にならない場合がございます。
  • 「内定」は「内々定」を含みます。

「二足のわらじが履きづらい」新スケジュール

2016年卒の展望を述べるにあたり、最初に新スケジュールについておさらいしてみましょう。
採用活動スケジュールの変更は、3年前(2013年卒時)にもありましたが、それと今回とは、一体何が違うのでしょうか。

まず、そもそもの目的が異なる、ということに注目すべきでしょう。
前回は、就職/採用活動の過熱の鎮静化を目的とした、経済団体である日本経団連による、自らの紳士協定である採用選考に関する指針の改定でした。
「採用選考に関する指針」の大幅改定は、1997年の誕生以来16年ぶりであり、非常に注目されたことは記憶に新しいことと思います。

今回は、ご承知のとおり、その主導は政府です。
スケジュール変更のニュースが初めて全国規模で報じられたのは、2013年の3月でした。
その後、4月19日に開催された「経済界との意見交換会」において、安倍総理が経済界に対し、平成27年度(2015年度)卒業・修了予定者からの就職・採用活動開始時期変更を要請。
これはその後、「日本再興戦略」(2013年6月14日閣議決定)において政府方針として決定されました。

関連資料には、この変更は「我が国の人材育成システムを抜本的に強化するため」と述べられており、高等教育改革などとも密接に関係することから、その影響範囲は前回以上に大きいと予測されています。


■図1: 就職/採用スケジュール変更 前回との違い
各種公表資料より、リクルートキャリアにて作成


また具体的なスケジュールの違いも見てみましょう。

前回は、広報活動の開始時期が2か月後ろ倒しの12月からとされた変化が大きく、一方の選考開始時期に変更はありませんでした。
それゆえ、この圧縮された広報期間に、いかに自社や業界の魅力を知らせ、動機づけするかがカギでした。

今回は、広報開始が春休みからと後ずれになるだけでなく、面接選考も夏休み開始へと大幅に繰り下げられました。
選考開始から卒業までの期間が短くなり、企業も学生も「後が無い」スケジュールとなったことが、大きな特徴です。

もう少し詳細に、スケジュール表に落として見てみましょう。


■図2: 学事日程と就職/採用スケジュール
各種公表資料より、リクルートキャリアにて作成


現行スケジュールと比較すると、新スケジュールは3年次の後期試験が終わってから就職活動に突入するため、その点においては、学事日程への配慮がなされたものといえるかもしれません。

一方で、新たな別の悩ましさも浮き彫りになっています。

広報開始から面接選考開始までの期間は、現行の4か月から1か月長くなります。
しかし、この3月〜7月いっぱいの5か月間とは、前期の学事日程を丸々含む時期であるわけです。

例えば教員を志望する学生は、まさにこの間に、教育実習の事前ガイダンス〜登録〜受け入れ先との調整〜実習といった一連の活動を行う必要があります。
これまでは、4月に民間の内々定を獲得してから教育実習にシフトする、といった学生も少なからず存在しましたが、新スケジュールではそうはいきません。

また、面接選考解禁から卒業までの期間が圧縮される中で、国家公務員の官庁訪問と、大学院入試と、民間企業の面接選考ピークがほぼ重なるといったことも発生します。

つまり、2016年卒からの新スケジュールは、学生にとっては「二足のわらじをはきづらいスケジュール」なのです。
裏を返せば、企業も「教員併願者」「公務員併願者」「院試併願者」などのターゲット別の複線化がはかりづらいといえるのではないでしょうか。


母集団形成と説明会動員の“ほぼ同時化”が起きる!?

こうした政府によるスケジュール変更を受けて、企業の皆さんはどのように動こうと考えているのでしょうか。

『採用状況中間調査』では、2016年卒の具体的な採用活動予定についても聞いています。
それによると、大半の企業が、採用情報の提供開始はそのまま後ろに3か月スライドし、3月に始めるとしています。

異変が見られるのが説明会・セミナーの開始時期です。
2015年卒では情報提供開始の2か月後である2月が開始のピークでしたが、 2016年卒では情報提供ピークと同じ3月に説明会・セミナーを開始すると回答した企業が最も多く、全体の4割近くにも上っています。
つまり、情報提供(母集団形成)とセミナー開催の“ほぼ同時化”です。


■図3: 採用情報提供、説明会・セミナーの開始時期
出所:採用状況中間調査2014[速報版]


情報提供開始とほぼ同時に説明会動員を行うとなると、それ以前から企業や業界が認知されている、さらにはある程度の動機付けがなされているところが有利になるといわざるを得ません。

そうでない企業の中には、「いきなりの自社説明会への呼び込みはリスクがある」と考えて、業界説明会を強化する、あるいは合同企業説明会にシフトするケースも増えるでしょう。

大学サイドの動きはどうでしょうか。
ご承知のとおり、3月は春休みのため、「履修登録も落ち着いた5月前後からでないと、学内合同説明会を本格化できない」 とするところもあります。

一方で、その後の活動日程と学事日程とを鑑み、春休み返上で近くの会場を借りるなども含めて検討し、この時期の学生と企業の接点強化に努める大学も、多く見られています。

変わる16年卒採用、フライング企業の割合は?

新スケジュールで大きな関心を集めている、面接や内々定・内定出しの開始時期について、各企業はどのように計画しているのでしょうか。

『採用状況中間調査』の回答企業においては、8割近くが「未定」としており、特に300人未満の中小企業でその値は高く、9割を超えました。
一方、従業員数5,000人以上の企業は3社に1社が調査時点で既に対応方針を決め、具体的な回答を寄せています。

ここでは多くを占める「未定」を除いた集計結果をご紹介します。
それによると、面接については3〜7月の毎月に、約10%前後の企業が「開始する」と回答していますが、最も回答率が高かったのは8月で、4割に上っています。

内々定・内定出しの開始も同じく8月ですが、その回答率は55%を超えており、かなりの集中傾向です。
また解禁前に開始する、いわゆる「フライング」を予定している企業も少なからず見られます。
その割合を集計すると約4割で、これは2015年卒とほぼ同じでした。


■図4: 面接、内々定・内定出しの開始時期
出所:採用状況中間調査2014[速報版]


こうした各企業の活動予定も踏まえ、2016年卒の採用成功に向けて、どんな想定をし、何を検討しておくべきでしょうか。
本セミナーでは、「採用活動前」「採用広報」「採用選考 内々定・内定出し」の3つのフェーズに分けて言及しています。


■図5: 各採用プロセスにおける検討事項


それぞれ少しずつ補足していきましょう。

採用活動前において、最も注目を集めているのはインターンシップでしょう。
これは、単に採用への結びつきを意識した企業サイドのみの意向ではありません。
そもそも今回のスケジュール変更を主導した政府も、就職・採用活動時期の繰り下げとセットで推進しています。

現に、この4月に17年ぶりに改定された厚生労働省、経済産業省、文部科学省による「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方(通称:インターンシップ三省合意)」でも、短期のものや有給のものなど含めて多様化を推進する方向性が明示されました。

インターンシップは、今後も 官民あげてますます拡充されると見てよいでしょう。

採用広報時期においては、広報活動期間は1か月長くなるものの、情報提供と説明会スタートのほぼ同時化が進み、 一部の有名企業を除いては、母集団形成や説明会参加者の確保が難しくなることが予測されます。


■図6: 採用広報活動における検討事項


景気は上昇局面が続いており、2016年卒採用戦線においては、さらに採用活動実施企業が増える可能性があります。
需給バランスから考えれば、1社あたりのプレエントリー数は減少すると予測せざるを得ません。
また、説明会・セミナーも3月集中が進み、やはり1社あたりの動員数は減少すると想像されます。

説明会参加への動機づけはもちろんのこと、Web説明会の活用など、接点の持ち方そのものもさらに工夫する必要がありそうです。

採用選考・内々定出しに関しては、フライング企業の割合そのものは変わらないものの、学業のオンシーズン期間のつなぎ止めが必要であるため、個々人の学生の状況に沿った、より柔軟な対応が求められると想定します。


このように、2016年卒採用戦線は、ここ数年の中で最も悩ましいものとなることは必至でしょう。
そんな時だからこそ、自社の事業を前進させる人材をしっかりと確保できるよう、我々も一層尽力し、皆さんのサポートに努めたいと思います。


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