2012/05/22

2013年卒採用戦線・早分かり Vol.1―最新『ワークス大卒求人倍率調査』を読み解く―

岡崎 仁美(おかざき・ひとみ)
1993年(株)リクルートに新卒入社。以来一貫して人材関連事業に携わる。
当初7年間は大阪にて人材採用・育成の営業に従事、中堅・中小企業を中心に延べ約2000社を担当。2000年に首都圏に異動し、転職情報誌『B-ing関東版』の編集企画マネージャー、同誌副編集長、転職サイト『リクナビNEXT』の編集長を経て、2007年4月に、『リクナビ』編集長に就任。以後、大学などでの講演も数多く行う。プライベートでは3児の母でもある。

イントロダクション


こんにちは。リクナビ編集長の岡崎仁美です。

大型連休も終わり、大学の就職支援の方々からも「企業の方が、今年の採用終了の報告でお見えになった」という話を伺うことが増えてきました。リクナビに寄せられる学生からの投稿メールにも「就職活動を終えました」といった内容のものが日々見られており、2013年卒就職/採用活動の“第1クール”は収束といっていいと思います。

一方「採用予定数を増やしているので、まだまだ続行中」「内定辞退を見積もると、内定出し数が不足」「求めるレベルを下げたくないので、じっくり探し続ける」といった企業の声も多く、今年は例年以上に大きな“第2クール”が訪れそうな状況です。そこで今月から3回にわたって、2013年卒採用戦線の概観を、調査やインタビューなどの結果を用いながらお伝えしたいと思います。

第1回目の今回は、4月末にリクルートが発表した「第29回 ワークス大卒求人倍率調査(2013年卒)」を読み解きます。



■調査概要

いち早く採用増に転じた大手、引き続き採用減の中小

まず、2013年卒の全体概要を見てまいりましょう。

来春2013年3月卒業予定の大学生・大学院生の求人倍率は1.27倍で、前年の1.23倍から0.04ポイント上昇しました。求人倍率が前年に比べて上昇したのは、2008年3月卒以来5年ぶりです。


■求人総数および民間企業就職希望者数・求人倍率の推移
※クリックすると拡大します


その後の世界的金融不安・世界同時不況の引き金とされるリーマン・ショックが起きたのが、2008年9月でした。故に、それ以来のプラスと聞けば、いよいよリーマン・ショック以降続いていた景気のダウントレンドが反転し、求人も本格回復を見せたのではないか、と推察する方もいらっしゃるでしょう。

事実、 一般職業紹介状況(厚生労働省)は好転しており、 求人広告掲載件数(公益社団法人 全国求人情報協会)も24カ月連続プラスです。

しかし、大卒については、求人倍率の分子である「求人総数」は今年度もマイナスでした。2013年卒業予定の大卒者を対象とした求人総数は55万3800人と、前年マイナス5,900人(-1.1%)となっています。


■求人総数の推移


しかし、この求人数の対前年増減率は、従業員規模によって明暗が分かれています。5,000人以上の企業は+3.6%、1,000〜4,999人企業は+2.2%と、大企業では求人数が増加しました。一方、300〜900人企業は-0.4%、300人未満企業では-3.4%と、中堅中小企業では減少しています。


■従業員規模別 求人数の推移



大企業=増加、中堅中小企業=減少は、昨年に続いてのトレンドです。こうした事象は、過去の景気回復局面には見られませんでした。(※3)

※3:ITバブル崩壊後の企業の採用予定数は、1999年卒から2年連続で大企業(1,000人以上)も中堅中小企業(1,000人未満)も前年マイナスであったが、その翌年である2001年卒では、大企業が引き続き前年マイナスであったのに対し、中堅中小企業はプラスに転じた。

どん底の状態からいち早く脱し、早々に新たな人材投資に着手する大手企業と、好転の展望が開けず新規採用に慎重にならざるを得ない中堅中小企業。今回の景気下降〜回復局面におけるこうした特徴が、この調査結果からも垣間見られます。


学生は「中堅」シフト、1,000人未満企業への希望は過去最大に

一方の学生の就職希望には、どんな傾向が見られるのでしょうか。

従業員規模別の民間企業就職希望者数の対前年増減率は、5,000人以上企業で-15.2%、1,000〜4,999人企業で-6.6%、300人未満企業で-1.2%といずれも減少した中で、300〜999人企業においてのみ+2.9%と増加しました。


■従業員規模別 就職希望者数の推移



ここ数年、学生やその就職を支援する方々の間に「大手と中堅中小では求人倍率に大きな差がある」という事実の認知がずいぶん広がりました。また、官民挙げての中小企業と学生とのマッチング強化策も奏功し、年々学生の中堅中小シフトが進んできました。

しかし今回、わずかながら、300人未満企業への就職希望者数も減少に転じ、「中堅中小」の中でも、特に「中堅」に的を絞る学生が増えているという結果となったのです。

またこれを、先ほどの企業側の採用予定数と合わせて見てみると、従業員規模間の求人倍率格差が縮小していることが分かります。


■従業員規模別 求人倍率の推移



全体では1を超えている、つまり就職希望者の数よりも求人数の方が多い状態である大卒採用市場ですが、こうして見ると、それは300人未満企業の需給バランスが大きく崩れている(300人未満企業の求人倍率は依然3倍超)ことによるところが大きいのです。

一方300人以上企業については、いずれも企業の求人数よりも就職希望者数の方が大きく、学生サイドから見れば“狭き門”ともいえる状態です。

もう少し長期で、この従業員規模別のトレンドを見てまいりましょう。


■従業員別の長期トレンド

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企業側の求人総数は、基本的には景気トレンドに沿って変化します。実数で見れば、その存在比率が圧倒的に大きい中堅中小企業の振れ幅が極めて大きいことが、一目で分かります。


■従業員規模別の求人総数の推移


比率(シェア)で見るとどうでしょうか。一部の時期を除けば、大手:中堅中小の求人数は、2:8程度で安定的に推移しているのです。

90年代後半は、複数の超大手企業が新卒採用を“凍結”したいわゆる「就職氷河期」で、事実求人総数における大手のシェアが低くなっています。

そして前述の通り、今回のリーマン・ショック後は、中堅中小企業の採用予定数がマイナスを続けており、求人総数における中堅中小のシェアも下降のトレンドとなっています。


■従業員規模別の求人総数(シェア)の推移

就職活動は「脱大手」「業界の垣根を越える」傾向

一方の、学生側の民間企業就職希望者数はどうでしょうか? 実数で見ると、1,000人未満企業への就職を希望する学生の数は、昨年に続き2年連続で過去最大値を更新しました。

また、1,000人以上企業への希望者数と比較すると、1999年卒以来14年ぶりに“逆転”の現象が起きました。


■従業員規模別の民間企業就職希望者数の推移


比率(シェア)を見ると、2000年代の10年間緩やかに進行していた“大手志向”が、リーマン・ショックを境に反転している様子がうかがえます。

こうして見ると、学生には“脱大手志向”の兆しが見られますが、企業の求人数は1,000人以上企業のものは全体の2割程度しかないのに対し、学生の半数近くが依然そこへの就職を希望しているわけですから、ミスマッチ解消の余地はまだまだ大きいといえるでしょう。


■従業員規模別の民間企業就職希望者数(シェア)の推移


次に業種別に見てみましょう。業種別の求人倍率は、「流通業」の変動幅が非常に大きいのに対し、「金融業」「サービス・情報業」のそれは極めて小さいことが分かります。


■業種別求人倍率の長期トレンド

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企業側の求人総数で見ると「金融業」以外の業種はいずれも変動が大きいことに加え、長期的には右肩上がりであることも見て取れます。


■業種別の求人総数の推移


一方の、学生側の就職希望者数では、最も希望者が多い業種は「サービス・情報業」となりました。長期レンジで見た場合、希望者数が増えているのは「製造業」「金融業」です。「金融業」については、企業側の採用予定数は漸減傾向ですので、ますます狭き門になっているということになります。


■業種別の民間企業就職希望者数の推移


ただこの業種別に関しては、学生が複数の業種にまたがって就職活動をする傾向が昨今特に強まっているように感じます。長年採用に携わっている企業の皆さんも、昔に比べて採用でバッティングする企業群が幅広くなったという実感をお持ちなのではないでしょうか。

現在の産業社会は、国際化・情報化とともに業際化を遂げているといわれますが、学生もそうしたことを念頭に、幅広く企業研究を行うようになってきているのでしょう。

 
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