2012/03/19

『就職白書2012』発表!―振り返りと展望から読む2013年卒採用成功のヒント―

岡崎 仁美(おかざき・ひとみ)
1993年(株)リクルートに新卒入社。以来一貫して人材関連事業に携わる。
当初7年間は大阪にて人材採用・育成の営業に従事、中堅・中小企業を中心に延べ約2000社を担当。2000年に首都圏に異動し、転職情報誌『B-ing関東版』の編集企画マネージャー、同誌副編集長、転職サイト『リクナビNEXT』の編集長を経て、2007年4月に、『リクナビ』編集長に就任。以後、大学などでの講演も数多く行う。プライベートでは3児の母でもある。

イントロダクション


こんにちは。リクナビ編集長の岡崎仁美です。

早いところでは桜の開花が間近という季節になりました。人事採用を担う皆さまにおいては、2013年卒の採用活動を進めると同時に、今春の新入社員の受け入れ準備を行うなど、忙しい日々をお過ごしのことと存じます。

2012年卒業予定者の就職状況については、厚生労働省・文部科学省が発表している『大学等卒業予定者の就職内定状況調査』の内定率が、昨年よりも高い値で推移しているとあり、改善傾向が見られます。

しかし、自社の2012年卒採用を振り返る際に、春休みというクライマックスシーズンに起きたあの大震災を想起される方も少なくないと思います。

いったい、2012年卒の就職/採用戦線のプロセスや結果に、東日本大震災はどのような影響を及ぼしたのでしょうか。

リクルートでは先日、企業の新卒採用活動および学生の就職活動の実態を明らかにするための調査を実施し、『就職白書2012』として発表いたしました。


■調査概要


今回は、この結果を用いて2012年卒就職/採用戦線を、震災影響も含めて総括するとともに、そこから読み取れることの中から、2013年卒採用にも活用できるポイントを抽出してお届けいたします。

2012年卒は6割が震災影響アリ、9割がほぼ計画数を確保

2012年卒就職/採用を振り返る上で欠かせない観点は、やはりあの大震災の影響でしょう。

『就職白書2012』の調査では、企業の60.2%が東日本大震災の影響が「あった」と回答しています。

本社所在地別に見ると、「関東」が74.5%、「北海道・東北」が70.8%で、特に「岩手・宮城・福島」は87.0%と、他の地域よりも高くなりました。 また、「近畿」も62.5%と平均よりも高く、直接的な被害が大きかった地域以外にも、震災の影響が及んでいたことが分かりました。

これは、大卒者の採用活動は全国を視野に入れて行うのが一般的であることに加え、特に大学および学生数が多い近畿地区には、就職で関東を目指す学生も多くいます。そうした学生の動きを鑑みて、採用する側の企業が関東地区と歩調を合わせる傾向が強いことによるものと思われます。

また、震災の影響があった採用活動プロセスは、1位「面接」(62.8%)、2位「説明会・セミナー」(56.0%)、3位「内々定・内定出し」(55.5%)でした。


■東日本大震災の影響があった採用活動のプロセス
 (対象:「東日本大震災の影響があった」と回答した企業 N=346、複数回答)
※データは無回答サンプルを除いて集計


地域別に見ると、関東地区では「説明会・セミナー」に影響があったとした企業が他地域より多いという結果になりました。これは、震災の直後の3月中旬〜下旬までは、関東地区の多くで交通網が乱れたり、輪番停電が行われたりで、就職関連のみならず、いわゆる「集会」が自粛されたことによるものでしょう。

このように、震災は2012年卒の採用活動にも大きな影響を及ぼしたわけですが、では結果はどうだったのでしょうか。

企業に昨年12月時点での採用数を尋ねたところ、「計画通り」が47.4%で最も多く、「計画より若干多い」の12.4%、「計画より若干少ない」の31.7%と合わせて91.5%の企業がほぼ計画通りの採用数という回答でした。

これを従業員規模別に分けて見てもいずれも高水準であり、大手から中小に至るまでほとんどの企業が、ほぼ計画通りの採用数となったことが分かりました。


■従業員規模別に見た、2012年卒の採用数の計画に対する充足状況
※従業員規模不明・無回答企業があるため、規模別の計と全体は一致しない


また、この調査では入社予定者への満足度についても尋ねています。

自社への入社予定者に「非常に満足」「どちらかというと満足」としている企業は、全体の70.2%に達しました。こちらも、従業員規模による大きな差異は見られませんでした。

この「満足度」と相関が高いのは、「採用数の充足度」です。「計画通り」に採用数を確保できた企業ほど満足度が高いといった具合です。

一方、震災の影響とも合わせて見てみましたが、こちらにはあまり相関がありませんでした。

こうしたことから、今年の採用戦線は、途中の過程で震災の影響はあったものの、結果は計画通りの採用数が確保できた企業が多く、また充足度が高い企業は満足度も総じて高かったと総括できるのではないでしょうか。


300人未満企業の約半数が、3月までに選考を開始

では続いて、採用活動プロセスについて見てみましょう。

採用活動プロセスごとの実施率は、
  • ●エントリー受け付け:98.7%
  • ●説明会・セミナー:98.4%
  • ●書類選考:89.9%
  • ●適性検査・筆記試験:94.3%
  • ●面接:100.0%
  • ●内々定・内定出し:99.9%

と、いずれもほとんどの企業が実施しているという結果となり、従業員規模別に分けて見ても大きな差異はありませんでした。

また、書類選考を行ったとする企業に、エントリーシートの導入状況を尋ねたところ、全体では66.3%、従業員300人未満企業で57.6%、300〜999人で62.4%、1,000人以上で74.6%が導入していると回答しています。

次に、採用活動プロセスごとの開始時期を見ると、開始した企業が最も多い時期は、エントリー受け付けが「10月」で62.7%、説明会・セミナーが「2月」で29.0%でした。また選考(書類や適性検査など)、面接など対面での選考、内々定・内定の通知はいずれも「4月」で、それぞれ26.8%、30.7%、31.8%となりました。


■採用活動プロセスごとの開始時期(それぞれ単一回答)
※データは無回答サンプルを除いて集計


「選考(書類や適性検査など)」「面接など対面での選考」は、開始ピーク=4月が事実である一方、それより前に実施している企業の割合も小さくありません。

「選考(書類や適性検査など)」は、300人未満企業の49.0%が、300〜999人企業の44.5%が、1,000人以上企業の44.3%が、「面接など対面での選考」は、300人未満企業の33.0%が、300〜999人企業の42.4%が、1,000人以上企業の38.2%が、それぞれ3月までに開始していました。

実際、学生側の「就職活動プロセスの開始時期」を見ると、「エントリーシートなどの書類提出」のピークは1月、「面接など対面での選考」のピークは2月となっており、こうした企業側の実態に呼応するような調査結果が出ています。


■就職活動プロセスごとの開始時期の割合(対象:各プロセスの実施者、それぞれ単一回答)


「内々定・内定の通知」の開始時期も4月がピークですが、5月に開始する企業も少なくありません。

従業員数300人未満企業では4月:21.9%に対して5月:27.1%と5月の方が多く、300〜999人企業では4月:28.6%、5月:21.6%、1,000人以上企業では4月:39.1%、5月:19.4%と、従業員規模が大きい企業ほど4月に集中する傾向が見られました。

2012年卒採用では、複数の超大手企業が震災の影響を勘案して、例年4月に開始する面接選考を、5月や6月に後ろ倒したことも話題になりました。

今回の調査結果でも、5,000人以上企業においては、内々定・内定の通知の開始時期は6月が28.9%で、4月の26.7%をわずかに上回っています。

「量より質」で増える重複内定者を勝ち取るには?

次に、内定辞退の状況を見ていきましょう。

内定辞退者がいたと回答した企業は全体の85.8%で、従業員数1,000人以上の企業は、いずれも9割を超えています。


■内定辞退者の有無 (N=717)
※データは無回答サンプルを除いて集計
※従業員規模不明・無回答企業があるため、規模別の計と全体は一致しない


また、企業が内定を出した総数に占める内定辞退者の割合は、「10%未満」の企業が5.9%である一方、「50%以上」の企業が19.2%にも上るなど、かなりバラツキが見られました。

内定出しは、「まずオファーを出し、学生に選択してもらう」「学生の意思を見極めてから内定を出す」など、各社のポリシーにのっとって行われており、その方針によって辞退率も大きく異なるので、その数字の高低を一概に良い・悪いと評価すべきものではないでしょう。

今回の調査では、従業員数300人未満企業で「内定辞退者がいなかった」割合が35.5%と全体の2.5倍にの上った一方、従業員数1,000人以上企業のそれはいずれも全体の半分程度でした。中小と大手とで、内定出しの方針や内定後のフォローなどの手法が異なる傾向があることがうかがえたように思います。

この『就職白書2012』では、各企業に2013年卒の新卒採用活動の展望についても伺っています。

2012年卒と比較した2013年卒の採用基準は、「2012年卒並み」が74.7%で最も多く、次いで「厳しくなる」が18.0%、「緩くなる」が0.8%でした。


■従業員規模別に見た、2013年卒の採用基準の見通し
※データは無回答サンプルを除いて集計
※従業員規模不明・無回答企業があるため、規模別の計と全体は一致しない


また、59.2%の企業が「採用数に満たなくても求める学生の質は下げない」と回答しています。

ちなみに、これを従業員規模別に分けて見ると、その値は300人未満企業が最も高く(62.8%)、採用人数が少なめで、また全従業員数における従業員1人当たりの占める割合が大きくなる中小企業の方が、「量より質」を重視する傾向が強いことも分かりました。


■従業員規模別に見た、2013年卒の採用数が満たなかった場合の対応予定
※データは無回答サンプルを除いて集計
※従業員規模不明・無回答企業があるため、規模別の計と全体は一致しない


これらから、2013年卒採用も引き続きある程度の「重複内定」は避けられないと見るべきでしょう。 自社にとって望ましい人材は他社も欲しい。そうした人材を自社に引き付けるために、何に留意すればよいのでしょうか。

『就職白書2012』に、その一つのヒントがあります。

それは、内定を辞退して入社予定企業を決定した学生が、内定を取得した複数の企業を比較するときに最も重視した条件です。このトップ3は、「業種」(21.1%)、「職種」(14.8%)、「一緒に働きたいと思える人がいるかどうか」(13.4%)でした。

文系の学生だけに絞ると、「一緒に働きたいと思える人がいるかどうか」のポイントが上昇し、「職種」を抑えて2位となります。


■入社予定企業と内定を辞退した企業を比較するときに最も重視した条件
 (対象:内定を2社以上取得後に辞退して入社予定企業を決定した学生、N=209、単一回答)


採用したい学生を自社が獲得するためには、今後本格化する面接選考や内々定・内定出し、その後の内定者フォローの各場面において、いかに効果的なコミュニケーションを展開できるかが重要なカギとなることと思います。

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