2011/08/23

夏季番外編:若者の行動から心理を探る―リクルートの消費領域事業の知見から―

岡崎 仁美(おかざき・ひとみ)
1993年(株)リクルートに新卒入社。以来一貫して人材関連事業に携わる。
当初7年間は大阪にて人材採用・育成の営業に従事、中堅・中小企業を中心に延べ約2000社を担当。2000年に首都圏に異動し、転職情報誌『B-ing関東版』の編集企画マネージャー、同誌副編集長、転職サイト『リクナビNEXT』の編集長を経て、2007年4月に、『リクナビ』編集長に就任。以後、大学などでの講演も数多く行う。プライベートでは3児の母でもある。

イントロダクション


こんにちは。リクナビ編集長の岡崎仁美です。

節電の夏、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

リクルートが毎月発表している「リクナビ会員の内定率(内々定率)7月度」(調査期間:2011年7月22日〜29日)では、ここまで低めに推移していた内定率および就職活動終了率も、それぞれ54.4%、40.9%と、昨年の6月末水準にはまだ届かないものの、前月からそれぞれ5.2ポイント、6.5ポイントの伸びとなっており、2012年卒採用の第1クールが収束しつつあることがうかがえます。

人事の皆さんの中には、今年度の振り返りを始めておられる方もいらっしゃるでしょう。

そのプロセスで、選考の場面で学生と対話したり、今年の新入社員を直接指導したりといった、若者と直接接点を持った現場の社員や経営者の方などから「最近の若者は……」というつぶやきを耳にされる場合もあるかもしれません。

「最近の若者は……」というつぶやきは、太古の昔から存在するともいわれます。

一方で、グローバル化のさらなる進展やコミュニケーションツールの進化など、環境変化が加速する中で、世代間の価値観の乖離は拡大しているという指摘もあり、「若者」に対する理解が、採用・育成上の一つのテーマとなっているようにも感じます。

そこで今回は、そんな「若者」の行動と心理について、普段とは別の切り口から、情報をお伝えいたします。

リクルートでは、就職関連の情報提供事業の他に、飲食、旅行、住宅、結婚……など、さまざまな「ライフイベント」に関する情報提供のビジネスを展開しています。その各領域における若者の行動について、その分析も交えてご紹介します。

若手社会人は、意外とカイシャ飲み!?

まず、最も日常性の高い「飲食」について、見てまいりましょう。

リクルートでは、2000年にグルメ情報誌(フリーペーパー)の『Hot Pepper』を創刊しました。

飲食関連の情報提供ビジネス自体は、1994年に創刊したフリーペーパー『生活情報360°〔サンロクマル〕』の中でも展開していましたが、飲食マーケットの成長や需要の拡大に伴い、2000年にグルメに絞って新創刊したのが『Hot Pepper』です。

現在では、フリーペーパーを全国49版年間約400万部(2011年1月現在)発行し、地域密着型の情報提供を行うとともに、WEBサイト『Hot Pepperグルメ』を展開。飲食店の情報のみでなく、クーポンを提供することで、消費者の利便性向上と飲食業者の集客拡大に貢献しています。この『Hot Pepper』を含め、現在、旅行・飲食などの消費領域のWEBサイト(じゃらん、hotpepperグルメ、hotpepperビューティー、ポンパレ、ケイコとマナブなど)を統括している、CAP(カスタマー アクション プラットフォーム)カンパニー ネットビジネス推進室 ゼネラルマネジャーの渡部 純子は、昨今の20代前半の若者の、飲食領域における消費行動を、次のように分析しています。

渡部「私たちは、飲食をライフスタイルの一つとしてとらえ、定期的に『ライフスタイルに関する調査』を行っています。ここでは、年齢、性別、地域など、さまざまな切り口で分析をしていますが、20代前半の特に女性には、自分の世界を重視する気持ちが強い一方で、消費に関しては他者と頻繁にコミュニケーションをし、流れやトレンドを吟味するという特徴が見られます」

上記の『ライフスタイルに関する調査』によると、20-24歳の女性では「自分はマイペースなほうだ」とする人が84.3%、「楽しみは邪魔されず、一人で楽しみたいほうだ」とする人が64.5%といずれも高く、それぞれ全平均の+11.6ポイント、+5.4ポイントとなっています。

また、「新製品は周りの意見を聞いてから購入・利用することが多い」が50.0%(全平均+11.1ポイント)、「自分が気に入ったものを周りに勧めることが多いほうだ」が47.7%(全平均+14.7ポイント)という数字も、前述の考察を裏付けています。


■ライフスタイル意識(性・年代別)
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■調査概要
出所:(株)リクルート 『ライフスタイルに関する調査』


飲食に関しては「外食(※1)」が他の年代より多いのも特徴のようです。

20-24歳の女性の、年平均外食回数は46.1回と、全平均より5.1回多いのですが、過去5回の調査で全体の年平均外食回数が年々減少する中、2010年の調査では若干増加。特にこの層の増加が大きいという事実もあります。
※1:この調査では、平日昼、休日朝や喫茶を除いた、店舗を利用した食事を「外食」とする。

渡部「利用するジャンルは『居酒屋』が最も多く、この層は特に顕著です。これは低価格均一居酒屋の登場や、女子会ブームなどの影響もあると考察しています。また外食における同行者についても調査していますが、『恋人・異性と』『ひとりで』『よく会う友人と』が上位3位ですが、3位と僅差で『会社の人と』が続きます。この年齢層には学生が多く含まれることを考慮すると、『若手社会人は、意外と会社の人と飲み会に行っている』ということもいえるのではないでしょうか」


■F1層の外食実態

■平均外食回数(性・年代別)■集計対象人数

■調査期間
出所:(株)リクルート 『ライフスタイルに関する調査』


他の調査や、実際に運営するサイト上でのカスタマーのアクション分析からも、今の若い世代の「一人の時間も大切にしつつ、会社の同僚や友人とのコミュニケーションは怠らない」生活スタイルが垣間見られるようです。


ブライダルは、「形重視」から一つ一つの行為の「意味重視」へ

次に、ブライダルの領域を見てまいりましょう。

リクルートでは、1993年に結婚情報誌『ゼクシィ』を創刊して以来、結婚を控えたカップルのためにさまざまな情報提供を行っています。その『ゼクシィ』では、新婚カップルの結婚スタイルについて詳細に把握するために、毎年『結婚トレンド調査』を実施しています。

最新の2010年版で見ますと、挙式、披露宴・披露パーティ総額325.7万円で、5年前の+11.2%。年齢帯別に見ると、妻の年齢が30歳以上のカップルが295.3万円であるのに対し、24歳以下のカップルは316.4万円と、むしろ高いという事実もあります。


■挙式、披露宴・披露パーティ総額の推移 (金額回答者のみ/単一回答)

■挙式、披露宴・披露パーティ総額の分布(金額回答者のみ/単一回答):2010年

■調査概要
出所:(株)リクルート 『結婚トレンド調査2010』


過去〜現在のブライダル市場を、『ゼクシィ』ブランド編集長の伊藤 綾は、次のように分析しています。

伊藤「この市場には、約10年ごとにトレンドがありました。80年代が『ハデ婚』、90年代が『ジミ婚』。ここまでは「人と比べてどうか」が一つの価値軸だったといえます」

「ところが2000年代に入り、いわゆる団塊ジュニアが結婚のピークを迎える中で、バブル前後へのアンチテーゼを持つ彼らは、他者との比較ではなく、自分らしさを追求するトレンドを築いていったのです」

「『アンチ披露宴』が主軸となり、結婚式のあり方が多様化。それに合わせていわゆるハコ(※2)もさまざま開発されていきました。ハウスウエディングやレストランでの披露パーティ、人前式などもブームになりました。私たちはこれらを『アットホーム婚』と名づけました」
※2:挙式や披露宴、パーティを催す建造物のことを、ブライダル業界ではこのように称する。
 「ところがブライダル市場にも、そもそもバブルの時代を全く知らない世代が入ってき始め、彼らにはもはやバブルへのアンチテーゼはないのです」

また、同調査によると、披露宴・披露パーティを行う理由の1位は、「親・親族に感謝の気持ちを伝えるため」。「以前からの憧れ」や「自分達を見てほしい」「自分達が楽しむ」の支持率が、5年間ずっと横ばいであるのに対し、この1位の項目を含め、「喜んでもらう」「感謝の気持ちを伝える」はいずれも大きくポイントを伸ばしています。


■披露宴・披露パーティをあげた理由(披露宴・披露パーティ実施者/複数回答):2010年
出所:(株)リクルート 『結婚トレンド調査2010』


これについても、伊藤はこのように解説しています。

伊藤「私たちは2010年代のキーワードとして『アットハート婚』を提唱しています。「アンチ披露宴」が一つの旗印だった『アットホーム婚』は、まだまだ形にこだわったトレンドであったといえるのに対し、『アットハート婚』は形よりも一つ一つの行為の意味を重視している点が大きな特徴です。その変化の背景には、“つながり”“絆”を非常に重く受け止めている彼らの世代性と、今の時代性との相乗効果が見え隠れしています」

共通項は「自分」「共有」「つながり」「Re:」

今回、今の若者の行動やその心理について、同じリクルートで就職とは別の角度から彼らを見ている渡部・伊藤とディスカッションを行ったのですが、その中で、

   ●自分にとっての意味こそが大事
   ●経験の共有で賢く選びながらつながりを実感
   ●リアクションが前提の「Re:」世代

といった共通項が浮かび上がってきました。

渡部「『ライフスタイルに関する調査』では、購買行動の因子分析も行っていますが、20-24歳の女性の特徴は『商品・自己投影因子』(購入した商品を通じて、「自己表現をしたい」という意識度合い)と『レコメンド(推奨)因子』(自身の経験を元に周囲にアドバイス・推奨といった「オススメを共有したい」意識度合い)が顕著に出ています。商品を通じて自己表現し、気に入ったものがあれば周囲に勧めたい、周囲と共有したいという意識が強いということです」


■性別・年代別 購買行動因子特性比較:2010年
出所:(株)リクルート 『ライフスタイルに関する調査』


こうした特徴は、ブライダルでも見られています。例えば最近は、同じ月に同じ式場で結婚式を挙げたカップルが集うSNSなども複数存在しており、その後の妊娠・出産、転居などのライフイベントに関する情報交換を続けているようなケースもあるそうです。

伊藤「最近は結婚式場の化粧室に「あぶらとり紙、ご自由に使ってください by■夫&●美」みたいなメッセージがよくあるのです。これが一つの象徴で、『陰ながら』ではなく『私はあなたを想っていますよ』という主張が大事。レスポンスがコミュニケーションの前提ですから、『それいいね!』と言い合えることが重要なのです」

「Love&Peaceも当たり前の世代で、愛情表現にひるまないようなところもありますね。友チョコなどもそうした世代性を物語る現象だと見ています」

今の学生の多くは、就職という大きな決断を必要とする状況下でも、「自分はその企業の中で、入社後にどういう存在になりそうか」ということを慎重に吟味しています。その一方で、先輩や友人などからその会社に関するネガティブな情報を提供されると、過剰なまでに反応し、途端にぐらついてしまう姿も見られます。

また、ここ数年の就職活動を経験した人たちは、「合否通知は『合格だった場合にのみ連絡します』ではなく、いずれの場合も連絡をしてほしい」ということを盛んに訴えています。これも「リアクションが前提」「可視化されて当たり前」の中で育ってきた影響もあるのかもしれません。

これについては、本人が面接の様子の中から、自分で感じ取るものが全くないわけではなく、そうした自分の感性に自信が持てないという本音も見え隠れしているように感じます。


就職活動生や若手社会人として働く若者は、当然ながら、一人の生活者として日常さまざまな消費行動も行っており、今回は彼らのそうした「別の顔」を中心に述べてまいりました。

もちろん、「働く」と「消費する」とは、たとえ同一人物であっても、別の判断基準を持ったり、異なる行動をしたりという場合もあるでしょう。ですから、このまま採用や育成に活用することは難しい面もあるとは思います。

一方で、「最近の若者は……」という型通りの枠で若者を見てしまいがちな年配の経営陣や現場の責任者の方がいらっしゃる場合に、こうした彼らの「別の顔」の情報が、彼らとの接点を見いだすきっかけを提供することになり得るのでは、と考えた次第です。ご参照くだされば幸いです。

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