2011/09/20

短期決戦の2013年卒採用における、プロセス「シンカ」―ツール活用による「多面的・立体的」面接のススメ―

岡崎 仁美(おかざき・ひとみ)
1993年(株)リクルートに新卒入社。以来一貫して人材関連事業に携わる。
当初7年間は大阪にて人材採用・育成の営業に従事、中堅・中小企業を中心に延べ約2000社を担当。2000年に首都圏に異動し、転職情報誌『B-ing関東版』の編集企画マネージャー、同誌副編集長、転職サイト『リクナビNEXT』の編集長を経て、2007年4月に、『リクナビ』編集長に就任。以後、大学などでの講演も数多く行う。プライベートでは3児の母でもある。

イントロダクション


こんにちは。リクナビ編集長の岡崎仁美です。

大学の夏休みも終わり、「後期」が始まりました。

今年は、企業の採用広報の開始時期が、10月から12月へと後ろ倒しになりますが、大学側が現3年生を対象に行う「キャリアガイダンス」は、例年通り後期当初に計画しているところも多く見受けられます。それ故、今年も後期入りを機に、現3年生の将来に向けたキャリア観や就職に対する意識がぐっと高まることと思われます。

一方、企業で採用に携わる皆さまは、この冬からの広報を含めた採用活動の構想を既に練り始めている方も少なくないことでしょう。「活動スケジュールの変更を機に、自社の採用活動そのものをしっかり見直したい」というお話しもよく伺うところです。

また、「短期集中」が予測される中で、いかによい人材を見極め、動機付けるか、といった点に頭を悩ませているという声もお聞きします。

今回は「適性検査」を提供する立場から新卒採用に携わり続けている、(株)リクルートマネジメントソリューションズ(当時、現:(株)リクルートキャリア)の國本浩市(エグゼクティブコンサルタント)に、変化の大きい2013年卒採用において、特に「短期決戦」が求められるであろう「選考活動」の在り方について話を聞きました。

國本は、自らも同社やリクルートの採用を長年担当しており、当日は採用実務者としての体験に根ざした「持論」も展開されました。


より詳しい情報をご希望の方は、こちらのページをご覧ください。



※國本の所属、役職は、2011年9月
  取材時点のものです。

『SPI 2』の測定領域と、「適応の3要素」

岡崎今、新卒採用を大きく見直そうという機運が、各社の中でも高まっているようです。

國本SPIが生まれた背景にも、まさにそうした「企業側の実需」がありました。

(株)日本リクルートセンター(現・(株)リクルート)がテスト部を立ち上げ、SPI前身のリクルートテストが誕生したのは1963年のこと。

当時は、ホワイトカラーがどんどん増え、大卒一括採用が本格化し、従来方法の限界が訴えられていたのです。

岡崎そのころは「学歴」「常識テスト」「身元調査」「学業成績」が、採用判定の主な材料だったのですよね?

國本はい。しかし企業人事の方々の中には、「これでは個人の将来性の『違い』が分からない」という問題意識が強かった。ある方の「リクルートは、心理学出身者多いんでしょ?採用テストつくってよ」という声をきっかけに、われわれは適性テスト事業を創業したのです。

企業の皆さまがパートナーとなり、お客さまに教えていただきながら約10年の開発期間を経て、1974年に「総合適性検査SPI」が誕生しました。

岡崎能力検査、性格検査、モチベーション検査、性格類型検査を統合し、「学力だけで序列していくのではなく、いろいろな側面から見て総合的に判断するテスト」というコンセプトだったと伺っています。

國本日本のHRM(※1)は人物中心主義だといわれています。そうしたわが国特有のニーズに応えたのがSPIでした。

 ●採用される人の個性を十分に引き出せるものであること。
 ●採用する人が使いこなせるものであること。

この2つの軸は、その後SPIをSPI 2へと発展させていく中でも、ぶらさずに持ち続けてきました。

※1 HRM:HumanResouceManagementの略。経営資源としての“人”を最大限に活用するため、その選考・報奨・動機付け・組織デザインなどを総合的に取り扱うマネジメント活用のこと。

岡崎採用される人の個性を引き出すとは、具体的にどういったことでしょうか?

國本

SPI 2は、企業人としての適性を把握できるように開発された検査で、期待される成果を継続的に生み出すために必要な能力(コンピテンシー)のもとになる基本的な資質を測定しています。

基本的な資質とは、性格特性と基礎能力といった、人間の行動のベースになる比較的変化しにくい領域です。いわばその人の「持ち味」ともいえる部分です。


■成果創出モデルとSPI 2の測定領域



岡崎新卒採用においては、未経験の職務への適応のしやすさや、将来の成功度を予測することが必要です。
國本「適応」とは、環境と個人がフィットしている状態を言います。「適性」が十分に発揮されていれば、組織人として「適応」しやすい。その「適応」にも3つの種類があります。


 3種類の適応が実現しているとき、人は組織の中で生き生きと働くことができるのです。

■適応の3側面

岡崎個々人のモチベーションは個人のみならず、組織の生産性にも大きく影響する要素です。この「3つの適応」を、どの段階で、あるいはどんな優先順位で見極めるのかを決めることは、採用や育成をデザインする上でとても重要なプロセスといえそうですね。


求める人材要件の「違い」の明確化が、採用成功のカギ

岡崎高度成長時代に研究開発されたSPIは、その後いわゆる「就職氷河期」の真っただ中である2002年に、SPI 2に衣替えされていますね。
國本90年代に入り、世代人口も大学進学率も高まる中で、大卒採用の裾野は広がりました。

また自由応募のスタイルも定着し、新卒採用の力点は、応募者を集めるところから、よりよい人材を見極めるところへとシフトしていきました。さらにインターネットの台頭により、そのトレンドが加速。

こうした背景を踏まえ、「面接の補完」という点をより強く意識してSPI 2という形にリニューアルしたのです。
岡崎日本の新卒採用のほとんどは「ポテンシャル採用(※2)」。それ故、面接が非常に重視されるといわれています。本人と会わずにスペックだけで採否を決めるということは、ほとんどありません。

※2:ポテンシャル採用:潜在能力を重視し、将来的に活躍してくれそうな人材を採用すること。ポテンシャル採用では、業務経験や専門知識ではなく、「仕事に対する高い意識」、他人に分かりやすく、しかも論理的に自分の考えを伝えるための「コミュニケーション能力」、「社会人としての常識」といったものを重視します。

國本SPI 2では、受検者を計測する項目として、それまであった性格と能力の2領域、4つの側面「行動的側面」「意欲的側面」「情緒的側面」「能力的側面」に、「職務適応性」の要素を加えました。

例えば、その人の「行動的側面」「意欲的側面」「情緒的側面」から導き出された性格面の特徴の結果などを通じて、その人の人物像を捉えた後に、「職務適応性」の結果を見る。そうして、その人物を「自社の仕事」というフィルターを通して捉え直します。

自社の仕事に照らしたときに、この人はどういう適性があるのかといった視点で、対象者への理解を深めることが、よりよい採用のカギとなるのです。

岡崎例えば「営業適性のある人が欲しい」という経営トップの号令があった場合、採用担当は具体的にどのようなことに取り組めばよいのでしょう?

國本営業と一口でいっても、各社各様ですよね。その各社各様の部分を明確にすることこそ、採用成功の必要条件です。

営業職配属をイメージして新卒採用を行う場合、まず会社として求める「適性」があり、配属先特有の「適性」がある。どっちをどれくらいのウエイトで見るのか、など、それはもう採用する企業の数だけバリエーションがあるはずです。

ある金融業界の企業の場合を例にして、「会社」と「配属先」の2ステップの適性の設定を説明しますね。

 ステップ1:全社要件としてはA・B・Cの3つを設定しています。
       これはどの仕事をするにしても求められる要件です。

 ステップ2:次に配属に着目して、仕事の特性に応じて必要な適性を設定します。
       ●法人営業では「前例のないことに取り組む仕事」
       ●リテール営業では「課題を粘り強く着実に進める仕事」の職務適応性を、それぞれ重視する

岡崎会社ごとの、あるいは配属先による「違い」を明確にすることが、自社で活躍し得る人材の獲得を可能にするのですね。

「短期集中」の2013年卒採用での工夫ポイント

岡崎2013年卒採用については、スケジュールが大きく変わるということで、頭を悩ませている企業の方も少なくありません。

誰を面接に呼ぶか?がますます争点になるでしょうし、面接の回数を減らさざるを得ない場合は、面接のやり方そのものを見直す必要にも迫られます。

國本ぜひ面接でうまくSPI 2を使っていただきたいですね。「うまく」というのは、人間が目で見る情報と、テストという別の手法で明らかになる人物評価情報、この双方を活用して、多面的・立体的に相手を見る、ということです。

岡崎私自身も多少採用活動に携わることがありますが、SPI 2の結果と面接した印象が違うと感じた経験があります。

國本目で見るイメージと、テストによる人物評価が違っていたら、実は採用担当者にとっては「大チャンス」なのです。ある人物についての「多面的」情報が手に入っているということですから。

目の前に見えているAさんと、心理テストから見えるAさんにギャップがあるならば、どちらもそれはAさんを構成する側面です。そのギャップを埋めるべく、その人を深掘りしていく。それが面接者の仕事でもあり、また面接の醍醐味であると思っています。

岡崎2013年卒採用については、採用担当の方は変化に合わせて面接などを工夫するつもりだけれど、心配なのはトップ面接だという声もあります。

経営層や配属現場のトップが、例年と同じ感覚で面接してしまうと、採り逃がしてしまうのではないかと。
國本就職活動期間が短くなることで、例年よりも考えが具体化していない、こなれていない印象の学生が最終面接に臨むことが多くなるでしょう。

だからこそ2013年卒採用では「求める人材要件」の可視化と社内での共有化が重要になると思います。

われわれは「SPI 2要件明確化サーベイ」というツールも提供しています。

98の設問に、採用に携わる複数の方に回答していただき、その結果を並べて自社としてのMUST(マスト)要件を決めていくのです。

岡崎サーベイをとった後に、トップも含めて自社の「求める人材要件」について、話し合うのですね。

■SPI 2要件明確化サーベイ
  レポートイメージ図
國本まさにその話し合いこそがポイントです。何がMUST(マスト)で、何がWANT(ウォント)かという視点だけではなく、ぜひオススメしたいのは、「自社は、どんな人材を育て得るのか?」を議論することです。

例えば経済産業省が提唱する「社会人基礎力」がありますが、われわれの調査では、この社会人基礎力の中にも、後で育成しやすい要素としにくい要素が混在していることが分かっています。

また、たとえ一般的には「育成しやすい要素」とされるものについても、その企業の組織風土や仕事内容では磨かれにくい場合もあるでしょう。

そのため、「自社はどんな要素なら、入社後に育成することができるのか」「だから、どんな要素は学生にあらかじめ持っていてもらいたいのか」を明確にする必要があります。また、こうした点も各社各様でしょうから、この「育て方」「育ち方」の違い自体が、採用活動上の「差別化ポイント」にもなり得るのです。

岡崎現在の採用活動では「志望動機」を学生に質問しその内容を企業が吟味する、いわばオーディション的な面接も多くあると認識しています。

企業からは「学生は同じことばかり言う」と伺いますが、学生からは「企業は同じことばかり聞く」と訴えられます。現状では、「面接の仕方」による学生への差別化は、あまりなされていないと言ってよいかも知れませんね。

また、こうしたオーディション的面接は、人材の見極めをかえって難しくしているということも言えそうですね。

國本確かに、面接で「何をしたいですか?」「どうなりたいですか?」と聞くのも必要でしょう。でも同時に「ウチの仕事では、こんな育ち方をする傾向があるけれどどう?」と対話すると、ぐっとお互いの理解が深まり、学生の志望度も上がる可能性が期待できるのではないでしょうか。


現在のSPI 2には、選考の場面だけでなく、内定者フォローに活用するというトレンドも生まれているそうです。

求める人材要件を明確化し、初期選考を行い、面接・ジョブマッチング(※3)を経て、採用活動を総括分析する。こうした採用活動のPDSサイクルを回す際に、SPI 2のような「ツール」により見えなかったものを可視化することで、より効果的な採用活動が望めると思います。

※3:ジョブマッチング:選考対象者が希望する分野・配属先と、その分野・現場での採用ニーズとを相互に確認すること

活動スケジュールの変更を機に、自社の採用活動そのものをしっかり見直す。そんなチャレンジの参考にしていただければ幸いです。

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